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豚公爵と猛毒姫  作者: NiO
魔族侵攻編
101/205

第100毒 豚公爵と猛毒姫

と言うわけで、トキ様祭りは落ち着きを見せました。

皆様の応援、誠にありがとうございました!

因みに結果ですが。


ブクマ  74➡︎644

ポイント238➡︎1741


……これは今人気投票やったら、一度も本編に登場していないガラクトース・グロテスク様が上位に食い込むかも分からんね。

 5公会議所。


 その建物の中央、5公会議室。

 5角形に作られた部屋のど真ん中には、同じく5角形をした机が置かれていた。


 既に着席している貴族は3人。


「く……一刻を争うこの時に、なぜアイツはまだこない!」


 苛々しながら声を上げるのは40代の男。

 5公の1人、オンヲアダ・デカエース公爵であった。


「転移魔法陣を作った功績があるとはいえ……。

 流石にこの一大事に遅れてくるのは、許される事ではないぞ!!」


 同じく声を荒げるのは、まだ20代を思わせる女性の騎士。

 同じく5公の1人、バイタビッチ・ダブルピース公爵である。


「ま、まあまあ皆さん、そうカリカリなさらず。

 こんな時だからこそ、落ち着きましょう」


 2人の怒りを収めようとニコニコ笑う、30代の中肉中背の男性。

 同じく5公の1人、サイコパス・コロスキー公爵である。


 そんな事を話していると。

 部屋の扉が開き、やっと待ち人が現れた。


 扉はその男用に作られた、横幅が3倍はある物。

 汗をかきながらノシノシと部屋を歩くと、大理石でできた地面は安普請で作られた床の様にミシミシと音を立てる。


「み、み、みなの者。

 遅れて悪かったなあ。

 ぶひょ、ぶひょ。

 ぶひょひょひょひょひょひょひょひょひょ」


 ……身長は2m近くあるが。

 横幅は、それよりも大きい。


 頭は禿げ散らかし、顔には油が浮いている。

 目元には大量の目やにが付いており、左鼻の横にある巨大な黒子が、その醜さに華を添える。

 そして、それらを誤魔化すように付けられた高価な指輪やネックレスの数々が。

 まるでスイカに塩を掛けて素材の味を引き立てるかのように。

 彼自身の素材そのものを、より強調していた。


 彼の名は、セルライト・ピッグテヰル公爵。


 やっと登場した彼こそが、この物語のもう1人の主人公……豚公爵である。


 他の公爵は、声を上げようとして彼を見た後、俯いた。

 気分が悪くなったのだ。


 「さ、サヨナラー公爵のために、は、花を選んでいたら、遅くなってしまってな」


 豚公爵の隣に立つ、長身でポニーテールを結ったメイドが、美しく活けられた花瓶を運んできて。

 モブ・サヨナラー公爵の座るはずであった机の上に、そっと置いた。


「こ、故人を偲んで」


 豚公爵は立ったまま、目を瞑って黙祷する。

 あまりに白々しい行為であったが、糾弾する訳にもいかず、他の3人も渋々とそれに従った。


 ガタガタガタ……。


「……うん?」


 部屋の外の騒がしさに、4人の公爵が気付く。


 そして。


「も、申し上げます!

 トキシン侯爵代行を名乗る娘が、公爵様方に会わせろと騒いでおります!」


「トキシン侯爵?

 ……ああ、サヨナラー公爵領に隣接する貴族の。

 今回泣いてもらう所ですね(・・・・・・・・・・)


「どうでも良い、摘み出せ」


「そ、それが、『私より偉くない癖に邪魔をする奴らは、此処での働き口を無くしてやる』などと騒いでおりまして。

 皆が手を出しかねている様です」


「馬鹿な! そんな事出来る訳無かろう!」


 デカエース公爵が声を上げ訂正しようとするが、時すでに遅し。



「……くくく、見―付けた!

 此処じゃのう?」



 扉を開けて入ってきたのは。


 

 真っ赤な髪に、金色の瞳。

 白いドレスを臍だしルックの様に着こなし、腹部には赤いサラシを巻いている。


 ……若干5歳の少女であった。


 公爵たちは叱責しようとしたが。

 少女はまず目に入った公爵を見て、声を上げた。


「な……ぶ、豚が、立っておる!?」


 部屋にいる全員が、体を固くして緊張する。

 恐ろしい暴言だ。

 しかし、初見の彼女がその程度の暴言で止められた事を、皆は心の中で褒めていた。

 ……例え、これから何が起ころうと。



「な、な、なんだ、この無礼な歯抜け幼女(・・・・・)は。

 つ、ついでだ、全歯まとめて抜いてやろう。

 そ、そうすれば、使い道(・・・)も出てくる。

 色々と(・・・)、な」


 全歯を抜く(・・・・・)

 部屋の人間は皆、心の中で少女に黙祷を捧げた。

 彼は、やるといったらやる男(・・・・・・・・・・)だからだ。


 豚公爵は、虫歯と金歯しかない口腔内を見せつける様に、醜く笑う。

 常人ならば、恐怖で動けなくなるような彼の笑顔。


 しかし意外な事に。

 少女はそれを見て、呵呵大笑した。


「ふむ、尺八か(・・・)


 確かに、それも良いがのう。

 今日はもっと良い音楽を聞かせに来たのじゃ!」


 あの豚公爵と、真面に会話をしている(・・・・・・・・・・)……!?

 部屋の全員が、少女に釘付けとなった。


 たっぷり空白の時間をおいて。

 ここぞと言うタイミングを知っているかのように。

 少女は、言葉を続けた。



三味線を(・・・・)弾きに来た(・・・・・)!」



面白い(・・・)

 聞こうか(・・・・)歯抜け(・・・)



 2人は同時に爆笑すると。

 誰かに確認を取る訳でも無く。


 ……どかり(・・・)と椅子に腰を掛けたのであった。

お祭り終了と言うことで、更新ペースが不定期に戻ります……。


因みに。


尺八を吹く…笛拉致男のこと

三味線を弾く…相手をまどわすような言動をとること。


です。

念のため…。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 素晴らしいネーミングです! 私もこんなセンスが欲しかった!
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