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豚公爵と猛毒姫  作者: NiO
魔貴族編
161/205

第161毒 猛毒姫、心を開かせる

終電ちゃんという漫画が、とっても面白いです。

布教したいのに、知り合いは誰も読んでくれない。

 *******************

 あらすじ


 世界は2人の最強の存在を許さない。


 宮本武蔵と佐々木小次郎、然り。

 バッ○マンとスー○ーマン、然り。

 そして……。


「……呪われし神よ、今こそ貴様の滅びる時。

 我は第八無限地獄の底より舞い降りし(・・・・・)鬼神!

 人呼んで、聳え立つ奈落(・・・・・・)・剛力殺だ!!」


「子鬼が吠えて、全く可愛らしいのう。

 底浅き(・・・)底無し地獄の主よ、奈落と言う物の本当の()を教えてやろう!

 私は生ける猛毒(・・・・・)にして、第八無間地獄を現世に顕現させる慈悲深き邪神(・・・・・・)・ボツリヌスじゃ!!」


 ぶつかりあう2柱のKAMI。

 どちらが勝っても、人類の地獄が始まる……。



 鬼神≪KIJIN≫ VS 邪神≪JASHIN≫


 2016年 夏 COMING SOON !!


 *******************



 ……え?

 ちょっと待って。

 かみんぐ・すーんて。


 ……来ないよ?


「おい、小娘」


「なんじゃ、殺よ」


 結局、殺の奴は私の屋敷に転がり込んで居候をしておる。

 既に数日が過ぎておるが、その視線はだんだん冷ややかな物を見る目になってきておる。


「お前、さっきから何をしている」


「え?

 逆立ちじゃが」


 私はと言えば、最近、逆立ちの練習を始めた。

 (きた)る日に備えての準備じゃ。

 鼻から行くのは何とかなると思うのじゃが、逆立ちが出来ないのでのう。


「……壁を使わないと、出来ないのか?

 逆立ち、だぞ?」


「何事も、鍛練よの」


「まあ、それは、そうだが」


 壁を使っての逆立ちの練習。

 殺の奴はすっかり毒気を抜かれておる。

 まあ、こんな私の日常を見ておったら、戦う気など失せるじゃろう。

 それも狙いの一つなんじゃが。


「よーし、5秒達成じゃ!」


「……良かったな」


 ぜーぜーしながら勝利に酔っておると、殺が褒めてくれた。


「……マザー。

 洗濯、終わったよ」


「おお、シツジか」


 とてとて、とやってきたのは、私の息子、シツジじゃ。


「お主は別に家事なぞしなくても良いのじゃぞ?

 私と一緒に酒池肉林しようじゃあないか!」


「……別に、大丈夫」


 ……うーむ。

 なんだかシツジの奴、いつまでも打ち解けないのう。

 なんじゃろ。

 元気が無いと言うか、感情が無いと言うか。


 まあ、記憶を失っておるし、ひどい目にもあっておるし、仕方ないと言えば仕方ないのじゃが。


 これは母親としてどうにかしてあげねばなるまい。


「シツジよ、何か欲しい物はないか?

 世界の半分とか」


「……いらない」


「美少女はーれむとか」


「……いらない」


 どうしよう。

 此奴の欲しい物、全然分からんぞ。


「……家事は、好きだから、大丈夫」


 なんだかそれはそれで心配じゃのう。


 いろいろ考えたが、シツジはもしかしたら、感動が足りないのかもしれない。

 感動は大事じゃ。

 ただ、そうそう心動かされることなど転がっておらぬしのう……。


 ふむ。


「……そういえばシツジよ、誕生日って知っておるか?」


「……誕生日?

 知ってはいる……覚えてないけど」


「よし、じゃあ本日、8月1日をシツジの誕生日にしようじゃあないか!」


「……僕の、誕生日?」


 お、少しだけ目に光が灯った様じゃ。

 こういう精神的なものが情操教育に大事なんじゃよな。

 子育てとか、初めてじゃが。


「それにしてもシツジは欲しい物がないらしいからのう。

 何をあげようか……」


 シツジはどうやら物質的なものはそんなに欲しくないらしい。

 では、いったい何を……。

 少しだけ考えて、私は思いついた。


「それではシツジよ。

 貴様には、絶景をくれてやろうじゃあないか!」


 私は魔石を握ると、光魔法を唱えた。

 私の使う光魔法は、光が無いと使えない物。

 そして、反射した光を操る物。


「……!!」


 というわけで、先ほどまでいたボツリヌス城の一室は。


 別の世界の空間になっておった。


「……な、なんだここは!」


 辺り一面雲の海。

 殺の奴は驚いておるが、次第に魔法によるものだと分かった様じゃ。


 光魔法は、光を操る魔法。

 つまり、いめーじした景色を映すことも可能じゃ。


 私がいめーじするのは、この世界で一番の絶景。

 あたり一面の雲海。

 足元には、鉱国の象牙壁。


 そう。

 ここは、象牙壁の(・・・・)てっぺんじゃ(・・・・・・)


「どうじゃ、シツジよ!

 流石に心動かされる風景じゃろうが!!」


 一面に広がる空の真ん中で、私は呵々大笑する。


「……」


 む、無言か……。


「……凄い……綺麗……」


 お。

 やっとシツジから、まともな感情を持つ言葉を聞いた。

 まあ、そりゃあそうじゃ。

 あの『時魔法使い様』ですら心動かされた風景じゃからのう。

 なんというか、古いようで、新しい。

 初めて見るようで。


「……なんだか、懐かしい……」


 そう。

 まさにそんな、風景じゃ。


 シツジの目に、少しだけ感情らしき物が宿った気がする。

 良かった、良かった。


 #######################################


「小娘よ。

 あんな凄い魔法を見せつけた後に、今度は何をしているんだ」


「え?

 酒池肉林じゃよ?」


「私は貴女のペットです、ご主人様!」


「ボツリヌス様、どうして君は夢の中にまで出てきて僕を苦しめるの?」


「とろける様だよ子猫ちゃん」


「……もう、いい」


 やっと殺が諦めてくれたようじゃ。

 心の中で呵々大笑しておると。


「……食事、作った」


「おお、シツジよ、有難う!

 でも、別にお主が作る必要はないんじゃよ?」


「……好きでやってるから、大丈夫」


 お。

 言葉に少し感情が入り始めている気がする。

 良い傾向じゃ。

 それにしても今回のは、なんだか嫉妬の様な気持ちが混じっている気がするのう。

 ……何故じゃ?


 私が不思議がっておると。

 シツジは、とてとて、と私に近づくと。

 ぎゅう、と抱きしめながら、恥ずかしそうに言った。


「……と、とろける様だよ、子猫ちゃん」


 うわ。

 なんじゃこの可愛い生き物。

ぅゎ ιっι゛ ヵヮぃぃ

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