ドキドキな初めまして
二日目のあらすじ。
初任務、無事完了。
※コーヒー片手にご覧になることを一応勧めておきます。
???side
「ふぅー、アメリカからここまで遠いよ・・・えーと、私の部屋は・・・ここの廊下の先かな・・・」
ユーリside
「ごちそうさまでしたー」
どうも、ユーリです。只今朝食を食べ終えたところ。当夜さんと真由が2人での任務だから今日は非番だ。2人とももう任務に出ている。・・・真由が眠そうだったが大丈夫だろうか。
「当夜さん達はこういう時に副業してるんだよな・・・」
自分がやるとしたらなんだろうか・・・そんなこと考えながらとりあえず自室に戻っていたら。
ガチャ
「おう!?」「きゃ!?」
おおう、目の前で扉が開いた・・・
「ご、ごめんなさい!えっと、大丈夫・・・?」
「あ、ああ。大丈夫。当たらなかったから・・・」
えーと、この人は・・・初めましての人だよな?
「「え、えーと・・・」」
・・・わ、話題が出ない!こういう時なんて切り出せばいいんだ!?ちくしょう、高校生の時に慣れとけばよかった!
「あ、あのー・・・汗かいてますけど大丈夫です?」
「え?あ、えと、え、ええ、大丈びゅで・・・」
・・・全然大丈夫じゃない。噛んでるし・・・
「・・・くすっ」
ほら、笑われたぞ自分!(泣)
「・・・えと、狩谷ユーリさん、ですよね?」
「え、あ、そうですが・・・」
「やっぱり、お兄ちゃんの言うとおりだ」
「お兄ちゃん?・・・あ、もしかして」
「うん、私は井鷹 真朝。井鷹 当夜の妹です」
お、おお、この人が・・・
「・・・て、当夜さんの言うとおり、てどういうことで?」
「え?そりゃ勿論・・・」
「勿論?」
「・・・教えな〜い♪」
「ですよね〜・・・」
うん、知ってた。そんな流れだろうと思った。
「そういや、お兄ちゃんに挨拶しようと思ってたんだけど、今何処にいるか分かる?」
「当夜さんか?俺と違うもう一人の新人さんとついさっき任務に出たぞ」
「あ、もう仕事に行っちゃったのか〜。んじゃ挨拶は後にしよ・・・」
あれ、この辺りの連絡は昨日してなかったのか?
「あれ、それじゃユーリさんは・・・」
「ユーリでいいぞ。同期だし・・・てのはそのもう一人の新人さんの受け売りだが」
「ほんと!?じゃあユーリは今日仕事じゃないの?」
「ああ。なんかスタイルありきの技の実地演習みたいでな」
「・・・別に一緒にやってもいい気がするんだけどな〜」
「・・・確かに、言われてみれば・・・」
「お兄ちゃん人にもの教えるの上手じゃないしなー、昔から」
「そ、そうなんだ・・・」
妹さんに言いたい放題にされてますぜ当夜さん。
「で、今日は非番だから・・・まぁこの艦の繁華街をぶらぶらして穴場を見つけようかと」
「は、繁華街なんてあるんだ・・・」
「この艦、豪華客船みたいなものだからな・・・」
「あ、じゃあじゃあ、私も一緒にいい?私も今日暇だし」
「え、別に構わないが・・・」
「ほんと!?やった!それじゃ準備しなくちゃ」
「俺も準備してくる」
「それじゃユーリ、また後でね!」
「おう」
扉が閉まって廊下が静まった。
「・・・変わった人だったな・・・」
少なくとも今まで会ったことのない性格の人だった。
「・・・まぁ、悪い気はしないな」
なんだかんだで話は弾んだし。仲良くしていきたいな。とりあえず、自分も準備しなければ。
というわけで準備完了。なに、速い?そりゃ男なら着替えて髪整えるくらい速くできるだろうよ。
・・・実を言うと真朝をあまり待たせる訳にもいかないから割と駆け足でやってたんだが。
そんなこんなで丁度真朝の部屋を通過した時。
ガチャ
「「あ」」
・・・あれ、なんかデジャブ。
「・・・くす」「・・・ぷふ」
いかん、2人して笑ってしまった。多分考えていることは一緒だろう。
「・・・なーんか初めて会った感じじゃないよね」
「・・・んだな」
「ひょっとして昔会ってたりして!?」
「昔ロシアに住んでたか?」
「ううん、お兄ちゃんはイギリス産まれ日本育ちだけど私は産まれも育ちも日本だよ」
「じゃあ違うな」
「うーん、感動の再会では無かったかー!」
「・・・ぶっちゃけ分かって言ってるだろ?」
「モチロン♪」
「ですよねー」
しかしまぁ、なんだ。本当に初めて会ったと思えないほど会話は弾み、お互い笑い合っている。真由とは多少固くなったところもあったが、真朝とはなんと言うか、ものすごく軽い。
「あ、見てみて!あそこのパン美味しそう!」
「ん?ああ、あれか。そういえば昨日見たな」
真朝が見つけたのは商店街スペースにあるパン屋。昨日の出撃前目をつけていたところでもある。
「昼前だが何か食べるか?」
「うん!奢って!」
「おおう、一番にそれか。まぁいいけども」
「え、え?ほんとにいいの?」
「パンぐらいいいさ。てか真朝が奢って、て言ったんだろうよ」
「え、えーと、冗談のつもりだったんだけど・・・」
「うん、なんかそんな気がした。まぁいいさ。いい、て言ったんだ。ちゃんと奢るよ」
「やったー!ありがとうー!」
満面の笑みでお礼を言った真朝は・・・
ムギュッ
「え、え、ちょ!?」
思い切り抱きついてきた。
「いやちょっと待って!恥ずかしいから!てか動けないから!」
「にひひ〜♪」
「笑ってないで!ああ、周りの視線が怖い!」
まずい、めっちゃ見られてる。見て見ぬフリしてる人がいる。なんか店の壁殴ってる人がいる。
「・・・あ」
突然真朝が我に返ったように声を上げた。
「あ、ご、ごめんね!?今離れるから!」
「お、おう!」
顔を真っ赤にさせてあたふたしながら俺から離れた。
「「・・・」」
・・・ものすご〜く気まずい空気が周辺に流れている。今朝の比じゃないくらいの。
「・・・と、とりあえずパン買おうか・・・」
「そ、そだね・・・」
キリがないので俺から切り出した。
その後、店で俺はアンパン、真朝はチョコクロワッサンを選んで俺が金を払った。二つで260円か。かなり安いな。
で、近くのベンチに座って食べてるんだが・・・
「「・・・」」
お互いたまにチラ見してすぐ前を向く。気まずい空気は戻ってなかった。
「・・・えーと、ユーリ?」
「・・・どうした?」
ゆっくりと真朝が此方を向き、俺の名前を呼ぶ。俺もそれに応え真朝を見る。
「えと、さっきはごめんね・・・?」
「あ〜・・・別に謝らなくていいさ、ただちょっと慣れてなかっただけで・・・」
「ついつい家のテンションになっちゃって・・・」
「当夜さんにもあんな感じなのか?」
「昔はね〜。今はお兄ちゃんが軽くあしらっちゃうの」
「あしらう、て・・・」
「だってそんな感じだもん。片手チョップおまけに付けて「やめい」、て」
「あー、うん。脳内再生できたわその光景」
なんとか空気が元に戻ってきた。うん、やはりこうでなくてはな。
「でもあの光景お兄ちゃんに見られなくて良かったな〜」
「だな・・・何言われるか分からん」
「お兄ちゃんのことだから間違いなく録音してるだろうし・・・」
「マジか・・・」
「マジよ?お兄ちゃんいつもポッケにボイスレコーダー忍ばせてるから」
「当夜さんはスパイか何かか・・・?あ、国際警察だったわ・・・」
「そゆこと。常に証拠を集めてるの。その場の言葉程重要な証拠は無いしね」
「確かにな・・・んぐ。うし、ごちそうさま」
「あ、私も。ゴチになりました♪」
真朝の笑顔も元どおりになった。あとテンションも。
・・・しかしこう見ると・・・真朝、可愛いな・・・
「どしたのユーリ?私にチョコ付いてる?」
「え?あ、いや大丈夫。付いてない」
危ない、悟られないようにしないと・・・
「あ・・・」
そんなこと考えていたら真朝が俺の口元に指を近づけてなぞった。
「え、ちょ、真朝?」
「にひひ、ユーリの口元に餡子付いてた♪」
げ、なんてこったい・・・
「・・・あ、この餡子どうしよ・・・」
「・・・あ」
・・・二人して真朝の人差し指に付いた餡子を見つめる。
「・・・私がこのまま食べたら間接キスかな・・・?」
「・・・かと言って俺が指から舐めとる訳にもいかないだろうよ」
また二人の間に気まずい空気が流れる。
尚、この時軽くパニックになっていた俺と真朝にはテッシュで吹いて捨てるとかそんな考えては全く頭になかった。故に・・・
「「・・・どうしよ、これ・・・」」
真朝が舐めとるか俺が舐めとるかでめっちゃ悩んでた。
「・・・とりあえず、ここだと邪魔になるし目立つから場所変えよう」
「そ、そだね・・・」
指に付いた餡子を隠しながらとりあえず真朝の部屋の前まで移動した。我ながらものすごく怪しい行動してると思う。ぶっちゃけこの時余裕が無かった。
「・・・で、どうするよこれ」
「・・・真朝舐める?」
「え、でもそれだと間接キスに・・・ユーリは嫌じゃない?」
「・・・真朝の指から舐める方が色々とまずいだろうよ・・・真朝も嫌か?」
「ん、そんなことはないよ。でも・・・」
なーんてあーだこーだ言ってたら。
「・・・おめぇら何してるんだ?」
「「いっ!?」」
俺の背後から当夜さんの声。俺と真朝びっくり。
その反動で・・・
ツン ペロ
「「あ」」
「ん?」
・・・真朝が俺の口元に指を近づけて・・・反射的にそれを舐めてしまった。
「「・・・」」
「え、えーと・・・二人とも?どないした?」
「わあぁぁぁぁあ!?」
「きゃあぁぁぁあ!?」
「ぬおぉぉぉぉお!?」
俺と真朝、顔を真っ赤にして大絶叫。それにびっくりして当夜さんも大絶叫。
・・・冷静に考えてたらなんだったんだろこの騒動。