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豚公爵と猛毒姫  作者: NiO
豚公爵編
131/205

第131毒 猛毒姫、落とす

*******************


 前回までのあらすじ


ボツリヌス「海老や蟹と似たような味がする」


オーダー「それいじょうはいけない」


 *******************


「じ、直に口で、じゃと!?」


 豚公爵め。

 信じられん。

 恐ろしく屈辱的な事を言ってのけよる。


「そ、それが、ピッグテヰル公爵家の、る、ルールだ」


 絶対今作ったるーるじゃろうに。


 とは言っても、ここは従う他あるまい。

 美味しい物を出され、馬鹿みたいに油断してしまった私が悪いのじゃ。


 くそ、こんな、土下座の様なぽーずを取らされるとは……みじめ。

 こうなったらさっさと食べてしまうに限る。


 もぐもぐ。


 ……おお。

 なんじゃこの肉。

 唇で噛み切れるではないか!


 しかも、噛みしめる毎に染み出てくるこの味。


 これは良い鼠を使っておる。

 さーろいん鼠じゃ。



 私が幸せそうにもきゅもきゅしておったら。

 シャーデンフロイデが蛆虫すーぷを持ってきてくれた。


 これは絶対合うぞ。

 蛆虫と鼠の結婚(まりあーじゅ)


 にこにこしながら皿を受け取ろうとすると。


「シャーデンフロイデ……()頭からかけろ(・・・・・・)」 


 はあ!?


 驚く間もなく、私の頭の上に、すーぷがぼたぼたと零れ落ちてくる。


「ほらー流石に悔しいんじゃないかニャー♪」


 シャーデンフロイデは嬉しそうにしておる……。


 こ、此奴ら、ふざけおってからに!


 こんな美味しい物を、わざと零すとは!!

 もったいない!!


 とりあえず私は可能な限り地面に落ちた蛆虫やすーぷを舐め尽つくし、鼠肉を食べ尽くす。


 さてと。


 私は起き上がると、豚公爵を睨みつける。




「……食べ物を落としたら、それを直に口で食べることを強いられ。

 食べている最中に頭からすーぷをかけられ。

 そのうえで、地面に落ちたそれらをきれいにしないといけない。


 ……これが、ピッグテヰル家のやり方、なのじゃな」


 豚公爵は鼻を鳴らして威張っておる。


「そ、その通りだ、ボツリヌスよ。

 郷に入っては、郷に従えよ」


ええ(・・)勿論(・・)


 さて、シャーデンフロイデ。


 ピッグテヰル公爵に(・・・・・・・・・)おかわりの蛆虫すーぷ(・・・・・・・・・・)を用意しておくれ(・・・・・・・・)

 出来る限り(・・・・・)熱々で(・・・)のう(・・)


 私は、ピッグテヰル公爵の前に出されている鼠肉を、指差した。


「ぶひょひょひょ……ボツリヌスよ。

 き、貴様、まさか魔力10の分際で。

 ()私の鼠肉を(・・・・・)()地面に落とそうと(・・・・・・・・)思っているんじゃなか(・・・・・・・・・・)ろうな(・・・)?」


 豚公爵はほっぺたの脂肪をぶるんぶるん振るわせて、大笑いしておる。

 同時に、自身の鼠肉の前に、分厚い風のしーるどを展開した。


 シャーデンフロイデは猫耳をぴくぴくさせると。

「なんだか面白くなってきたニャ」と呟きながら蛆虫すーぷを給仕するため部屋を出る。



 さて。

 突然じゃが。

 物質運搬や飛行を行う魔法として、風魔法と、空魔法がある。

 

 似た物に思われるが、全く違う魔法じゃ。


 風魔法を用いての運搬と言うのは。

 どらいやーの風でぴんぽん玉を運ぶいめーじじゃろう。 


 たくさんの風を使って、小さな物を、ようやくふらふらと運べるのが風魔法じゃ。


 一方、空魔法は。

 ぴんぽん玉を掴んで、動かすようないめーじじゃ。

 小さな魔力で、自由自在に物を移動できる。



 風のばりあ?

 豚公爵の、魔力量?


 それ(・・)意味ないぞ(・・・・・)


 私が手を振ると、豚公爵の鼠肉が、風魔法による抵抗空しく、地面に落ちる。




「「「……」」」




 部屋の中が、一瞬静寂に包まれた後。



「ぶぶぶぶぶ、ぶひょお!?」



 まさか私が空魔法を使えるとは思っていなかったんじゃろう。

 豚公爵が、驚きの声を上げた。



「それでは、家長自ら(・・・・)家訓をお守りください(・・・・・・・・・・)


 私が笑顔で豚公爵に話しかける。


「こ、これは、メシウマだにゃー!」


 すーぷを入れて帰ってきたシャーデンフロイデが。

 豚公爵の鼠肉が地面に落ちているのを見て満面の笑みを浮かべる。


 ……おいおい。

 シャーデンフロイデの入れてきたすーぷ、なんか溶岩みたいに『ぼっこぼっこ、ぶっしゅぶっしゅ』言っておるが。

 彼女自身も熱すぎてすーぷ皿を持てないのか、とんぐを2つ使って運んできた。

 やりすぎじゃ。


 ……まあ、脅しにはなろう。


 私はそのすーぷをとんぐごと受け取ると。

 ピッグテヰル公爵の元へ歩き出す。



「……さて、公爵様。

 大変心苦しいのじゃが。


 私も今日から、ピッグテヰルを名乗らせて頂く人間。

 結婚衣装の白無垢は、『貴方の色に染めてください』と言う意味があると言う。

 私も、同じ気持ちじゃ。

 ピッグテヰル家の当たり前を、1つずつ、少しずつ学ばせてほしい」


 ピッグテヰル公爵は、みるみる顔色を真っ赤にしておる。


貴様(・・)ボツリヌス(・・・・・)!」


ピッグテヰル家の一員(・・・・・・・・・・)()なりたいのです(・・・・・・・)

 どうか私を(・・・・・)貴方の色に(・・・・・)染めてください(・・・・・・・)


 殊勝な事を言っておる様じゃが。

 要は、『今からお前と同じことをするぞ』という意味じゃ。

 にやにやしながら、すーぷを構える私。


 後ろでは、シャーデンフロイデが「いけー、やっちゃうにゃー!」とか言っておる。


「……おい、しゃ、シャーデンフロイデ」


「にゃ?」


「お、お前。

 この鼠肉、()食べていいぞ(・・・・・・)


「にゃ!?」


 む。

 その考えはなかったぞ。

 成程。

 別の者に(・・・・)食べてもらうとは(・・・・・・・・)



「い、いやにゃ、いやにゃ!

 私の不幸は、メシマズだにゃー!」


 涙目で首を振るシャーデンフロイデであるが。

 主人の命令には、逆らえないらしい。

 ……そんなにいやな物か?

 地面に落ちているだけで、肉自体は大変美味しい物じゃよ。


「ね、鼠のお肉なんて、食べたくないにゃー!!」


 場合によっては、その気持ちも分からなくもないが。

 お前、猫じゃろ?


「ボツリヌス……お、お前を普通の人間だと思っていたのが。

 そ、そもそもの、ま、間違いだったようだな」


 泣き叫ぶシャーデンフロイデをBGMに、豚がそんな事をのたまった。


「普通の人間どころか、可愛らしい幼女じゃよ」


 私は肩を竦める。


 椅子に座る豚公爵と。

 立って見下ろす私。

 いやいやしながら四つん這いで鼠肉を食べておるシャーデンフロイデを挟んでにらみ合う2人。


 しばらくの空白の後。


「……ぶひょ(・・・)ぶひょ(・・・)ぶひょひょひょひょ(・・・・・・・・・)



 豚公爵は。


 熱々のすーぷ皿を、とんぐを掴まずに持ち上げると。


 シャーデンフロイデの頭の上に、ぶちまけた。



「ぎにゃー!!」



 ぼこぼこと沸騰するまぐまを浴びて、猫耳娘が悲鳴を上げてのた打ち回る。


 ……ちょっと可哀想じゃが。

 さっき私の頭にすーぷを直接かけたのは此奴じゃし。

 煮えたぎるすーぷを入れてきたのも此奴じゃ。

 自業自得と言えよう。



「おいおい、ピッグテヰル公爵よ、可哀想なことを。


 シャーデンフロイデは、猫舌じゃろうに」


「そそそそこは問題じゃないにゃ!」



 まあ、そこはあまり問題じゃないじゃろうな。



 豚公爵は、ぶひょぶひょ笑いながら。

 今までで一番、邪悪な笑顔で、嗤った。


()もうやめだ(・・・・・)ボツリヌス(・・・・・)

 ()語り合うのは(・・・・・・)沢山だ(・・・)



 これから(・・・・)()貴様には(・・・・)


 正しく地獄を(・・・・・・)()見せてやろう(・・・・・・)



 豚公爵は、椅子から立ち上がると、すーぷ皿を持ったせいで火傷に爛れた手を。

 私の頬に、あてがいながら、言葉を続けた。



()新婚初夜と言う(・・・・・・・)()地獄を(・・・)()



 やばい。

 ちょっと豚公爵を、本気にさせ過ぎたかもしれん。



 ……私、壊れちゃわないじゃろうか?

※※※零したスープやお肉は、スタッフが美味しく頂きました※※※


さて、多分、次回はいよいよボツリヌス様、新婚初夜回です。

豚と毒の組んず解れつ(夜版)。

ノ ク タ ー ン 展 開 、待 っ た な し。

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