第164毒 猛毒姫、繭に入る
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久しぶりのグロ回です。
そう言うのが苦手な方は……。
あ……いませんね。
じゃなきゃここまで読んでませんものね
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あらすじ
3男は反抗期。
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馬車を走らせて大急ぎで村へ向かう私たち。
何故か剛力殺の奴も、喜び勇んで付いてきておる。
「くくく……面白くなってきたな」
そうか?
私としては、全然面白くないぞ。
まあ、何かあった時の偉大なる戦力になるから、此奴を蔑にするつもりはないが……。
「それで村人よ、一体何があったのか説明してもらいたいのじゃが」
「それが、私共もさっぱり」
村人は首を捻るばかり。
「最近、なんだか邪木様の様子がおかしかったので」
「……野生の本能に目覚めたんじゃあないか?」
「私たちはいつもの10倍近い魔力を注ぎ込むことで対処していたのですが」
「……えっ、それって対処になっておらぬのじゃあないか?」
なんでそんな無茶苦茶な事をして対処できておると思っておるのじゃ。
「ある日とうとう、邪木様が暴れ始めたのです」
……これ、此奴らのせいじゃあないか?
いや、正確な話は分かってはおらぬのじゃけど。
「……まあいい、本人……本木から話を聞くとするさ」
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村へ到着すると、そこには暴れるトレントと、声を上げて魔力を注ぎ続ける村人達がおった。
“……ガアアアアアアアアアア!……”
「じゃ……邪木様!
おい、お前ら!
もっと魔力を注ぎ込むんだ!!」
「「「はい!」」」
はいじゃないが。
余所から見ると、魔力を注いでいるのが原因に思えるぞ。
私は怪我人がいないか周りを確認する。
トレントは、激しく暴れまわりながらも、まだ村民を傷つけてはいないようじゃ。
とりあえず一安心。
それにしても。
「以前の2倍くらいに成長しておるのう、彼奴」
これ、凄い成長速度じゃよな。
「これはもう、討伐対象だろ……」
剛力があっぷを始めたようです。
「……ちょっとだけ、話を聞いてみても良いか」
私は提案してみる。
トレントなどの魔獣が他の生き物と仲良く出来るなんて、聞いたことが無い。
魔族側が積極的に迎え入れて、魔獣側も知性を得てそれを受け入れた。
これ程お膳立てが出来あがることは、今までもこれからも、きっと無い。
「まあ、母親ならば我が子が可愛いだろうがな」
「だから息子じゃないし」
渋々ではあるが剛力は私に従ってくれた。
此奴、良い奴じゃの。
てっきり問答無用でトレントぶっ殺しに行くかと思ったのじゃが。
紳士じゃ。
私はつかつかとトレントの前に立ちはだかる。
「一体どうしたんじゃ、トレントよ!」
“……ハ ハハウエ ウガアアアアアアア!……”
「大丈夫、怖くない」
私が話しかけると、トレントは少しだけ静かになった。
「き、奇跡じゃ」
どこからか村長がやってきて、そんな声を出しておる。
私はトレントに向けて、ゆっくりと手を伸ばすと。
トレント側も私へ向けて、枝をゆっくりと伸ばしてきた。
「古き言い伝えは……誠であった!!」
村長は感極まって泣いておる。
何じゃ、言い伝えって。
トレントの枝はそのまま私の手へと伸びていき。
……がしっと擬音語が付くほど私のてに絡みついた。
「……あれ?」
村長がきょとんとして声を上げる。
ひょいっと私の体が持ち上げられ。
そのまま枝で巨大な繭みたいなものを作られてしまった。
「……あれ?」
思わず私も呟く。
と、閉じ込められてしまった。
何故じゃ。
「じゃ、邪神様をお助けするぞ!」
「し、しかし邪木様を傷つけることになります!」
枝の向こうから村人たちの声が聞こえてくる。
「よし、我の出番だな」
元気いっぱいな声が聞こえてきた。
剛力じゃ。
うずうずしておったのじゃろう。
「おい、トレントよ!
本当に一体、どうしたと言うのじゃ!?
このままじゃとお主、駆除されてしまうぞ?」
“……グガアアア!……
……木 ムラノミンナ タ ス ケ タ イ……”
「……!
やめろ剛力よ!
此奴はまだ交渉可能じゃ!
傷つけることは私が許さぬ!!」
「……嘘だろ、この状態でまだ信じる事が出来るのか」
私は声を張り上げると、繭の外で剛力の呆れた声が聞こえた。
なんだか知らんが、此奴は此奴で村のためになろうと頑張っておる様じゃ。
それが空回っているのかなんだか分からぬが、こんな事になっておるのじゃろう。
とりあえず理由だけでも聞いてやらぬと、可哀想じゃ。
しばらく待っておると、トレントがぽつぽつと話だした。
“……コノムラノツチ 木タチノ セイチョウヲ ジャマスルモノ ハイッテル……”
「……なんと」
まさか。
魔素、のことじゃろうか。
“……ソノセイデ サクモツ ソダタナイ……
……ダカラ……
……木ガ ゼンブ ス イ ト ル !!……”
「おいおい、トレントよ……」
乱心なんぞ、とんでもない。
誰よりも真っ直ぐに育っているじゃあないか。
木だけに。
「それにしても、暴れる程吸収しては本末転倒じゃろう。
木だけに」
“……木ガ ミンナヲ マモル……”
やっぱり人の話を聞かない奴じゃ。
「……よし分かった。
私もしばらく付き合ってやろう!
ただし、村人や他の者には絶対手をあげない事。
良いな!!」
“……ハ ハハウエ……
……グ グアアアアアアアアアア!……”
お、おお。
枝を通してでも、トレントの破壊衝動が立ち上っているのが見える。
魔素の影響、なんじゃろう。
その衝動は、村人へ向かうかと思ったが、突如反転。
「あれ、私?」
繭の中の枝が蠢き、私の左腕を圧し折った。
ぼきぼきと嫌な音がする。
“……ガアアアアアアア!……”
「ぬ、やばいのう」
私は命の危機を感じる。
いや、痛み自体は我慢できるから良いが。
今回の私、魔石なしじゃぞ。
回復とか無理じゃし、このままだと出血多量で死ぬ。
……今考えたら暴走トレントを前に魔石なしとか。
阿呆じゃな、私。
“……ハハウエ!!……”
すかさずトレントが回復魔法を掛けてくれた。
腕は変な風にくっ付いた。
関節が逆向きじゃ。
トレントにとっては、ちょっとした枝の形の違い程度なんじゃろうが。
左腕、動かなくなったぞ。
……まあ良いか。
後でバトラーに光魔法を使ってもらう。
それにしても、此奴、回復魔法も使えるとは。
俄然、面白くなってきたじゃあないか。
「よおし、トレントよ!
破壊衝動が我慢できないのであれば、私に向けるが良い!!
ただし、回復魔法を掛けるのを忘れるでないぞ!」
ぬふふ。
治るのであれば、圧し折られるのは嫌いではない。
“……ハ ハハウエ!……
……グ グアアアアアアアアアア!!……”
呵々大笑する私のもとに。
大量の枝葉が触手の様に。
私に襲いかかってきたのであった。