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豚公爵と猛毒姫  作者: NiO
豚公爵編
140/205

第140毒 猛毒姫、感慨深く頷く

前回の話を今更読み返して間違いに気づきました。


なんか、光魔法、出来ちゃった。

 →なんか、陽魔法、出来ちゃった。の間違いですね。


ボツリヌス様が光魔法を使うとただのチート主人公になるので、多分これからも使わせません。


感想欄のご指摘の意味が、やっと分かったNiOさんなのでした。(遅い)


 *******************


 前回のあらすじ


 NiO「ヒャッハー!エタ作家様のお通りだー!!

    こいつァ地獄だゼェーッ!!」


 NiO「えーっと……どんな話だっけ……」


 *******************


 陽魔法を使えるようになった私。

 驚愕するキサイ。

 魔法の理論自体は完成させていたのじゃろうが、実際に使えるとは思っていなかったのじゃろう。


「そんなバカな……理論上人間には不可能のはず……」


 キサイはぶつぶつ何かを呟いておる。

 むふふふ、何やら悔しがっておるのかのう。

 それにしても、良い魔法を手に入れた。

 これなら暗闇で物を照らすことが出来る。

 便利じゃ。

 そう言えば、この世界にも”だんじょん”とかあるらしいが。

 陽魔法が無ければ、明かりとかどうしておるのじゃろう。

 全部松明なのかしらん。

 一酸化炭素中毒とか、怖くないか?


「この魔法なら、暗闇で酸素を使わずに明かりを灯すことが出来ますね。

 いろいろ使い勝手が良さそうです」


「暗闇……。

 あ、そうか!


 ボツリヌス、もう一度魔法を使ってみてくれ!」


 キサイは何かに気付いたように、指を鳴らす。

 部屋の明かりが、ふと消えた。

 真っ暗じゃ。


 成程、今こそ陽魔法の真価が問われるときじゃの。


「了解です!

 『陽魔法』!!」


 私は自信満々に魔法を唱えた。

 そして。

 暗闇の中で、私の張り上げた声が空しく木霊する。

 うむ。

 暗闇のままじゃ。



「あ、あれ?

 お、おかしいのう。

 『陽魔法』!『陽魔法』!」


 ぬ、ぬ?

 さっきまで使えたのに、どういう事じゃ!?


「なるほど……」 


 キサイは何かに気付いたような声をあげ、ぱちんと指を鳴らす。

 部屋に明かりが灯る。


 と。


「あ、あれ?

 陽魔法が、使えておる」


「やはり、そうか……。

 これは、陽魔法では無いな。


 陽魔法の根本は、ホタルやクラゲ、ヒカリゴケなどに含まれるルシフェリンという物質によって成り立っている。

 勿論、人間の体には存在しない。

 ボツリヌスの魔法は、どうやら自身が光を反射していることを魔法の根本に置いているようだな」


「る、るし……?

 ……まあ、要は自分で光る事の出来る物質で出来た魔法が陽魔法で。

 自力で光れない者でも使う事の出来る魔法が私の魔法、という事ですね。


 ん?

 それだけ聞くと、私の魔法は陽魔法の上位互換の様に思えるのですが」


「勿論、人間にも使うことが出来ると言うのは長所だがな。

 ただし、弱点もある」


 ふむ?

 そりゃあ、弱点もあるじゃろうが。

 人間に使えるか使えないか、というだけでそんな弱点を補ってあまりのある物のはずじゃし。

 

「よそから光が反射できない状態……つまり、光のない暗闇の状態では


 ……魔法が使えない事だ(・・・・・・・・・)


 前言撤回。

 魔法の存在意義そのものを引っくり返すほどの弱点じゃった。


 これはあれか。

 太陽電池式懐中電灯(・・・・・・・・・)みたいなやつか。


 暗闇では使えないので、明るいところでお使いください、という。


 完全に意味のない魔法になってしまった。

 私はすっかり意気消沈する。


「あー……まあ、それでも、一応新しい魔法を見つけたんだ。

 おめでとう、ボツリヌス!

 えーっと……名前でもつけたらどうだ?」


「いや、流石に使い道が無さ過ぎて恥ずかしい……陽魔法の一部に入れておいてくれ……」


「そ、そうか……まあ、なんだ……ドンマイ」


 珍しくキサイが慰めてくれたと言う。


############################################### 


 そんなこんなで、やたらキサイの実験室に入り浸る日が続いた。

 私が来る度に『やれやれ』といった表情をするキサイであるが、ぶっちゃけ嬉しがっていることが丸わかりで可愛らしい。

 年が近いせいか、話も合うしのう。


 ん?

 豚公爵との組んず解れつはどうしたんだ、じゃと?

 お主の言っている意味が良く分からんのじゃが。


 ……まあ、あれから成るベく顔を合わせぬようにしておる、と言うのが実際のところじゃ。

 一時期は離婚を切り出されたのじゃが、ここの居心地が良くてのう、出来れば離れたくない。

 と言う訳で逃げ回っておる。

 公爵も離婚に関してはあれ以来切り出して来ないしのう。

 なあなあで無かったことになれば良いのじゃが……などと思っていた、ある日。

 

「公爵様、来客です」


 公爵と、キサイと、私。

 無言で食事をしておると、バトラーがやってきてピッグテヰルにそう告げる。


「来客?

 さ、サヨナラー公爵領が滅ぼされて、まだそれほど、ひ、日は経っていないはずだが……。

 こ、こんな時期に、だ、誰だ?」


 公爵の疑問も最もじゃ。

 治安も回復しておらぬこの時期に、わざわざ訪ねてくると言う事は。

 よっぽど重要な使者か、あるいは、治安を回復させる者(・・・・・・・・・)……。


「勇者一行、です」


 おお。

 久しぶりじゃ、ユウシャ達か。

 別れてから1年……経つか経たないか、くらいかのう。


 当時のユウシャに、あの聖剣の試練を超えられる精神力があったとは到底思えぬが。

 魔族領との緩衝地帯である公爵領へ来たと言う事は、これから魔族領へ向かうと言う事。

 つまり、聖剣の試練を見事攻略し、聖剣を携えてここに来たと言う事。


 ……彼奴も、精神的に大きく成長したんじゃなあ。


 私が感慨深く頷いておると。


「ゆ、勇者一行、だと?

 面倒臭い。

 屋敷には入れるな」


 あ、あれ。

 会わぬのか?


「はい。

 そうおっしゃるかと思いまして、門前払いしようとしたのですが……」


「失礼。

 まかり通らせて貰いました、公爵様」


 お、おお!

 バトラーの背後には、何時かの懐かしい面々が4人、勢ぞろいしておった。


「な、なんだ貴様らは!

 ぶ、無礼者め!!」


「……大変な失礼、誠に申し訳ございません。

 しかし公爵様。


 我々は、人類の代表者。

 貴賤を超え、人族全員が一丸となって協力して頂く存在である、とご理解ください」


 ほほう!

 ユウシャが、あのユウシャが!

 ピッグテヰル公爵の殺気に抗い、堂々と交渉までしておる!!


「……なるほど。

 それで、人類の代表者様が、な、なんのようだ?」


「はい、2つ程、お願いをしに伺いました。

 1つ目は、ラクチン山道を通過する許可を頂きたいと考えております」


 ラクチン山道。

 人間界と魔界の境目にはデリケート山脈が聳え立ち、お互いの防波堤となっておる。

 そして、山脈には計3か所、谷の様になった比較的歩きやすい山道が存在する。


 旧・サヨナラー公爵領にあるコンナン山道。

 コロスキー公爵領にあるナカナカ山道。

 そして、ピッグテヰル公爵にあるラクチン山道である。


 当然この3か所を有する領地は魔族と頻回に戦闘がある。


 ユウシャ達は、今回魔界へ赴くためにラクチン山道からのあぷろーちを試みる様じゃ。


「な、なんだ、そんな事か。

 断る」


「……は?」


「断る、と言ったのだ、別の山道を当たれ」


「……そうですか、分かりました」


 ユウシャは溜息を吐いて引き下がる。


「そ、それで、もう1つの頼み事とは、な、なんだ?」


「はい、こちらの方が本題なのですが」


 ユウシャがそう言ったかと思うと。


 あっという間に勇者一行が、私の目の前で陣を組んだ。

 まるで、ピッグテヰル公爵から(・・・・・・・・・・)私を守るように(・・・・・・・)……。


「え、え?

 ど、どうしたんじゃ、みんな……」


「何も言うな、ボツリヌス。

 辛かったな。

 頑張ったな」


「可愛いボツリヌスちゃんに……絶対に、絶対に許さない!」


「後は、任せてください」


 センシ、マホウツカイ、ソウリョが、背中を向けて私に声を掛ける。


「……ど、どういうつもりだ、人類の代表者?」


「これは、人類の代表者では無く、我々個人の判断です。



 ボツリヌスを……彼女を、解放しろ」


 次の瞬間、ユウシャはピッグテヰルへ裂帛の闘気を叩き付けた。

 先ほどまでの慇懃な態度からは想像も付かない程の、殺意すら伴った怒声。

 部屋中の空気が震え、たったそれだけで戦闘員でないめいど達はへたり込んで動けなくなっておる。


 常人なら、それだけで泡を吹いて失神するようなユウシャの覇気を受けて。


 豚公爵は(・・・・)嗤った(・・・)


「……ぶひょ、ぶひょ。


 ぶひょひょひょひょ(・・・・・・・・・)ひょひょひょひょひょ(・・・・・・・・・・)



 いやだ(・・・)()言ったら(・・・・)?」


 やばい、私だけじゃろうか。


 この2人が。

 ……勇者と(・・・)魔王に(・・・)見えるのは(・・・・・)

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