第157毒 猛毒姫、邪魔する
という訳で連投企画は一旦終了です。
更新頻度は落ちますが、引き続きエタりませんので読んで頂けると幸いです~
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前回のあらすじ
蜜魔法が有能すぎる。
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「お疲れ様、ボツリヌス様。
次の村で、最後だよ」
「お、おお……やっとか……」
ニンニクに吊るされながら私は辛うじて言葉を吐き出す。
もう何か月も寝ていないような怠さじゃ。
「終わったらさっさと帰りたいものじゃ。
べっどで休みたい」
「ボツリヌス様、僕の疲れも考えてよ。
ぶっ続けで飛行しているんだからね。
今日は野宿です」
「私の疲れも考えてほしい」
2人でそんな話をしておると、最後の村が見えてきた。
「……なんじゃあれは」
村人たちが小さな子供をぐるぐる巻きに縛って歩いている。
「……この村は飢饉が凄いからね。
神様への生贄、なのかもしれないよ」
「生贄、か。
昔からの、宗教行事、なんじゃな」
普通に考えたら、こんな酷い行事は邪魔して廃止にするべきなのじゃろうが。
正直私は、たとえ人命がかかっていたとしても、こういう宗教行事を止めるのは悩んでしまう。
彼らはこれが正義だと信じておる。
生贄の子供も村のために胸を張って死んでいく。
今まで生贄にされた子供達の家族の気持ちもある。
考えれば考えるほど、私が邪魔していい案件ではない。
「いや、この村に生贄の文化はないよ。
今回が初生贄じゃないかな」
私が邪魔していい案件じゃった。
「止めるぞニンニクよ!
下降しろ!」
「弱いから生贄にされるんだよ。
子供は助けてもどうせ口減らしで死んでいく。
意味ないよ」
うむ、ニンニクはやはり魔族なんじゃなあ。
考え方が、くーるじゃ。
「私が蜜魔法魔法陣を書けば、死なぬかもしれないじゃあないか!」
「……積極的に死地に赴くスタイルなんだね。
じゃあ、降りるよ」
あ、そうか。
ニンニクの奴、なるべく私を変な揉め事に関わらせたくなかったのか。
すまぬ、気づかなんだ。
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「というわけで皆々様こんにちは。
この度この土地の支配者となった13魔貴族の1柱、ボツリヌス・ピッグテヰルじゃ。
気軽に『ぼつりん♪』とでも呼んでおくれ」
突然降りてきた私の自己紹介に、村の者たちが慌てておる。
「こ、これはこれはボツリヌス様。
この度はこの様な辺境の地へお越しいただき、誠に有難う御座います」
「うむ。
それで、この子供はこれからどうするつもりじゃ」
私は縛られている子供を指さす。
子供は、黒髪黒目の、恐らく羊の獣人のようじゃった。
くるんと回った両耳の近くから生える角がきゅーとじゃ。
そして、目は死んでおる。
「勿論、生贄に捧げるつもりです。
この土地は昔から不毛の大地でしたが、今年の干ばつはもはや、神の怒りに触れたとしか思えないほど絶望的な物です。
我々にできることは、もはやその怒りを鎮めるほかないのです」
「そうかのう」
とりあえず蜜魔法さえあれば食事に困らんと思うが。
「……この地は魔界でも特殊な、水が閉じられた空間の中を循環する村なんだよ」
「ほう。
詳しく聞かせておくれ」
「村の回りが高い山で囲まれているだろう?
この山のせいで、外から雲が来ないんだ。
そして同様に、村の地面から蒸発した水で作られた雲は、村の中で雨を降らす」
「ふうん?
確かに特殊じゃが、別にそれはそれで良いじゃあないか」
「しかしこれはプラスマイナスゼロにはならない。
村の中で作られた雲の多くは山に邪魔されるけれど、10%くらいは山を越えていく」
え。
じゃあ、どんどん水が減っていくぞ。
「それをなんとかするため村人は総出で水魔法を使い暮らしていたんだ」
「あ、そうか。
水魔法があったのう。
なんじゃ、今回もそうすればよいではないか」
「水魔法で作る量が足りなくなったんだよ。
魔力の有り余っている若者たちが、全員人間界で戦死したからね」
私のせいじゃった。
「そ、そうだ!
我々だってこんなことをしたいわけじゃない!!
でも、でも、どうしようもないんだ!!」
「くそ、それもこれもみんな前の魔貴族のせいだ!」
「ふざけやがってこの幼女、雨を振らせやがれ!」
「あーめ、あーめ!」
「DVD、DVD!」
あ、あ、やばい。
なんだか凄く危険なにおいがしてきたぞ。
ニンニクは「ほら見ろ」と言った顔をしておる。
……よし、ならば仕方ない。
ちょっと出来るかどうか分からない魔法を使ってみるとしよう。
理論上はいけるはずじゃが。
駄目だった場合、私は干からびて死ぬことになる。
まあ、良いか、いつかはやってみたい魔法じゃったし。
というわけで。
私は空に向かって、手をかざす。
「ちょ、ボツリヌス様、何するつもり……」
「知れたこと、ちょっと雨を降らせるぞ。
投身天使!!」
魔力が抜けていく感覚。
多分、魔力量3くらいしか使っていない手ごたえ。
そして、空を見上げると。
……すごくでかい雨雲がごろごろしておった。
「「「「……は?」」」」
皆がぽかんと空を見上げておる。
驚くのも無理はない。
遥か上空へ、しかもこれだけ強大な魔法を展開させたのじゃ。
通常であれば、どれだけの大魔力を使うのか想像もできないじゃろう。
多分、魔王とか龍とかでも厳しいんじゃあないか。
私みたいに、裏技を使わない限りは、のう。
驚いていないのは私と、生贄の子供くらいじゃ。
暫く呆然としていた村人たちであったが。
次第に状況を理解したのか、各人が喜びの声を上げ始めた。
「あ、雨雲だあああああ!」
「ふ、降り始めたぞおおお、数か月ぶりの雨だああああ!」
「か、神様ああああああ!」
死ぬかもしれない大魔法であったが、上手くいって助かった。
この村は閉じられた空間でもあるし、これで当面の水不足は解消できるじゃろう。
「い、いったい何をしたの、ボツリヌス様……?」
「乙女の秘密じゃ」
当然秘密に決まっておろう。
村人たちは、みんな手を合わせて神様、神様と天に感謝を捧げておる。
神様というか、やったのは私なのじゃが。
まあそんな小さなことは言わぬさ。
うんうん、何はともあれ良かった良かった。
大雨の中、私は笑顔で頷くのであった。
……よく見ると村人たち、何故か私を見ながら神様神様連呼しておる気がするが。
多分、私の勘違いじゃな。
馬鹿な短編書きました。
お暇でしたら是非。
シャチクパス 診断 計10問
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超社会的人格を持った精神病質、シャチクパス・・・
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