第六話 魔人出現
【ナギ目線】
「俺がアイツらの世話係!?」
俺は唖然とした。
俺がアレンとラインと一緒に任務を熟す事になったらしい。
しかも、許可無しにだ。
ライヴァンさんは、こう言う適当な所があるのは知っていたが、ここまでとは....
「そう、アレンとラインはまだ魔剣士になって日が浅いからね。だから、ナギに頼みたいって訳。僕は、少し出張に出なければいけないから」
仕事だから仕方ないか。
それにそこまで足引っ張らないだろうし、あの時のように助かるかもしれん。
「....分かりました。で、今回の任務はどのような?」
「そう言ってくれると思ったよ!!今回の任務はね――」
◇
【アレン目線】
どうやら今回の件は、レベル3の魔物が工場で出現したらしく、働いてた従業員の殆どは避難したらしいが、全員とまではいっていないらしく、3人まだ居るらしい。
と言う事で、ライン、ナギ、俺で生きている従業員を救出し、魔物の討伐が課せられている。
ライヴァンは居ないのか....少し残念な気持ちもあるがこのメンバーで任務行けるのも嬉しい。
そして、もう死んでいる人は、放置しろとの事だ。
あくまで、第一優先は、魔物の討伐だそうだ。
人命救出は、無理するなと。
そうやって、魔剣騎士団の関係者が言ってた。
説明してくれた人の名前はロインと言うらしい。
現場監督的な事をしている人らしい。
ま、俺にとっては人命救助も魔物討伐も第一優先だ。
どっちも出来ないと、ヒーローになれねぇ。
「アレン何をしている?早く行くぞ」
ナギが振り向き、手招きをする。
「遅いわよ。先に私が殺しちゃうわよ」
「ちょっと待って....」
俺が言い掛けると被せるように女の人の声が耳を刺す。
「私の兄が....まだ!ここに!!お願いです助けて下さい」
何でここまで民間人が来ている?
無理矢理ここまで来たのか。
てか、兄?そっか、家族がここの被害に。
少女が涙を瞳に溢れ、顔をグシャリと濡らす。
「すみません。ここからはもう危険地帯なので」
魔剣騎士団関係者が少女を静止する。
「兄は、本当に良い人なんです!!私達の家が貧乏だから!だから、ご飯を満足に食べさせてあげたいと、学校に行かず工場で!!お願いです。私のせいで....」
俺の胸が信じられない程、ギュッと締め付けられた。
顔が崩れそうになる。
この人の兄が生きている保証は何処にもない。
死んでいる確率の方が高いだろう。
だが、諦めきれない。
魔物もレベル3程度だろうから、被害はそこまで出ている事はない。
「絶対救い出す。どっちを優先させるじゃない、どっちも必ずやり遂げる。お前らもそのスタンスで頼む」
「私のせいで人が死んでしまったら、落ち込むってこの前に言ったでしょ」
「レベル3の魔物は、一体だけと聞いている。人を救ってる余裕はあるだろう」
俺は、意を噛み締め、工場の中へと入った。
工場の中は、まるで嵐の通り過ぎた後の海のように荒れていた。
鉄で出来た機械は、捻じ曲げられ歪んでいる。
壁には無数の傷が付けられており、鋭い物で付けられているようだった。
爆発されたかのように焦げた臭いが鼻をツンと刺す。
金属同士がぶつかり合い軋む音を残している。
「にしても、気持ちの悪いな。魔物が住み着いた場所はどこもそうなのか?」
「魔力は、不安定物質だからな。だから、攻撃性が高く、人へと危害を加え、不快と感じる」
ナギは淡々と説明をした。
「そんな空間に長く居たくないわね」
ラインは機械を人差し指でフッと触り、付着した汚れを息で飛ばす。
その行動を見たナギが口を開く。
「機械に安易に触るな。放置された機械は、下手に触ると爆発したりするかもしれん」
「やっぱ、ナギは頼りになるな。安心して任務を行えるよ!!」
俺の言葉を聞くとナギは、目線を下へとやった。
そして、魔力が濃い方へと足を進めていると、グッと足を掴まれた。
「魔剣士の方々ですか....?」
風一つ吹けば消えちゃいそうな男性の声が聞こえた。
俺は、びっくりして尻餅をつく。
「大丈夫ですか!?」
ナギが足速に駆け付けると、男性の容態を見る。
「特に目立った傷はない。だが、魔力による体の侵食が進んでいる。早くここから出さなければ....!」
早くここから出さなければいけないのか。
なら、俺がコイツを外へと運ぶか。
ナギがここで1番強いから、戦って貰わないと困る。
「この先には、非常口があるからそこら辺に居た人達は、きっと逃げられていますよ。そう言う訓練もしてたので....それと、1人が喰われています。もう手遅れだと思う....」
男性は拳を強く握り締め言った。
クッソ、1人はもう死んだのかよ。
助けられなかった....
でも、この先の人は逃げられていると言うことか。
良かった。
「ナギ、俺がコイツを外へと運ぶ。運んでいる途中にも他の生存者を探し出す」
そう言いながら、男性をおんぶする。
「そっか、なら俺とラインが魔物を殺す」
「それが良いわ。二手に別れましょ」
ラインの能力は確か、武器を縛りを付ける事で、特殊な能力を上乗せ出来るだっけな。
何を武器かにするかは本人次第と言ってたから、この工場には危険物いっぱいあるし好都合な状況だろ。
ったく、俺にもユニークスキル発現してりゃ良かったのに。
とにかくこの工場は広すぎる。
あと1人何処にいるんだ....
俺は、さっき来た道を引き返そうとすると、ナギの方から爆発音が聞こえた。
「大丈夫か!?」
俺は咄嗟に後ろへと振り返ると、赤い目が体に何個も付いた魔物が雄叫びをあげながら、機械へと乗っていた。
爆発した機械から炎が溢れ出し、辺りを包む。
「ここは任せろ!!行け!!」
ナギの迷いない芯のある声に安堵した。
「それじゃ任せる....」
後ろを振り向こうとした瞬間、何者かが上から降ってきて魔物をペシャリと潰した。
「コイツと戦い合わせて生き残ったら俺出ようと思ったけど、待ちきれないよ。楽しい事は俺は大好きだからね」
何処か幼稚で楽しそうな声で、魔物の血が付いた手を舌でぺろっと舐めた。
俺は気付くと過呼吸になっていた。
コレは、相手の能力でではない。
本能に死を直感したからだ。
見た事ない圧倒的な強さ。
ナギとラインの方へと見ると、俺と同様に過呼吸になっており、震えていた。
レベル3の魔物だけじゃ無かったのか!?
一体どうなってやがる。
そんな事考えてる場合じゃないか。
ナギがやっとの思いで口を開く。
「逃げるぞ。あの魔人はレベル5だ。俺らでは絶対に勝てない。アレン!!その男性を置いてけ。そいつを連れて逃げるのは無理だ!!状況が変わった」
何言って....?
今、この男性を置いてけって言ったのか?
ここで見捨てて死なせるって言うのか?
「無理に決まってんだろ!!ここで殺すってのか?」
ナギは俺の胸倉をガッと掴んだ。
「時と場を考えろ!!俺らが死んでたら元も子もない。もう俺らの目的の魔物は殺せた」
そう怒鳴るナギに俺は怒鳴り返す。
「俺らは魔剣士だろ?人を助けなくてどうする!!」
「俺らは、魔剣士であってヒーローではない。時には、死の選択に狭まれる。俺らが死んでたら、それこそ被害が広がり民間人が死ぬぞ」
「ちょ!こんな時に何やってんの!!」
ラインが焦りと怒りが混じった声で俺らを静止しようとする。
「別に俺は気にしないよ!!怒りとか言う攻撃的な感情は好きだよ」
嬉々そうに魔人は喋った。
「なら、俺1人でアイツを止めてやる。この男性は頼んだ」
俺はナギに男性を渡す。
「でも...」
ナギの眉の端がほんの少し下がり、額に細いしわが寄る。
何かを考えるてるかのように、軽く震えていた。
「大丈夫だ。信じてくれ」
俺はあの魔物に勝てない。
天と地がひっくり返ってもだ。
それは、先程の魔物も1人で倒せるかどうか怪しかったからだ。
でも、倒せなくて良いんだ。
あくまでコレは時間稼ぎである。
それに俺には必殺技がある。
ナギは何かを察して、「すまない」と歯をギュッと噛み締めラインと男性を抱え撤収してくれた。
ラインは、「何であんただけ!!私も戦えるわよ」などと、もがきながら言っていた。
ラインは、俺が白龍を宿している事知らないのか?
まぁどうでも良い。
今は、こいつの事しか考えなくて良い。
「あれ?もう、いざこざ終わったの?君の仲間は君を置いて逃げたのかい?」
大きなタンクに足を組みながら、魔物は言った。
火の海のように燃える工場内では、薄暗かった場所も明るく照らされる。
魔人の顔も照らされ、興味津々に笑う顔に真っ直ぐな傷のある顔が映し出される。
声質的に男なんだろうが、中性的な声でストレートな長い髪なのが目立つ。
「ああ、別れの挨拶は済んださ。今はお前をボコる」
俺はそう言うと、ケヒッと魔人は高らかに声を上げ笑った。
「ボコされるの間違いだろ?魔剣士」
暑苦しい今にも肺が焼けそうなこの空間で、俺と魔人は睨み合った。




