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豚公爵と猛毒姫  作者: NiO
豚公爵編
147/205

第147毒 猛毒姫、BOB団を結成する

 *******************


 前回のあらすじ


 ピッグテヰルとキサイの過去が明らかに!!(なりませんでした)


 *******************


 キサイが没して1ヶ月が過ぎた。


 セルライトは普段通りに笑顔を浮かべる様になったが。

 いつもの、ぶひょぶひょ笑いが消えておる。


 大切な人が居なくなった時、それを悲しむ時間は絶対に必要な物じゃ。

 しかし、そうだとしても。

 1ヶ月もの間それに思い煩い続けると言うのは、精神衛生上宜しくないと思うのは私だけじゃろうか。


 勿論、キサイがセルライトの中で、それだけ大きな存在だというのも分かるが。

 キサイの場合は不慮の事故などではなく、寿命じゃ。

 その生き様を称える事こそすれ。

 いつまでも悲しむというのは違うんじゃあないか、と思う。


 うーむ……このままでは、あまり良くない気がするぞ。


 と、言う訳で。


「第1回、ピッグテヰル公爵を励ます団、通称BOB団の活動を始めたいと思う!」



 私が会議開催の宣言をすると、バトラーとシャーデンフロイデがぱらぱらと手を叩いた。

 ちなみにオーダーはと言うと。

 私の後ろで、自作したと思われる氷のじぇんがで遊んでおる。


 自由じゃ。


「最近の公爵様は、いくらなんでも覇気が無さすぎです。

 どうにかしなくてはと、私も思っていました」


「……ところで、BOB団ってなんのことにゃ」


「ピッグテヰル公爵を励ます団じゃ!」


「にゃ?」


 誤魔化した。

 ちなみにBOB団とは、『豚公爵を、大いに励ます、ボツリヌス達の、団』の略じゃ。

 むふふふ、横文字。

 何を隠そう実は私、英語が得意なんじゃ。


「あと、それは?」


「うむ」


 BOB団の団員は合計4人。

 私と、バトラーと、シャーデンフロイデと、もう一人。

 それが。


「キサイ(遺影)じゃ」


 私は南無南無と手を合わせる。

 今回のセルライトの不調は、きっと彼女が一番心を痛めておると思う。

 という訳で、参加して貰うことにした。

 彼女がここにいると思うだけで、良い(あいであ)が出てきそうじゃしのう。


「うーん……少し不謹慎な気もしますが。


 大奥様なら、きっと笑って参加するでしょうし、まぁ良いでしょう」


「私は反対にゃ!

 そいつが全ての元凶にゃのに!!」


 シャーデンフロイデがキサイ(遺影)をびしっと指さして。


「貴女のは完全に不謹慎ですよ、シャーデンフロイデ」


 バトラーがその人差し指を、優しく圧し折った。


「ギニャ――――――!!??」


「お、おい、バトラーよ。

 流石にやりすぎじゃあないか」


「いえいえ、やりすぎどころか、ジャスティスです」


「じゃすてぃすか」


 じゃすてぃすならば、仕方が無い。


「それでは、何か案はないか」


「ええええ!?

 そ、それで納得できるのかにゃ!?


 だ、誰か回復魔法を……」


「一番分かりやすいのは[ノクターン]ですけどね」


「うむ。

 しかし以前[ノクターン]ったのじゃが、見事に失敗に終わったぞ」


「回復魔法……」


「私も元気づけようと一生懸命[ノクターン]ったのですが。

 ピッグテヰル公爵様は[ノクターン]いで、いつも通り[ノクターン]れてしまいました///」


「惚気か」


「回復……」


 残念じゃが[ノクターン]で元気づけるには限界がある。

 豚公爵がその分野でぶっちぎりの上位種だからじゃ。


「……ならば、セルライトのもう一つの関心事。


『魔法』についてならば、どうか」


「『魔法』、ですか……。

 チャレンジする価値はあると思います。

 公爵様が新しい魔法を見て喜ばなかったことはありませんから」


「ならば、その方面で行ってみるとするか……」


 振り返ってみると、オーダーのじぇんがは凄いばらんすを保っていた。

 ため息を吐いただけで倒れてしまうとすら思える程のそれは……もはや芸術へと昇華されていた。

 凄い。

 凄い暇人じゃ。



「そんなことをやっている暇があったら、案の一つでも出すにゃ!」


 シャーデンフロイデが折れた指とは逆の手でオーダーを指さすと。

 じぇんがが、がしゃんと倒れた。

 ああ、そんな大声を上げるから。


「にゃにゃにゃ!?

 ご、ごごごごごめんなさいにゃ!!」


「……仕方ありませんね。

 形あるものはいずれ滅びます」


 オーダーはそう言って笑うと。

 愛おしむかのように、シャーデンフロイデの指を圧し折った。


「ギニャ――――――!!??」


「お、おい、オーダーよ。

 や、やりすぎじゃぞ!」


「ジャスティスです」


「じゃすてぃすか」


 じゃすてぃすならば、仕方が無い。


「それでは、他に何か案はないか」


「ええええ!?

 じゃ、ジャスティスって、そんなにも全てを解決できる言葉なのかにゃ!?」


 いや、だって自業自得じゃろう。

 シャーデンフロイデの泣き言を背景に、第一回BOB団会議は幕を下ろした。

 ちなみにシャーデンフロイデの骨折は、回復魔法を使わずに本人が自力で治しておった。

 凄いのう。


 ######################################


 今私とオーダーがいるのは、公爵の部屋の窓から見える中庭じゃ。



「という訳で、私の考えた、新しい魔法理論を見てくれ。

 まずはこれじゃ」


 ちらりと横目でセルライトが見ていることを確認した後。

 私は一本の木に魔法陣を刻む。


「これは……風魔法の魔法陣、ですね」


 オーダーは刻まれた魔法陣をなぞりながら呟く。


「以前考えた仮説なのじゃが。

 紙でなく、木に直接魔法陣を描きこんだら。


 少しの魔力で魔法が使えるのではないか、という実験じゃ。


 あ、ちょっと待っておくれ。

 今魔力を注ぎ込んだら私に直撃こーすじゃから、絶対魔力を注ぎ込むなよ」


「分かりました!」


 オーダーは魔法陣に魔力を注ぎ込む。

 何が分かったんじゃ。


 勿論魔法陣からは大量の風が吹き出し、私はごむぼーるの様に空を飛んだ。


 ####################################


「いててて。

 魔石を持っていたおかげで空魔法を使えて助かったが……。

 オーダーよ、話を聞いておったか?」


「聞いてましたよ。

『押すなよ、絶対押すなよ』ですよね」


「全然違うぞ!」



「それにしても、注ぎ込んだ魔力はほとんど無かったんですが。

 凄い量の風が吹きましたね。

 確かに紙より木に書いたほうが、少ない魔力で魔法が発動するみたいです」


「ふむ。

 これは、新しい魔法の可能性の発見といってもよかろう!」


 私はセルライトの部屋へ視線を移す。

 セルライトは、ぼーっとこちらを見ておるが、相変わらず嗤い声は無い。


「うーむ。

 せっかく凄い魔法を見つけた上に、空高く吹き飛ばされたのに。

 一笑も無いとは残念じゃ。

 よし。

 ならば更に凄い魔法を見せてやろう」


 私は再度、木に魔方陣を刻み込む。


「……見たこともない魔法陣ですね」


「うむ、私が開発した新魔法じゃ。

 光魔法の様に人間には使えない魔法を考えてみて、思いついたんじゃ」


 私は描いた魔法陣に魔力を注ぎ込む。

 すると。


「え、え、え!

 な、なんですか、これは!!」


 魔方陣から、黄金色の液体が零れ落ちてきた。

 私はそれをぺろりと舐めとり、Vさいんをした。


「大成功!


 蜜魔法、じゃ!!」


「み、みつまほう?」


 うむ。

 ある意味、促成魔法なんかと似た魔法ではあるが。

 植物が蜜を作る能力を底上げする魔法じゃ。

 これがあれば、砂糖が無限に湧き上がるぞ!


 自信満々にセルライトの方へ振り返ると。

 むふふ。

 目を見開いて、笑顔を浮かべておる。


 勝ったぞ!

 私は勝ったのじゃ!!


 何に勝ったかは、よく分からぬが。


 ##################################


 因みに翌日、再び蜜魔法魔法陣を使用しようとして木に向かったら。

 大量の虫たちがびっしりこびりついていたため、使用不能になっておった。


 まあ、セルライトがそれを見て久しぶりに大爆笑してくれたので、よしとしよう。

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