第130毒 猛毒姫、舌鼓を打つ
※※※久しぶりのジビエ回です。
お食事中の人はブラウザバックを推奨します※※※
*******************
前回までのあらすじ
拙作、ブレーメンの屠殺場がスコップされました。
12/18 ブクマ57
→12/22 ブクマ267
NiOさん
「スコ速様がワダすの作品、『ブレーメンの屠殺場』をスコップしてくれたことは。
すごく……光栄で、感動で心が震えました。
まるで……一度死んだ我が子が生き還ったような……そんな気がすたんです」
ぼつりん「おいおい、ふらぐ、ふらぐ」
*******************
夕食の時間になると、バトラーが部屋までえすこーとしに来てくれた。
「ピッグテヰル公爵がお待ちです」
「え。
もう大丈夫なのか、公爵は」
光魔法で体は回復したとは言え、精神的には一回死んだはずじゃ。
私でも、死んだら1週間くらい寝っ放しになるというのに。
此処で寝込んでしまっては、私とのいにしあちぶの取り合いで完敗したことになるとは言え。
相当に、頑丈な精神力をしておる。
改めて、気を引き締めねばのう。
#########################################
案内された部屋は、予想通りの巨大な広間に、馬鹿みたいに長いてーぶるが置かれていた。
端っこに豚公爵は座っており。
私は、逆の端っこの席に座らされた。
それにしても、何という無駄なてーぶる。
うむ。
貴族っぽくて、浪漫じゃ。
「さ、さて、ボツリヌスよ。
そう言えば、あ、挨拶をしていなかったな。
よ、ようこそ、ピッグテヰル家へ」
……うん?
ピッグテヰル公爵は、にこにこと笑いながら、挨拶をする。
……毒物持参については何も言及しないつもりか?
勿論此方は既に理論武装を済ませておるが。
「先ほどは、申し訳なかったのう」
一応、軽く牽制してみると。
「な、なあに、構わんさ。
じゅ、従者が武器を持つことを許されるように。
お、お前も自分を守る武器を持つのは、し、自然な事だ」
意外な事に、あちら側から許しを得ることが出来た。
そこで、やっと気づく。
公爵の声に力が無い。
顔色も、遠目から見ても分かるれべるで青い。
やはり、相当無理をしておるのじゃろう。
現在のこんでぃしょんで私と言い合いをしても勝てないと判断し、器を見せつける方針にしたのじゃろうか。
「こ、これからは家族として。
と、ともにピッグテヰル公爵領を盛り上げていこうぞ」
「勿論じゃとも」
そちらがうぇるかむしてくれるのであれば、私としても何をどうする事も無い。
公爵と会話をしておると、シャーデンフロイデがぐらすに液体を注いでくれた。
「そ、それでは、ピッグテヰル家の発展と、ボツリヌスの嫁入りを祝って、か、乾杯」
「乾杯!」
……まさか、変な物は入っておらぬよな?
念のため久しぶりに鑑定をしてみたが、あるこーるや毒などは入っておらぬ様じゃ。
私はぐらすを掲げ、中の液体を乾かす。
「ど、どうだ、熊の生き血の味は?」
「ぬるいの」
私が正直に答えると、豚公爵は何故か目を見開いて驚いておる。
「そ、そ、そうか」
む?
何を狼狽しておる。
不思議に思っていると、今度はほかほかのすーぷが出てきた。
なんとも食欲をそそる、良い匂い。
それでは、さっそく。
「おお美味い、なかなか良い出汁が出ておるのう」
「そ、そうか。
そ、底の方にある肉は、も、もっと美味いぞ」
「ふむ」
ひょいとすぷーんで掬ってみると。
まるまると太った蛆虫がごろごろしておった。
「ど、どうだ、蛆虫スープの味は?」
「くにくにしてて珍味じゃな」
以前食べた生のぷちぷちも良かったが、太らせたものを煮ても美味しいんじゃな。
勉強になったぞ。
「え、ええ、あ、ああ、うん」
ピッグテヰル公爵も、何だか苦々しい笑顔で相槌を打っておる。
#######################################
そんな感じで食事は続いた。
どうやらピッグテヰル公爵は、本当に私を歓待してくれておる様じゃ。
なんだか疑って悪かったのう。
次々と出てくる、ご馳走の数々。
蛙の卵のさらだに、源五郎と田螺の炒め物、やもりの踊り食いに、ごかいの天麩羅。
流石は異世界。
面白い料理もあるもんじゃ。
私は夢中でもきゅもきゅ食べる。
おう、ごきぶりのすなっくは、ぼりぼりと触感が面白いのう。
穀象虫の炊き込みご飯も、見た目が可愛らしい。
ハムッ、ハフハフ、ハフッ!!
あ、蛆虫のすーぷ、お変わり貰えるかの?
「なんで平気な顔で食べてるにゃ。
全然つまんないにゃ」
む?
シャーデンフロイデはぼそりと何か呟いて、私のすーぷ皿を回収していった。
「……」
ピッグテヰル公爵は、何だか完全に沈黙しておる。
それに、食事も進んでおらんようじゃ。
……やはり、先程のだめーじが相当に堪えておるのじゃろうか。
こんなに美味しい物を。
可哀想に。
「メインディッシュの、鼠の丸焼きになります」
「いよっ、待ってました!」
鼠は大好物!
私が目にはーとまーくを浮かべておると。
……何故か豚公爵がぶち切れながら。
私の鼠肉を、風魔法で皿ごと地面に叩き落とした。
「……な、なんじゃ?」
「お、おや、ボツリヌスよ。
肉を、お、落としてしまったか……」
白々しい。
お主が落としたんじゃろ。
……まあ良い、3秒るーるじゃ。
なんとなく、鑑定をしてみる。
****************************
床に落ちた鼠の丸焼き
毒性なし。感染症なし。
ボツリヌス・ピッグテヰルが今まで食べてきた物の中では清潔な部類に入る。
****************************
お。
結婚したから、私の苗字が変わったわ。
そして最後の行は、毎度毎度大きなお世話じゃ。
「トキシン侯爵領ではどうだったかは、し、知らんが。
ピッグテヰル公爵家では、お、落ちた物も食べきらなくてはならん」
ふむ、そんな家訓が。
勿論、郷に入っては郷に従えであるからのう。
私は鼠肉を回収しようとすると。
「ち、違う。
直に、口で、だ」
……む。
やはり美味しい料理だけでは終わらぬか。
わざわざ幸せの絶頂に置いて、油断したところにこの仕打ち。
豚公爵の私に対する嫌がらせの第二幕が。
とうとう、始まったようじゃ。
たまに発動する、猛毒姫の鈍感力。
ちなみに、スコップされた作品は、以下の奴です。
ブレーメンの屠殺場
http://ncode.syosetu.com/n9431ct/
面白いよ!
ホントだよ!