第八話 魔剣士と言う仕事
【ナギ目線】
俺が抱え込んだ男性がこの工場に働いていた事から、もう1人の従業員を見つける事は容易かった。
だが、あのレベル5の魔人による仕掛けであろう魔物がウジャウジャと出現していた。
俺達を逃さない為であろう。
俺とラインは、2人の男性を守りながら戦う事を強いられ、結果的に工場内からの脱出が出来たが、ラインは相当疲労していた。
まだ、経験が浅いから仕方ない。
魔剣騎士団のロインさんにラインと男性2人を託し、他の魔剣士に援助救援を求むようにと言った。
アレンは多分――100パー白龍を使うだろう。
アイツはレベル2で魔人はレベル5級だったからだ。
力の差は圧倒的だ。
例え、白龍をアレンが使ったとしてもあの魔人を倒せるかが心配だ。
倒せてたとしても後始末は、俺がしとかなければいけない。
そうなれば、俺は命を削る事にもなる。
いや、命を削る事ぐらいならばマシで、死んでしまう確率に方が高いだろう。
そう思いながら、現場へと戻り目に映ったのは、アレンが悪党に捕まったあの夜の姿だった。
周辺はことごとく破壊され尽くされ、地面は小さい隕石でも落ちたのかと勘違いする程には穴が空いていた。
白龍がアレンを包み守ろうとしているのと同時に攻撃態勢へと移っていく。
言葉は通じない。
俺は静かに腰に携えている剣を抜いた。
俺のユニークスキルは、悪魔の力を使える事だ。
使い勝手は悪いが、いざと言う時に本領を見せる。
魔力を悪魔の力へと変形させ、刀に宿す。
たった少しの隙でいい。
それを作れたら俺の勝ちだ。
俺は酷く緊張していた。
俺の前に立っている男は、アレンな筈だがまるで別人かのように思える。
構えている剣は手震いで震え、冷や汗が額を通じ顔に伝わる。
周りは違和感を覚えるほどシーンとしていて、この世界で2人だけしか居ないのじゃないか?と感じる。
その静けさに、俺が踏み込んだ際に生じた小さな音が、戦いを始めるスタートの合図だった。
前屈みになりながら、アレンの元へと間合いを詰める。
だが、白龍が体を鞭にように乱暴に振り回した。
俺は剣と悪霊を召喚し受け流すが、剣に少しヒビが入った。
アレンは、体勢が崩れた俺を見逃さず、空中へと飛ばした。
体の内側からバキバキと鈍い音を立て何かが折れ、息も抜けていく。
クッソ!!肋の骨が逝ったか。
俺は未熟だ、未熟であるから悪魔の力を未完成な状態でしか使えない。
「――堕天使!来い!!」
俺がそう叫ぶと、空気中から小さな翼が闇を裂き、まるで夜そのものが生きているかのように蠢く。
羽の先端は光を拒む黒で、銀のように冷たい光沢を帯びている。
赤い瞳で白龍を捉え、攻撃を始める。
もう一方の堕天使が俺の手を掴み、距離を取った。
未完成な堕天使は、白龍の斬撃飛ばしに、引き裂かれ消滅する。
堕天使一体召喚すんのに、魔力どんだけ使うと思ってんだよ....!
あんな容易く消されてたら、調子狂っちまう。
アレンは手のひらをコチラに向けた。
魔力がそこに集まっていき、空間が歪んだように見える。
まずい....!あの時の攻撃が....!!
放たれた瞬間、少し俺はそれたがそれでも威力は十分に堕天使を受け身とし、俺に命中する。
俺は工場の壁にへと背中をおもいっきりぶつけた。
もはや痛覚など感じなかった。
起き上がる間もなく、アレンが俺へと覆い被さるようにし、剣を俺へと刺そうとする。
俺は剣でアレンの剣を止め、魔羅が白龍を止めた。
アレンの瞳は白龍のように白く輝いて見えたが、どこか悲しい目をしているように見えた。
あの時、俺は男の人を置いて、お前を救おうとした。
それはお前のような善人を死なせたくなかったからだ。
魔剣士の皆んな、表面上は、明るく接し人を助ける為などとほざいている。
だが本心はお金の為、復讐の為、家柄のためとかそんな動機だけで魔剣士に所属して魔物を殺す。
別にそれを否定している訳ではない。
魔剣士は、自分の弱さを人一倍に自覚し、それでも戦い耐え難い取捨選択をする。
中には自分の身を投じる者もいた。
だが、弱さ故に救えなかった命がその家族達などに恨まれるたりする。
気が狂う仕事だ、続けている人達は頭のネジ3本は抜けている。
俺だってそうだ。
でもお前のまっすぐな瞳を見る度に、死んで欲しくないなどの邪念が混じってしまう。
レベル3の魔物は魔人により殺され、任務は終わっていた。
その時、理由を付けて俺は魔剣士であってヒーローではないって言ったよな。
でもあれは俺の本心ではない。
俺は魔剣士としてでは無く、俺としてお前を助けたいと思ってしまった。
それは、お前の為ではなく俺のためだったのかもしれない。
「アレン、俺はお前に嘘を吐いた。俺の感情を身勝手に押し付けてしまった。ごめん」
俺は不意に涙を流すと、アレンの力は一瞬力が抜けた。
俺はその隙に悪魔――サタンを剣に込めアレンの体を貫いた。
俺が保有している中での最強の悪魔、これを使うには自分の寿命を対価に差し出さなければいけない。
何処までの寿命が削られるかは、使う相手の強さによる。
コイツなら持ってかれそうだな。
「地獄纏影」
その刹那、黒く朽ちたマントを被った悪魔が花が開花するかのようにバッと剣から出てきた。
アレンは、血を口から吐き出し白龍が消え、俺の体へともたれかかってくる。
「すまない....おもりしている余裕はない」
そう絞り出すように声を発すると、俺も口から血を吹き出し倒れる。
意識が朦朧とするなか、俺の悪魔ではアレンを殺せないな....と安堵した。
そして気を失った。
いつのまにか雨が降っており、俺らを打ち続けていた。




