第170毒 猛毒姫、久しぶりに会う
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あらすじ
これはもはや。
梅干しと言うより、Botulinです。
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屋敷に居る私を担いだ剛力は。
そのまま開いている窓に向かって私をぶん投げた。
おお。
梅干しが、空を飛んでおる。
と思ったら、剛力もいつの間にか私の横で飛んでおった。
こ、此奴。
ぶん投げた私の後からじゃんぷして、追いついたというのか。
そ、そして、私の上に、乗るつもりか!
桃〇白のように!!
「……いくら何でもそれは侮辱になるな。
やめるか」
私の声を聞こえていないはずの剛力であるが。
自分でなんだか自己完結して自重しておる。
……お、おい。
乗らないのか?
桃白〇のように!!
それは、逆に侮辱じゃぞ!?
今度、ぜひやってもらおう。
浪漫じゃ。
ずーーーん!
地面に着陸すると同時に、私を抱きかかえてなるべくだめーじが無いようにしてくれた剛力。
此奴の株が、私の中で鰻登り。
そして、目の前には。
「ななな……」
「にゃにゃにゃ……」
驚愕するバトラーと、シャーデンフロイデ。
そして。
「……ぶひょ、ぶひょ。
ぶひょひょひょひょひょひょひょひょひょ!」
ああ。
懐かしい、『ぶひょひょ』じゃ。
セルライト・ピッグテヰル公爵様、じゃ。
「き、貴様、魔貴族第2位、『聳え立つ奈落』剛力殺、だな。
ど、どうした。
貴様は、何も、か、関係ないだろう?」
……お。
流石はセルライト。
強さが分かっておるのじゃろう。
いきなりぶっこむことはしないようじゃ。
「関係なくは、ないな」
剛力は、きゃっちした私を地面に、とん、と置くと。
静かに、宣言した。
「これが、ボツリヌスだ」
……場が、静寂に支配される。
「「「「は、はああああああああああ!?」」」」
「ぼ、ボツリヌス様!?
く、首は?
ボツリヌス様の、首は!?」
後方からオーダーがやってきて、私をぺたぺたと触りながらおろおろしておる。
いや、見ればわかるじゃろう。
ないわ、そんなもの。
「ば、馬鹿な。
あ、穴は?
穴はないのか!?」
セルライトもぺたぺたと私を触っておろおろしておる。
だから、ないってば!
「「う、う、うあああああああああああああ!!」」
2人が顔を覆って、膝を付いた。
大分過剰に悲しんで居るようじゃ。
「……シャーデンフロイデ、コードネーム:餅つき」
「了解にゃ!」
セルライトが号泣したのを確認したバトラーが、すかさず剛力をたーげっとに定めた。
ふむ。
『餅つき』で、大体予想がついたぞ。
多分バトラーが『雷魔法』で相手を動けなくして。
そこにシャーデンフロイデが物理攻撃を加える。
ということを、繰り返す、のじゃろう。
まさに、餅つきじゃ。
『雷内兎!』
轟音とともに、剛力に雷魔法が落ちる。
動きが止まった剛力に、シャーデンフロイデが殴り掛かる。
獣人のヒトケタによる打撃じゃ。
いかに剛力といえど流石に……。
「にゃ、にゃああああああああああ!」
だ、だめじゃ。
またもや剛力は一歩も動いておらぬ。
そして。
シャーデンフロイデの右拳の方が、壊れた。
「次、行きますよ!」
「ま、待って!
これ、意味ないにゃ!」
シャーデンフロイデの声を無視して、2発目の『雷魔法』が剛力に落ちる。
「う、うにゃああああああ!
にゃあああああああああああああああああ!」
同じく、剛力を殴りつけるシャーデンフロイデ。
そして、今度は左の拳が砕ける。
「さあ、どんどん行きますよ!」
「ま、待って……」
そこからさらに、シャーデンフロイデの右足と左足が砕けて、『餅つき』は終了した。
「なんという強さ……これが、魔貴族……」
「いや、もっと早く分かって欲しかったにゃ……」
楽しい餅つきこんとをしてくれた2人を一瞥すると。
剛力は、豚公爵に向きなおる。
が、相変わらず剛力は動かない。
どうやら、攻撃に関しては甘んじて受け入れる心積もりのようじゃ。
そういう事しそうな奴じゃな。
無駄に男らしい。
あれ?
……もしかしたら、此奴ら。
私を殺された、と思っておるのかもしれぬ。
っていうか、普通に考えたら、まあ、そうじゃろう。
肉団子を指さして、『これがボツリヌスだ』と言っておるわけじゃし。
ここは、ちゃんと剛力に説明してもらわなくては、な。
「さて。
それでは、我の話を聞いてもらえると……」
そういうと、剛力は、言葉を切った。
……私に縋って泣いておったブギーマンが。
泣くのを、止めておった。
そして。
「もう……良い……」
「え?」
いつの間にか。
がおおおおおおおおおん!
剛力を、ぶん殴っておった。
当然、オーダーの拳が壊れ……。
「ぐぶうううううう!?」
……ずに、剛力が、吹き飛んだ。
いくつかの木や岩を砕いて環境破壊をする剛力。
「な、なんだ……このパワーは……!?」
驚いておる。
ちょ、ちょっとまて、魔貴族でも手も足も出なかった剛力を。
ふ、ふ、吹き飛ばす、じゃと!?
オーダーを見ると。
なんというか。
完全に、れいぷ目に、なっておった。
「もう、これで……。
終わってもいい……」
……え?
……終わっちゃ駄目じゃよ?
これはもしや、オーダーの奴、『オーダーさん』に、なりかけておる!
このままじゃ、剛力が、ボ。され兼ねん。
く、やばい!
私がふるふる震えておると。
「は?
え、この肉塊、なんで震えて……。
も、もしかして、奥様……生きて……」
バトラーが気づいてくれた。
私は跳ねるようにぴょんぴょんと弾むと、2人の間に割り込んだ。
「……!
『光魔法』!!」
見計らったように、完璧なたいみんぐで光魔法を使うバトラー。
そして。
「ふ、二人とも、やめよ!
私は、この通り、無事じゃ!」
私は、オーダーと、剛力の中央で。
元の姿に戻ることになった。
2人は、ぽかんとした顔で、私を見ておる。
よ、よし。
なんとか、2人を止める事が出来たぞ。
良かった良かった。
喜びながら、自分自身を確認する私。
「え、あ、あれ?」
球体から、『光魔法』を使われて、元の姿に戻った私は。
何故か。
……逆立ちの姿で、復活しておった。