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豚公爵と猛毒姫  作者: NiO
魔族侵攻編
106/205

第105毒 猛毒姫、戦力外通告を受ける

******************


 前回までのあらすじ


           奇蹟のカーニバル


          開     幕     だ

        n:       ___      n:

        ||    / __ \    .||

        ||    | |(゜)  (゜)| |    ||

       f「| |^ト    ヽ  ̄ ̄ ̄ /   「| |^|`|

       |: ::  ! ]      ̄□ ̄     | !  : ::]

       ヽ  ,イ  / ̄ ̄ハ ̄ ̄\  ヽ  イ


*******************


 魔族が目の前まで迫ってきておるらしい。

 領内で激しく打ち鳴らされる鐘の音。

 幸い非戦闘員の多くは避難した後ではあったが、それでもまだ数十組の家族が残っている様じゃ。

 ニコチンが大急ぎで数人の兵を呼んできて、隣領へ移動する算段を付けておる。


「シガテラ、ダイオキシン、ボツリヌス。

 こっちへ来い」


 何だか慌ただしくニコチンに呼ばれた。


「今から残っている領民を避難させる。

 いつ、どこから魔族に襲われるかも分からない、過酷な旅になるはずだ。


 シガテラ、ダイオキシン。


 お前ら2人はトキシン侯爵家の代表として、彼らを守ってほしい」


 ……ふむ。

 成程。

 避難しろと。


 戦力外通告じゃな。


 「お前ら避難しろ」ではシガテラもダイオキシンも納得せぬじゃろうからのう。

 2人はニコチンのそんな持って回った言い方にすっかり騙された様で、口を真一文字にして「「わかったー!」」と真剣な顔で言っておる。


「そして、ボツリヌスよ」


 2人が鼻息荒く「「がんばろー!」」とやっている様を生暖かく見守っておると、ニコチンは彼らに聞こえない様にしゃべりかけてきた。


「まあ、大体予想はついていると思うが……。

 可能な限り安全な場所を見つけて、2人守ってくれ。


 ……頼めるか?」


 ふむ。

 ……私も戦力外通告か。


 魔石にはまだまだ潤沢に魔力があるから、それなりに戦えるつもりなんじゃが。

 ……ニコチンが言うなら仕方あるまい。


「約束しよう。

 可能な限り安全な場所を見つけて、2人を守る。


 トキシン侯爵家の名に(・・・・・・・・・・)かけて(・・・)!」



 私は曇りなき眼で(・・・・・・)ニコチンを見つめ、約束をした。


「あと、避難を担当する兵士には私達を気にする様に言わなくて大丈夫じゃ。


 自分たちの事は自分たちでする。

 幼いとはいえ、シガテラもダイオキシンも貴族なんじゃ。

 流石にそのくらいは出来ねば」


「そうか……、そうだな。

 あ、それと、一応これを預けておく」


 ニコチンは私にとらんしーばーを渡してきた。

 トキシン家、とらんしーばー持ち過ぎじゃろ。

 こんな無駄使いしておるから、貯蓄が無くなるんじゃ。


「では任せたぞ、ボツリヌス!」


 ニコチンはそう言うと、走って自分の持ち場へ戻って行った。

 彼の背中が見えなくなると、早速私はわーきゃー兄妹に話しかける。


「……さてと。

 シガテラにダイオキシンよ。

 ニコチンから大切な指令を言い渡されたわけじゃが……」


「うん、皆を守るよ!」 

「絶対に、指一本触れさせないんだから!」


「いやいや、領民の皆さんは兵隊さんが守ってくれるじゃろう」


 私が指さす先には、屈強な若者が数人、非戦闘員を保護するため動き回っておる。

 間違いなく、シガテラやダイオキシンよりしっかり動き回れる連中じゃ。


「え?え?あれ?」

「じゃあ、私達はどうすれば……?」


 さっきまで力強かったくせに、おどおどしておる。

 可愛らしい奴らじゃ。


「ふむ、じゃから、私達は彼らとは別行動で。

 安全な場所に移動しようかと思っておる」


「安全な?」

「場所?」


「うむ」


 私は指を1本立てると、言葉を続けた。


「空の、上じゃ」


#############################################


 魔族軍は、総数およそ4000。

 てっきり魔族と言うのは真っ黒な肌に角や尻尾が生えているようなのを予想しておったが。


「なんじゃ。

 以前帝国で見た亜人達と、あんまり変わりないのう」


 確かに私の想像通りの魔族もおるが。

 獣族っぽい者がその多くを占めており、むしろ人間族以外の混成軍と言った方が正しいように思える。

 なんだか、魔族の定義からして分からなくなってきた。


「しかし、隙の無い隊列じゃ」


 敵方には魔貴族がおるらしい。

 たった2日でここまでやって来たという事は、電撃戦(ぶりっつくりーく)を考え付く高い知能と、魔族を指揮できる高い戦闘力を持っておるのじゃろう。

 そして、その魔貴族が今回選んだ隊列は、以前ニコチンが予想した通りの、最もおーそどっくすなたいぷの物であった。

 長所も少ないが短所も少ない。

 それゆえ力と数で勝っていれば、最も手堅く勝ちに行ける陣形。


 敢えて弱点を上げるとすれば、隊列の真ん中。

 此処に魔法を幾つか打ち込めば、なんとかなるかもしれないとの事。

 というか、隊列の真ん中に魔法を幾つか撃ち込まれて平気な陣形なぞ存在しないが。


 私たちは魔族軍とトキシン侯爵領がにらみ合っている様子を、空の上から文字通り高みの見物をしていた。

 右手にシガテラ。

 左手にダイオキシン。


 その状態で空魔法を使って絶賛飛行中。

 空を飛ぶと言う事で、怖がったりしないかと不安ではあったが。


「わははははーー!」

「いひひひひーー!」


 2人は、めっちゃ楽しんでおった。

 私は呆れた様に溜息を吐くと、2人を(たしな)める。


「ほら、2人とも。

 そろそろ良い距離じゃ。

 さっき言ったように、やっていくぞ」


「うん――!」

「任せて――!」





 ……魔族軍の隊列の(・・・・・・・)真ん中から(・・・・・)200m程上空。

 そこが、私達の現在地じゃ。



 と、言う事で。


 私たちは元気よく、声を揃えた。



「「「…… バ ッ カ ル(・ ・ ・ ・) コ ー ン(・ ・ ・) !!」」」

天使の触手(バッカルコーン)詳細

⇒第48毒 猛毒姫、浪漫を語る

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