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豚公爵と猛毒姫  作者: NiO
魔族侵攻編
112/205

第111毒 猛毒姫、引き続き観戦する

*******************


 前回までのあらすじ


 魔貴族 VS ニコチンお兄ちゃん


*******************


 ニコチンが魔貴族の元へ歩み寄る。


「『私の命で勘弁してくれ』……?

 それは、この戦争を終わらせてくれってコトかしら?」


「そうだ」


「無理ね」


 魔貴族はぴしゃりと断った。


「そもそも、貴方達、私がなんでこの戦争を起こしたか、分かってないでしょう?」


 うむ。

 分からん。

 魔貴族は訳の分からない理由で動くと言うが。

 此奴は比較的言葉も通じるておるし、知能も非常に高いように思える。

 納得行く理由が、ありそうなんじゃが。


「理由……それはね。


 素敵な異性を見つける為よ!」



 前言撤回。

 ぶっ飛んでおった。

 完全に気狂いじゃ。



「簡単に言うと、ハーレムの人数も減って来たし、補充目的ね。


 私は人間の顔とか骨格とか好きなの!

 でも、最低限の戦闘力は欲しいし……。

 あと、尊敬できる人じゃないとね!」


「……お前は、それだけの為に……この戦争を、起こしたって言うのか……?」


「それだけの為?


 とんでもないわ、自分の伴侶を見つけるのは戦争と同義、なんて良く言った物でしょう?

 だからこのくらいは普通よ、普通。


 人間の性格が出るときって、死ぬ間際じゃない?


 だから、戦争を起こしたの。

 女は全員死んで貰って。

 男は死ぬ寸前までなって貰って。

 そして、好みじゃない奴は死んで貰って」


 価値観が違い過ぎてくらくらしそうじゃ。


 此奴にとっては、この戦争は婚活の一種。

 合同こんぱ、だったのじゃ。


 各々の人間性を見る為。

 そのために戦争を起こした。

 そして、そのためだから、人族側を洗脳しなかったのじゃろう。


 これで、魔貴族が人間族をどう思っているのか、少し垣間見る事が出来た。



 ……本当に(・・・)どうでも良い存在(・・・・・・・・)なんじゃろう(・・・・・・)



「でも、前の都市は失敗したな~。

 なんか、結婚式のお祝いとかしているから、ムカついて皆殺しにしちゃった~」


 ぶちん。


 隣で、ニコチン袋の緒が切れる音が聞こえた。

 顔を上げて見ると、本気(まじ)で米噛みの血管が切れて、血が吹き出しておる。

 ……だ、大丈夫、じゃよな?


「……焼き尽くせ……」


 ニコチンの目の前に、ばれーぼーる大の火球が現れた。

 おお。

 ニコチンは火魔法が使えたのか。


 火球は大きさを変えることなく、密度と温度を急速に上昇させながら、その色を赤から青へ、青から白へと変化させていく。


 素人が見ただけでも分かる。

 いくらニコチンとは言え、この火球は明らかに人間の限界を超えた物じゃった。

 現に、ニコチンは目から、耳から、鼻から、口から、夥しい出血をし始めた。


「あら、貴方もやれば出来るじゃない。

 限界を超えてるのは、大事なものを馬鹿にされたせい?

 領民を守る義務のせい?

 ……そこの、チビ助ちゃんを守りたいせい?」



「『煉獄(プルガドリウム)』!」



 質問に答えず、ニコチンは火球を放つ。

 ぷらずまと化した火球は、魔貴族にぶつかって……。





 ……掻き消えた(・・・・・)



「ま……魔法を、掻き消した……!?」


「ち、違うぞ、ニコチン!」



 ……そして、私にも、やっと見えた。



「こ……此奴……使ってるのは……風魔法、だけじゃ……!!」


「……あら、チビ助ちゃん。

 なかなか良い目をしてるみたいね。


 そうよ。

 さっきの氷魔法も、今の火魔法も。

 全部(・・)風魔法で相殺したの(・・・・・・・・・)




 魔法を(・・・)跡形も無く相殺する(・・・・・・・・・)


 例えて言うならば。

 滅茶苦茶に乱射された鉄砲の弾を。

 優しく(・・・)お箸で受け止めて(・・・・・・・・)全部お茶碗に回収する(・・・・・・・・・・)くらいの芸当じゃ。

 それも、発展4源を、基礎4源である。

 どれだけの力量差があれば、それが可能なのじゃろうか。


「うん、ニコチンさん、かな?

 貴方も合格よ。

 そこで、横になってて良いわ」


 そういうと、いつの間にか目の前に現れた魔貴族の一撃によって。

 ニコチンは意識を失った。


「お……お主、先程から、合格とか、連れて行くとか。

 こんな滅茶苦茶やって、此奴らが付いて来ると思っておるのか?」


「んー?

 思ってるわよ。

 例えば、そこのコックさん。


 周りの皆への優しい気持ちであるとか。

 戦闘に対する激しい気持ちであるとか。

 料理に対する真摯な気持ちであるとか。


 それらぜーんぶ、私が好きであると言う(・・・・・・・・・・)気持ちに上書きすれば(・・・・・・・・・・)いいのよ。


 そうすれば、私無しでは(・・・・・)生きる事も出来ない(・・・・・・・・・)素敵な男性が(・・・・・・)完成するわ(・・・・・)


「……はあ?


 そんな事をすれば、奴の精神は、早々に磨り減って死んでしまうぞ?」


「……はあ?


 そうなったら。


 また別の男に取り(・・・・・・・・)換えれば良いじゃない(・・・・・・・・・・)?」



 駄目じゃ。

 此奴は、言葉が通じるだけの、獣じゃ。

 そして私は、その獣に、此処で殺される。


「それじゃあ、チビ助ちゃんも……」




 どごおおおおおおおおおおお!



 突然の轟音に、魔貴族が振り向く。



 どごおおおおおおおおおおお!

 どごおおおおおおおおおおお!

 どごおおおおおおおおおおお!



 轟音と共に。

 魔族側後陣の者達が。


 ……空高く舞っておるのが(・・・・・・・・・・)、此処からでも確認できた。



「なな、なんだあああ!?」

「ばば、馬鹿な、我ら魔族が、タイマンで負けるなんてえええ!?」

「しし、しかも、素手喧嘩(ステゴロ)だとおおお!?」


 そんな声と共に魔族達を撒き散らせながら、そいつは此方にずんずんと近づいておる様じゃった。

 ……って言うか、大体、分かったわ。



「……あれ、何か分かるの?

 チビ助ちゃん?」


「……いけめんの仕業、じゃよ」


「あら……ふうん、そうなの?」


 魔貴族は嬉しそうにして吹き飛ばされる魔族を見ておる。

 私は、嘘は言っておらんよ、うん。


 やがて、人垣を掻き分けて現れた男に。

 魔貴族は、嫌そうな顔をする。


「ガハハハ、儂、参上!!」


 確かに、奴はいけめんの部類に入るじゃろう。



 ……(じじい)じゃがの!

 私は現れた爺……タクミと共に(・・・・・・)、心の中で呵呵大笑するのであった。


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