列強
作者ワールド全開。
ユーリside
「・・・えーと・・・」
当夜さん、真由、真朝。どうしよう。
目の前の男性が女性ぽくなった。
・・・いやお前は何を言ってるんだと思われそうだがまさしくそんな感じだ。
「・・・あー、やっぱそうなるよね〜・・・」
冬樹さん?がそう呟くと、暫く待ってからポッケから紫色の玉を取り出した。・・・ん、なんだあれ?
「分離!」
コツっ ボン!
「ぬおおお!?」
次の瞬間その玉を地面に叩きつけた。そしたらまるで煙玉の如く煙が出て、いやいやちょっと待ってください頭が状況に追いついてません。
「・・・いやー、人間になるのも慣れたもんだわ」
「・・・まぁ最近結構出してるからな」
・・・そして煙が晴れたと思ったら冬樹さんともう一人紫髪の女性が立っていた。もう訳が分かんないっす。
「・・・あのー、冬樹、彼がいかにも状況に追いつけてない、て顔してるけど・・・」
「うんそんな気はしてた。・・・さて、どこからどう説明するか・・・」
冬樹とユーリが出会う10分前・・・
当夜side
「ただいま〜・・・うん?」
「あ、お兄ちゃんおかえりー」
「よっおかえり」
俺が任務から帰ってきたら、真朝と話をしていた懐かしい顔をみかけた。
「よぉ!浩二じゃねえか!何ヶ月ぶりだ?」
「4、5ヶ月かな。相変わらず出ずっぱりだな当夜」
「まぁな。予定より結構早かったじゃねえか。出迎えするつもりで時間調節してたんだがよ」
「任務で時間調整する辺り変わってないな・・・」
「試作品作る為の素材調達だからそこまで時間かかんねぇからな」
因みに移動時間の方が戦闘時間より長かった。
「まぁとりあえず俺の部屋来いや。お茶くらいだすぜ。真朝も来るか?」
「んー、私はこれから用事があるからパスでー」
「あいよー」
じゃーねー、と手を振りながら真朝は奥に消えた。
「・・・まぁ十中八九ユーリ絡みだろうが」
「何か言ったか?」
「いんや何にも。んじゃ行きますかい」
「うい、今週のコーヒー」
「ありがとう。・・・うん、前より苦い」
「お前はミルク入れる派だったな・・・」
部屋に着いて2人でコーヒーを飲む。・・・確かに先週より苦めだな。何時ぞやのゲキニガより遥かにマシだが。
「で、お前のことだ。どうせ用もなくこっちに戻ってきたわけじゃないんだろ?」
「まぁな。ちょっと待ってくれ・・・よっと。これを見てくれるか」
浩二は持っていた鞄から黒色のファイルを取り出し、その中から数枚のレポート用紙をとりだした。
「これが今まで発見された者の資料・・・で、こっちが最近発見された新種の資料だ」
「・・・爆発的に多くの種類が増えてきたわけじゃねぇがこうして見ると結構増えてきたもんだな」
浩二は魔物の研究者も兼任している。故にこういう情報をいち早く仕入れることが出来るわけだ。
列強。とりあえず俺たち魔狩の間で呼ばれてる突然変異を起こした魔物の俗称。浩二が渡した資料にはそれらが纏められていた。
一言突然変異した魔物と言っても、突然変異する原因は魔物によって様々だ。今んところ分かっているものを挙げると、特定の種の魔物を捕食し続けたことによる変異、他よりも屈強、或いは虚弱であるための特異な成長、周りの環境の適応化、こんな感じだ。言葉だけだと過去に様々な生き物が進化した過程となんら変わりはない。
だが元が魔物であるためか、これら列強はその変異の仕方が異常でな。
例えば虚弱故に変異した物は周りと力量を合わせるためか、変異元が行うとはとても思えない技を取得した。これによって周りと力量を合わせるどころか普通に超越してしまった例がある。屈強故に変異した物も、その本来の技を磨き上げ、さらなる力を得た感じだ。所謂鬼に金棒、てやつだな。
列強には変異元と区別をつける為に称号がつけられるんだ。元の名前の後ろに付く感じだ。ウルフ○○みたいにな。今の所存在が確認され、つけられているのは
・豪鬼 ・魔幻 ・冥帝 ・焦熱 ・神王 ・暴塵
・万雷 ・悪食 ・虚神 ・波狼 ・王噛 ・皇霊
こんな感じだな。まぁ外国では流石に別の呼び方らしいが。漢字だし、当て字も多いしな。
で、これら列強が俺たち人間の脅威になるか否かは、もはや語るまでもないだろう。中にはとある国の大都市一つ機能停止に追い込んだ輩もいる。これの影響、冗談や膨張抜きで全世界に影響を与えすぎたからな。無論日本だって無関係じゃねぇ。
そういうわけで世界連合はこの列強の調査、研究、及び討伐に力を注いでいる。浩二は・・・まぁ、その全部をやってるわけだが。
「で、こいつが新しく発見された列強か」
「そうだ。まだ元が何の魔物だったのか研究中なんだけどな」
「見てくれはなんとなく飛竜類っぽいがな・・・」
飛竜類、まぁ単純にワイバーン系列のことだ。龍類に属するドラゴン系列との違いは、ドラゴンは基本四つ足で背中に翼が生えているのに対し、ワイバーンは二つ足で、人間でいう腕の部分が翼に該当する。身近なところでは鳥が近いか?
「しかし仮に飛竜類だとすると色々とまずいな・・・」
「んだな」
飛竜類の特徴、それは名前にもある飛ぶことだ。飛行能力は種によっては龍類をも凌駕するだろう。故にありとあらゆる場所に飛び立つことができる。
・・・当然、此処みたいな船にだってな。
「兎に角気をつけてくれ。今もきっと世界中を飛び回ってるだろうから」
「あいよ。そういや称号は決めてるのか?」
「まだだ。黒い事くらいしか特徴を捉えていないからな・・・」
まぁ確かにそれじゃあ名付けるのも無理あるわな。
「そういや他の列強の研究は?」
「・・・相変わらず暴塵と魔幻と冥帝がどんどん進んでくよ」
「・・・だろうと思った」
何故この三種の研究だけが進んでいるのか。その理由は簡単だ。
「で、シルヴァの状況は?」
「今は寝てるよ。もう直ぐ起きるんじゃないか?」
・・・身近にいるからだ。
ユーリside
「つまるところ、ミラさんは列強と呼ばれる魔物の中の魔幻、ということですか?」
「まぁそういうことよ」
あの後冬樹さんから詳しい説明を聞いた。列強と呼ばれる魔物のこと、そして彼女のこと。
彼女は元々普通に俺たちに仇なす魔物だったそうだ。で、倒された時に魂塊と呼ばれるものを残し、力を認めた者について行くんだと。魔物を仲間にできるRPGみたいな感じで。
で、彼女はミラさん。元は「幻龍・ミラドレイク」だったそうな。今は突然変異し、列強の一つである魔幻の名を持っている。魔幻は野生でも結構いるらしく、「幻霊龍・ミラドレイク魔幻」と呼ばれてるとか。変異の条件が霊類の魔物の捕食を多くすることという割と簡単なのが野生でも多い原因だそうな。
「普段はさっきみたく俺の中に入ってるんだ。それで多重人格者、てわけよ」
「まぁ記憶を共有してるから正確には違うんだけどね」
「は、はぁ・・・」
なんというか、世の中分からないことだらけだ。
「因みに同居人はもう一人いるぞ」
「まじすか・・・あ、そうか。ミラさんだけだと二重人格ですもんね」
「まぁその本人は般若心境で気絶してるけどね」
「なんでやねん」
綺麗ななんでやねんが出てしまった。いや般若心境で気絶、てどんなんよ。
こりゃ明日知恵熱が出るかもしれないな・・・