第6話:写真撮影
「中原優子様。カットの用意ができました」
美容院の店員がドアを開けて、優子は部屋から出ていった。優子と入れ替わりに、由紀と可奈が部屋に入った。
「由紀は終わったのね。
アラ、あなたはだれ」
「はじめまして。わたしは由紀さんと同じサッカークラブで、優子さんとクラスがいっしょの菊地可奈です」
「菊地さんは、優子ちゃんが誰か知っているのね」
「大丈夫よママ。
可奈はこのことを誰にも話さないわ」
「由紀さんの申すように、優子さんの事は言いませんは叔母さま」
可奈は由香里に話さないと約束をした。
「菊地さんは優子ちゃんを見た感想は」
「優子さんを見て、だれも男の子だとは見えませんわ。表情やしぐさは女の子でした」
「そういってもらうと優子ちゃんよろこぶわ。でもあなた達も、もう少し女の子らしくしたほうがいいわ」
「だから妹の優子が女の子らしいでしょう」
由紀は由香里にそう答えた。たしかに妹の優子が女の子っぽいと可奈は思った。
「ねえ由紀、わたし達四年生になったら、学校のクラブ活動をはじめなきゃイケないよね」
「なによ急に話を変えて」
「由紀はサッカーをするのでしょう」
「ママ、学校ではクラブ活動でサッカーをしないわ。だってつまらないもの」
「わたしもそうよ。たしかにあの人達はサッカーがヘタだし、オフサイドのルールも知らなそうよね」
可奈も由紀の意見に賛成のようだった。「でも、クラブは絶対に入らないといけないのでしょう」
「大丈夫よ可奈。そんなにうるさくないってクラブの先輩も言ってたわ」
それから由紀たちは、昨日テレビで見たサッカーの試合の話をしていた。
美容院の店員が来て、優子が終わった事を由香里に教えた。由香里達が部屋の中にいた優子を見て、目が丸くなった。それは深窓のお嬢さま風のドレスを着た優子だった。
「由香里お母様、わたしキレイかしら」
「とてもキレイよ優子ちゃん」
「わたしと同じ双子なの」
「クラスの中で1番キレイじゃないの」
「いかがでしょうか。私達も、これほど優子様が変わるとは思いもしませんでした」
美容院の店長はいった。
「優子様のお写真を撮りたいのですが」
「わたしもこの美容院に通っているけど、写真を撮られたこと一度もないわ。
でも優子さんキレイだわ」
美容院の店長は、写真撮影の準備をした。撮影の準備が終わると、店長は優子をカメラの前に立たせた。
写真を撮られているうちに、優子は自然と笑顔が出てくるようになった。
「私も長いこと美容院で写真を撮って来ましたが、優子様の自然と出た笑顔が今までの中で1番でございます」
撮影も終わり、由香里が美容院の会計をすませようとすると店長は、
「今日は私達のミスと、優子様をモデルとして撮影したため、由紀様と優子様そして菊地可奈様の料金はいただけません。
それから、優子様をパネルにした写真を飾りたいのですが」
「飾ってもいいわ。優子ちゃんがモデルになった写真が見られるなんて、最高だわ」
美容院を出て、可奈は由香里に礼をした。
「あした、わたしの家に遊びにこない」
「わたしが可奈さんの家に遊びに来てもいいの」
「由紀と一緒に遊びに来てね」
「でも明日はわたし、補欠だけどサッカーの試合に行かなくてはいかなきの」
「わたし一人で可奈さんの家に遊びに行かなくてはならないの」
「大丈夫よ優子ちゃん。優子ちゃんはどこから見ても女の子だから心配しなくてもいいわ」
優子は、喜ぶと不安がいっぱいだった。