第10毒 猛毒姫、生み出す
魔法を学んで数日、水魔法LV1の『水玉』がほぼ問題なく発動するようになった。
そのまま『熱玉』、『風玉』もとんとん拍子に使用することが出来た。
意気軒昂である。
続いてLV2の魔法を教えてくれとオーダーに言うと、彼女は苦笑いをした。
「『赤き水と青き水を動かすその循環たる器よ!生み出されし大潮の流れを導け!水操』」
今、オーダーが使用しているのは水魔法LV2の『水操』、ある程度の水を生み出し、自由自在に操る魔法。
……そしてその消費魔力は……13であった。
「消費魔力13?……え?私の魔法の番はもう終わりかえ?」
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それでもオーダーは何度か『水操』を繰り返し使ってくれた。
せっかくなので魔法を観察していると、要は『水玉』5回分の魔力を使ってある程度の水を作り出し、それを残り3の魔力で制御するということを一つの魔法として組み合わせただけの様じゃ。
解れば簡単、その魔法を分解すれば消費魔力3の『水操(劣化版)』が完成した。
これで最初から水を準備しておけば制御用の魔力だけで済むのである。
さっそく『水玉LV1』で水を生み出し、『水操(劣化版)』で動かしてみる。
消費魔力は2+3で、5である。
「ぬぬぬ!意外と骨がいるのう」
「え……ええ!?なんで『水操』使えてるんですか!?」
さらに、『水玉』に関してもこっぷ半分量の『水玉LV1(劣化版)』消費魔力1が出来るか試してみたら、案外簡単に出来た。
「これは小回りが利きそうじゃ。
これで魔力量10でももう少し魔法が使えそうじゃのう」
「あー。凄ぇーわ。コイツ天才だわー」
オーダーが敬語も忘れて呆然と呟いていた。
そうは言っても、相変わらず魔力総量は10であるんじゃがのう。
「天才と言われると照れるが、そんなに凄いことなのかのう」
「魔法の分解なんて聞いたことないですよ!これを発表したら魔法の歴史が確実に3年は進みますよ!!」
「3年か。
『歴史が進む』を褒め言葉にするなら、10年とか100年とかの単位で褒めてくれ」
更に、LV3の『水圧』は、生み出した水玉を圧力で相手にぶち当てるというやっと攻撃魔法らしい技となっていた。
消費魔力は驚異の30である。
驚異なのは私くらいではあるが。
さっそく分解して使える様にしようとしたが、どんなに調整しても『水に圧力をかける』という消費魔力が12程度は必要らしく、私は『水圧(劣化版)』の習得を泣く泣く断念した。
ちなみに補助四源は、最低でも100の魔力が必要なので最初から無視しておる。
一連の私の魔法弄りを見てオーダーはしきりに感心して唸っておった。
「ボツリヌス様はやはり才能がおありになりますね……。
『水玉LV1(劣化版)』に関しては『改良』程度ですが、『水操LV2(劣化版)』や『水圧LV3(劣化版、作った本人使えず)』に関してはある意味新しい魔法の『創造』ですよ。
……残念ながらボツリヌス様ほど魔力が低くない場合は、あまり使い道はありませんが」
むふふふ。
そうかそうか、才能があるか。
この場合は魔法という学問に対しての才能と言うことかのう。
さらに調子に乗って“風・土・熱”のそれぞれのLV1である『風玉』『土玉』『熱玉』も消費魔力1の劣化版を開発した。
ただし、『水玉』もそうであるが、実用性は全くない。
それぞれ“涼しい・鶏卵大の土が出る・暖かい”くらいの便利さで、長々と詠唱するくらいなら自力で何とかした方が良いものばかりであった。
続いてLV2である『風操』『土操』『熱操』も『水操』と同様に劣化させ何とか使うことが出来るようになった。
これでひとまず自分が獲得出来る魔法は一通り使える様になった……なったが……やはり魔力量が全く足りていない。
上記の魔法を覚えるのにも実は魔力量の都合上1週間近くかかっている。
魔力量10では一日で使用出来る魔法は魔力枯渇を考慮しなくてもLV1で10回、LV2に至ってはわずか3回でしかない。
無詠唱を行えるようには、100万回の詠唱が必要なのだ。
100万回(笑)である。
まともにやると、例えば水玉(劣化版)LV1を習得するのに10万日、270年以上かかる。
270年以上て。
江戸時代が始まって終わるぞ。
残念ながら、そんなに長生きできる自信はちょっと無いのう。
ちなみにこの世界では生活魔法として基礎4源を使用しており、甕いっぱいの水を生み出したり、風や熱で家の中の温度を快適に調整したりしています。
そして、LV5くらいまでの魔法は、魔法効果が小さすぎて一般人は誰も使いません。




