第104毒 猛毒姫、始まる
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前回までのあらすじ
豚のお嫁さんになりまんた。
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私のお腹の傷は、長身ぽにーてーるに治して貰えた。
治療しやすい様に、飛び出した小腸や大腸をいそいそと回収する。
「はい、中身」と言ってバトラーに渡すと、大爆笑された。
笑い上戸か。
「……トキシン侯爵領と魔族との戦闘を成るべく最小限にするべく我々4公は動く、という方針で可決させてもらって宜しいでしょうか。
……3対2ですね。
それではそのようにしていきましょう」
コロスキー公爵が、既に結果の分かっている議題を可決すると。
「以上で会議を解散します。
各々、戦闘準備を整えてください」
あっさりと解散となった。
「え?え?
他にも戦闘形式とか決める事があるんじゃないんですか?」
私は唯一の女性、ダブルピース公爵に質問すると。
「ああ、確かに決めたいことは他にもあるが。
トキシン侯爵領には、早ければ3日で魔族が到着する。
一番近い我が領でも、軍が準備をしてトキシン侯爵領に到着するのはそのぐらいの時間が掛かる。
……恐らくタイミング的には、ギリギリだ」
そうか。
転移魔法陣があるとは言っても、軍を移動させる事が出来る程のれべるではないのか。
短期の早馬で2日掛かる距離。
確かに軍備を整えて、兵站を準備して、隊として動くのであれば、その距離をわずか3日で、と言うのは驚異的なすぴーどじゃ。
「おい、歯抜け。
お、お前は吾輩と一緒に来るのだ」
一人でぽつぽつと考えておると、ピッグテヰル公爵の声が掛かった。
「いえいえ、まさか。
正式な婚約が決定するまでは、男の家に上がり込むなどと端無い真似は致しません」
私の言動に、豚公爵はぶひょぶひょ笑う。
「ふ、ふむ、確かにな。
それではその時を楽しみにしているぞ」
そう言いながら、私の体を舐めまわすように眺める。
「こ、こうしてみると。
な、なかなかいい顔と体をしているなあ」
む。
い、いえすろりこん、のーたっち。
「そ、それからな、ボツリヌス・トキシン侯爵代行。
吾輩の守備範囲は。
男女構わず。
下は3歳から、上は100歳まで」
これは凄い。
私も余裕で攻略対象に入っておる。
「き、貴様なんぞ、ストライクゾーンのど真ん中も同然だ。
よ、嫁に来たことを……。
い、い、いや。
生きていたことを、後悔させてやるからな」
ピッグテヰル公爵は、高笑いしながら去って行った。
「あー……まあ、元気出せよ。
ピッグテヰル公爵は、凄く嫌な奴だけど、良いところが無いかっていうと、それはおそらく違うんじゃないかな?って噂があったりなかったりするとかしないとか」
「そうですよ。
生きていれば……人生であと1回くらいは、良い事ありますって」
デカエース公爵と、コロスキー公爵が、私の肩を叩いて励ましになっていない励ましをしてくれた。
こ、此奴らトキシン侯爵領が滅ぶ話をされても眉毛1つ動かさなかったくせに。
私がピッグテヰル公爵に嫁ぐとなると、なんでこんなに可哀想な者を見る目になっておるのじゃ。
……まあ、仕方あるまい。
私の身を捧げる以外、4公を参戦させる手立ては思いつかなかったしのう。
後は、何が何でも領地を守るだけじゃ。
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「……という訳で帰ったぞ!」
自宅に戻ると、ほとんどお通夜もーどじゃった。
戦闘準備をしながらも、みんな気づいておったのかもしれぬ。
普通に考えたら、4公は助けに来ないであろうと。
そして、その場合、どれほど策をめぐらせても、どれだけ必死に戦っても、侯爵領は滅びるだろうと。
「……どうだった、ボツリヌス」
あまり期待をしていないような顔で、次男が声を掛けた。
「ふむ、ばっちりじゃ。
なんとか3日後には援軍が来るようにしてくれると言っておった」
私がVさいんを作ると、周囲がざわつき始めた。
「……本当だな」
「嘘は吐かぬさ、意味がないしのう」
「聞いたか、皆の者!」
ニコチンが声を張り上げる。
屋敷中に響く様な声じゃ。
「3日だ!
3日耐えれば援軍がくる!!
魔族どもに、トキシン侯爵領の底力を見せてやるぞ!!」
「「「「お、お、お―――――――――――!!」」」」
その場にいる全員が、鬨の声を上げた。
「わー!」
「きゃー!」
そして、何故かわーきゃー兄妹が抱き着いてきた。
「す、す、凄いよ、聖女様ああ」
「う、うええええん、聖女様ああ」
2人とも、怖かったんじゃな。
恐怖か、嬉し泣きか分からんが、泣き出してしまった。
「ボツリヌスよ。
……代償は、なんだ?」
「ああ……ピッグテヰル公爵の所に、嫁ぐことになった」
ニコチンには色々ばれておる様だったので、そのまま伝える。
「……そうか。
大丈夫だ、その約束は、無かった事にしてやるからな」
「いや、私は行くよ」
「!?」
「長女と一緒じゃよ。
逃げられるのに戦いに行ったのはこの私。
自分の尻についた糞は、自分で拭くさ」
私が呵呵大笑すると、ニコチンは悔しそうな顔で俯いた。
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2日間が過ぎた。
隣の領から兵隊を借りる事は出来なかったが、ぎるどから戦闘できる者達を数百人と、兵士として参加する数百人の領民による簡易軍隊が出来上がった。
ぎるどからの傭兵に関しては、ストリー国王も国として動いてくれたらしい。
お陰で使うお金が大幅に減ったとニコチンは喜んでおった。
ただ、これから増える兵隊のために食糧を用意しなくてはならないし、最終的には支出は変わらんじゃろうがのう。
これで、こちらの人数は500人ちょっと。
対して魔族軍は少なく見積もっても3000人。
そして、魔族1人を殺すのに、人間10人の命が必要と言われておる。
館のめいど達やぎるどのめんばー達は良い勝負をするかもしれないが、やはり4公がいなければ、どう考えても勝ち目はないじゃろう。
ニコチンはぎるどめんばーの長と農民の長を集めて作戦最終段階の詰めに入っておる。
一応トキシン侯爵家とのことで、私や三男、次女も参加しておるが、内容は私でも付いて行くのがやっと。
下2名に関しては、ふむふむと頷きながらも、頭の上にさっきから『?』まーくが浮かびっ放しで可愛らしい。
まあ、戦争や戦略に関しては、完全にお子様の守備範囲外じゃ。
私たちの仕事は、明日以降に備えて英気を養う事じゃろうか。
そんな事を考えながらぼーっとしておると。
見張りの兵士が部屋の中に入ってきた。
「おい、作戦会議中だぞ!」
「申し上げます、魔族軍が……
魔族軍が、やってきました!
その数、およそ4000 !!」
……想定より1日早い戦争が、始まろうとしていた。