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一日坊主と二日目の帳面女

作者: 衣魚

 1月1日(日)晴れのち雪


 先週から晦日にかけて来襲していた冬将軍は、ご来光に溶けてしまったかのように立ち去り、そのことはまさしく本年の吉兆を示しているのだろうと思って、暗い昨年から心機一転、今日から毎日日記をつけることにした。そのためこのように新たなノートを調達し、日記帳だけでなく筆記具も新しいのを購入し、そして今新たな気分で第一ページのまっさらなところに筆を走らせている次第である。何の形跡もない雪道に自分が初めて足跡をつけるというときのような、何とも言えない爽快感にも似た感情が溢れてきて気分が良い。


 さて、今日は何をしただろうか。たしか隣のコンビニへ買い物に出た後コタツにもぐり――いつの間にか夜になっていた気がする。つまり寝正月だったというわけだ。明日はきちんと活動し、日記に書き留めるネタを見つけられるようがんばろう。そのために今日は早く眠る。



 一月二日(月)


 もし。もし。もう二日が終わるわよ。起きなさい。起きなさいってば。


 ……ああ、まだこのお方は眠っている。夕ご飯を食べた後こたつに食われてあっという間にすぅ、よ。


 ふう。私の声は帳面の白いところに文字として現れるだけ。音はこのお方に届きやしないから、何度呼びかけても起きるわけがないのよね。何とかしてここから出る方法はないかしら。


 でも私はこのお方のことなら何でも知っている。だから代わりに日記を書いてあげようと思う。朝、放屁二回。昼、放屁四回。夜、放屁七回。あ。今放屁したから計八回。


 ほらほら何でも知っている。あなたのことはいつだって私が見ていたのですよ。去年も一昨年も。だってあなたはいつも外へ出ないで部屋でごろごろでしたもの。


 昨日だってそう。本当は外へ出ていないから買い物もしていない。日記には、ずっと部屋の棚で眠っていたノートを使ったのです。


 そう、この私をね。



 1月3日(火)曇り


 何もない余白に不可解な文しょうがあらわれている事象に対してこのノートを焼却処分することにする。そして外に出る、外に出ようと思うから。


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