第三話 魔剣騎士団士所属
アレンを包んでいるその鱗は純白というより、淡く青みを帯びた月光色に輝く。
動くたびに細やかな光の粒をこぼし、神秘的であった。
アレンは、ただただ佇んでいる。
何なんだ!?あの力は。
あんな力を持ってたのか?
あの力レベル5級だ。
何者だ?あいつ。
いや、今はそんな事を考えてる場合じゃない。
考えるべき事はアイツに理性があるからどうかだ。
なければ、俺が責任を取って命に変えて、あいつを殺す。
あいつもきっと、あんな状態が続くならば....
民間人にも危害を起こす可能性が大いにあるならば、殺して欲しい筈だ。
「おいアレン!!もう良い。その状態を解け」
俺は、声を張り上げアレンに伝えた。
アレンは、コチラへと振り返ったが状態を解こうとせず、ジッと見つめていた。
俺は察した。
あぁ、もうコイツには自我がない。
あの白龍に体を乗っ取られているのだろう。
白龍はこれから何をしでかすか分からない。
だから、今ここで、アレンをコイツごと殺す。
剣に全魔力を集中させ、死神を空想し形状を作り出すイメージを行った。
すまないアレン、こんな姿にさせてしまって。
すぐ終わらせる。
「ねぇ、今どんな状況?」
聞き慣れた腑抜けた声が俺の耳元で波打った。
俺は声の主がすぐに分かった。
「ライヴァンさん!?」
「待った?マジごめん。ヒゲソーリー。この組織のリーダーがねぇ逃げ足だけは、速くて。ちょっと、時間掛かっちゃったんだよね」
ライヴァンは左手に中年のおじさんを抱え込んでいた。
この人が組織のリーダーなのか。
ライヴァンさんのその緊張感の無さは何処から来るか。
それは、言うまでもない程に....
「ライヴァンさん!!今日小川に居た少年が任務中にあの姿に」
俺は端的に状況を説明した。
アレンがこちらへと先程の構えを取った。
まともにあの攻撃を受ければ、普通ならば、木っ端微塵だ。
「ちょっとこの人持ってて」
ライヴァンは、組織にリーダーを俺に渡すと、黒いサングラスを外し銀色に輝いた双眼を露わにした。
手のひらをアレンに向ける。
アレンが途轍もない質量のエネルギーが放した。
きっと、先程よりも威力があるだろう。
その質量は容赦なく、ライヴァンに襲いかかった。
地面を抉り取り、月光をも消し去った。
しかし、ライヴァンに触れた瞬間、突然質量はパッと消し去った。
「うん。良い威力だね」
ライヴァンは半ば嬉しそうに呟くと、アレンに近づき顔に手を当て気絶させた。
紛れもない圧倒的な強さ。
それは、魔剣士最強と言わしめる程に。
「この少年、多分死刑になっちゃうだろうね。危ないし。でも、惜しいよね〜この力を制御出来れば、有用な存在となる」
ライヴァンさんの言う通りだ。
だが、俺にとってそんなのは、どうでも良い。
例え、どんなに使えなかろうが、こいつには生きて欲しい。
仕事に私情を挟むのは、いけないことだ。
――分かっていたとしても
「俺は、その少年を死なせたくないです」
ライヴァンは、俺の姿を見るとフッと笑みを浮かべた。
「ナギも素直になったね。よし!!僕がワガママを言って意見通すよ」
◇
【アレン視点】
気付くと、俺は白い部屋のベットの上に居た。
何故だか、物懐かしさが俺の心を占領していた。
左には床頭台には、一輪の赤い薔薇が花瓶に活けられていた。
そして右には――ナギがいた。
ポツンと背もたれのない椅子に座り、赤い果実の皮をナイフで剥いていた。
目を開いた俺をナギは見るや否や神妙そうな顔で声を掛けた。
「大丈夫か?」
ナギ....ナギ....あ、そうだ。
「おいナギ!俺の事なんてどうでも良い。あの魔物どうなった!?確か俺は....いきなりの攻撃で意識を失ってそれから」
俺はそう言うと、ナギは深く頭を下げてきた。
俺は、戸惑っているとナギは口を開いた。
「すまなかった。俺がアレンを守れなかった事で招いた事態だ」
「何の事だよ!?俺生きてんじゃん」
「アレンが意識を失った時、半分死んでいたんだ。だが、お前に宿っていた白龍がお前を助け、その結果魔物を倒す事もできた。その後、民間人の家などを諸々壊させてしまった....」
ナギに青色の瞳は揺れていた。
俺が民間人の家を....
拳を強く握り締める。
でも、民間人を殺してはないのなら、まだヒーローになる為の巻き返しが付くだろう。
それに、力不足の俺が悪い。
「そっか....なら、その分俺は沢山の人を助けなきゃな」
ナギに対して強く握り締めた拳を向ける。
俺の思わぬ言葉に、ナギは顔をパッと上げ、拍子抜けをした。
「お前....本当に....」
ナギは少しだけ微笑みを俺に見せた。
「あ!!笑った!ナギが笑った!!お前も笑うんだなぁ」
「黙れ!!」
ナギの動揺ぶりに俺は声を上げて笑ってしまった。
「俺はもう行く。色々とお前は、これから不自由になるだろうが人助けをしたいなら好都合な事だらけだろう。詳しくは、ライヴァンさんが説明してくれる」
そう言うと、ナギは足速に部屋を出て行った。
ったく、照れっちゃって。
俺は床頭台に置かれた赤い果実をアムっと食った。
「うーん美味い」
◆
「って事で!!アレン、魔剣騎士団に所属して貰うね〜!!」
ライヴァンは病室で、俺の今置かれている状況とこれからについて説明してくれた。
あー、ナギの言ってた事ってそう言うことか。
確かに、俺の体に宿っている白龍とやらがいつ暴走し、罪のない人々を殺してしまうのか分からない。
だから、魔剣騎士団に入ってコントロール出来るように、訓練しようって事か。
俺にとってはヒーローになれる絶好のチャンスで死刑を免れる。
良い事尽くしだ。
「分かりました。これからよろしくっす!!」
「それはそうと君まだ子供だよね?親御さんにその事話しておきたいから、家教えてくれる?」
うん、知らないよ?
どう説明しようかな。
そのまま言っちゃうか。
「実は、記憶喪失で記憶が全くないんです」
俺の言葉にライヴァンは拍子抜けをし、開いた口が塞がらなかった。
「え?あの....記憶がなくて....」
ライヴァンは、ブルっと顔を振るさせ、我に返ると俯せ顔を険しくした。
「記憶喪失か....なら、アレン家の所在地などは、分からないわけか。マズったな〜」
「街にチラシとか貼って俺の家族に見つけてもらう戦法とかはどうっすか?」
「出来ればしたいんだけどね、お世辞に治安が良いと言えないこの国では、狂った奴らに命を狙われる可能性もあるからね」
そうか、いつの時代、どこの国でもそう言う奴は一定数いるんだろう。
チラシを配って、命を狙われて、命を落としたら本末転倒って言うわけだろう。
「そのアレンと言う名前も君が考えられた名前でしょ?」
「そうっす」
ライヴァンは、白い天井を見て、何かを考えてる様子だった。
「こうなれば、こうなった原因を探し、対処して記憶戻すしかないね」
「気付けば、あの山にある小さな洞窟に居て....」
ふーんと相槌を打つと、頬を指先で掴んだ。
「アレンの着ていた服の素材昔使われていた物なんだよね。こんな服、作ってる店などないよ。少なくともこの国では。にしては、別に傷んでもいないし....不明な事が多いから、多分、単なる頭ぶつけて記憶喪失なりました!!みたいなのはないよね。生い立ち、人間関係などは忘れてるけど、文化的な物は知ってる。魔力系が関わってそうだね。うん、どっち道、思い出す為にも魔剣騎士団入っておいて悪い事なしだね」
「そか。俺自身の事はよう分からんけど、取り敢えず人助けしていれば、記憶も戻るって事やな!」
ライヴァンは、微笑んだ。
「嫌いじゃないよ。その考え方」
よっこいしょと椅子から立つと、ドアの方へと歩き出す。
そして、いきなり立ち止まり、サラッと告げる。
「明日から任務行って貰うから、そこら辺よろ!!後、君の相方的存在も連れてくるから!!」
俺は唖然とした。
病み上がりの訓練もしていない一般ピーポーにいきなり任務!?
流石にスパルタすぎる。
それに、いざって言う時に動けなる力ないとヤバいでしょ。
俺の中に居る白龍がまた呼び起こしてしまったら、本当にヤバいんじゃないか!?
「ちょっと待って!俺まだ超能力も使えたことないのに。それに白龍も」
「大丈夫、大丈夫!!白龍が使っていた魔力が、体に感覚的に刻まれてるからある程度使えるよ。実戦あるのみ!ってね。白龍が呼び起こされる条件は、君に命の危機が迫った時だけだから、ご心配なく〜」
ライヴァンは楽観的な口調で言い、病室を出た。
ちょ!?この人本当に責任感無さすぎやしませんか!?
命掛かってんの知ってて言ってる!?
何があっても俺のせいにならないよね?
俺はあー、と掠れた声しか出なかった。




