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第一話 記憶を無くした

「本当にごめん。助けられなくて」


 俺は咄嗟におぼつかない辿々しい声で誰かに謝った。


 涙が顔伝いに流れた。


 理由は分からないが、誰かを助けられた自分への憎しみと、誰かを助けなければと思う使命感が、胸を打っていた。


 って....いったー....何が起きてんだよ。


 視界が真っ暗で、体が思うように動かない。


 体をおもいっきり力を入れれば、動くかな?


 一斉ので


 バキバキ!


 あが!!痛い。


 筋肉が硬直してんのか?


 どれだけ動かしていなかったんだ?


 グハ!!


 目の奥が焼けるように痛くなってきた。


 そうか、光を認識できるようになってきたのか。


 そうして、俺の目に映ったのは、湿った洞窟の中だった。


 どうやら、光があると言う事は、深い洞窟ではないのか。


 手には、緑色の指輪....


 クッソ、ここどこだ?


 てか、俺って――誰だ?



 取り敢えず、薄暗く居心地の悪い洞窟から出たが、分からない事尽くしの今では、まず散策するとしよう。


 まずは、俺の生命活動が安定したら、記憶を思い出すよう尽力するしかないだろう。


 置かれている状況が酷すぎたら、逆に冷静になれるってもんだな。


「と、その前にまずは、こんな山からさっさと下り麓を目指そ....」


「ギャァアアア!!」


 突然、そう叫ぶのは、歪な形をしたバケモンであった。


 白い目を吊り上げ、紫色の体毛のない体で向かってくる。


 殺気を感じた。


「ちょ、お前こっちに来るんじゃねぇ....」


 バケモンは、俺の言葉をモノともせず、銀色に光った鋭い爪を振った。


 俺は間一髪後転し、攻撃を避けた。


 土が舞い、バケモンの視界が塞がる。


「今のうちに....」


 俺は、這い蹲りながらも反対方向へと振り向き、体勢を直しながら逃げた。


 ドスドスと地響を鳴らしながら、こちらへと追いかけてくる。


 やべぇ、木々が密集している所に逃げたのが間違えだった!!


 ここなら、見つかりにくいし、あの巨体じゃ追いかけられないだろうと思ったが、コイツ木々を折りながら向かって来てる!!


 木の枝が肌に容赦無くブッ刺さり痛い。


 地面が揺れるせいで転ばないように神経を注ぐ。


 獣道も揃えば、100点満点だ。


 絶好調では無い体の時にこんなのありかよ。


 だが希望はある。


 前に光が見えるんだ。


 あともう少しで開けた所へ出るって事だ!


 徐々に光の方へと近付いていく。


 だが、徐々に近付くのは、俺とバケモンの距離もだ。


「バケモンよぉ!!どっちが先に近付くか勝負だ」


 コイツは巨体のあまり、足が遅いから開けた場所に出ればこっちのもんだ。


 凸凹の地面を蹴るたびに、衝撃が膝から背骨へと突き抜ける。


 耳の奥で鼓動が爆ぜる。


 ドクン、ドクン、と脳の内側を叩く音がした。


 気付けば、俺はバケモノの勝負に勝っていた。


 だが、俺はあいつに殺されたと言って良いだろう。


 何故なら、光の向こうは崖だったからだ。


 体がフワッとして気持ち悪い。


 やっべ死んじゃう。



「おい、大丈夫か?」


 冷たい感覚が顔に伝わる。


 俺は目を開けると、知らない男二人がが黒いスーツに身を包み立っていた。


 一人目は無愛想で、少し奇抜な髪型にキリッとした青色の目。


 二人目は、朱色の髪色に黒く丸いサングラスを掛けた人だった。


 って、この二人剣持ってんじゃん。


 無礼な事はできねー。


「お!水を掛けるとやっと起きたか」


 サングラスの男が嬉しそうに喋る。


「ここは?」


 俺は、まだ死んで無かったらしい。


 落ちている時川に着地したと考えても無傷なのは有り得ない。


 何故なんだろうか。


「街の近くに流れている小川だよ。街周辺を警備してたら君を見つけたんだよねー」


 そうか崖下がたまたま川でここまで流されて来たのか。


「ったく、何でこの川で倒れてたんだよ」


 そう言いながら奇抜な髪型をした男は、ため息を吐いた。


「確か、山に居て、気付いたら崖から落ちてそこから....」


 男達は、眉を高く持ち上げ、目を大きく開けて驚いた。


「お前....あの山へと1人で行ってたのか」


「へぇ、君って案外頭のネジ飛んでるんだね」


 やはり、あそこはヤバい所なのか。


 バケモンが居たのも頷ける。


「まぁ、こんな頭のおかしい奴に構ってる暇などないですし、先を急ぎましょう。ライヴァンさん」


 まさか、俺頭おかしい奴認定された!?


 屈辱だが、記憶が無い以上、記憶ある前の俺の事よく分からないから何も言い返せない。


 それと、サングラス男はライヴァンと言うのか。


 覚える意味はないと思うが覚えておこう。


「....もう、あそこ行っちゃダメだよ〜。そんじゃ、バイバイ」


 ライヴァンは、笑顔で手を振りながらそう言うと、そそくさと立ち去っていった。


「あざっした!!」


 俺は深くお辞儀をし、顔を上げると誰も居なくなっていた。


 あれ?もうあの人ら行っちゃたのか。


 速すぎんだろ。


 俺の感謝の意聞こえたか?


 ま、街の探索に戻るとするか。


 あ、この街のこと色々聞いとけば良かった。


 一本の道に沿って歩いていくと大きな街へと出た。


「うわ、スゲェ」


 石塁が敷き詰められていた地面には、人などを乗せた馬が真っ直ぐ走っており、広い道路の両脇には家が並んでいた。


 街灯が一定に建てられていて、文明的な街だと分かる。


 うわ!あの女の人、手に持ってる大きな円形の物は!!


 何であれで自分の体に影を作っているんだ!?


「おい、これ何!?」


「キャッ!!何なんですか!触らないで下さい」


 そう叫ぶと俺の手をひっぱ叩き、走って行った。


 何だよ、あのおばさん....感じの悪い。


 教えてくれたって良いじゃねぇか、ケチ!!


 はぁ、俺の傷ついた心を癒してくれる何かオモロいモンねぇかな。


 俺は周りを見渡すと、人が食い物を外で木造の長い机に並ばせている。


 お、あれを皆んなにあげてんのかな?


 起きてから、何も食ってねぇんだ。


 腹拵えとしくか。


 にしても、何でアイツらあの食い物貰わねぇんだ?


 貰わないと損だね。


 俺は、タダ飯をくれている場所の前へと行くと、


「お、兄ちゃんどれが欲しい?」


 とおっちゃんが問いかけて来た。


 赤い果物や黄色の果物などが置いてある。


 うーん俺は赤色が好きだから、赤い果物頂くとするかぁ。


 俺は、赤い果物を鷲掴みにすると、口にへと運んだ。


 お、美味いな。


 えーと、この味どっかで食ったような....


「このタダ飯食い泥棒!!」


 そうおっちゃん怒鳴られた。


 その瞬間もの凄い衝撃が頭に直撃する。


 まるで稲妻が頭に走ったかのようだ。


 おっちゃんが硬い物を持っているのが見えた。


「ギャッハ!!」


 頭がクラクラとして、視界がおぼつかない。


「ウチの商売舐めやがって!!滅多打ちにしてやる!!」


 マジかコイツやべぇ奴だ!!


 ダメだ。


 もっと視界が不安定になっていく。


 肺が圧迫させられる。


 体中が痺れていき、動かなくなってくる。


 これ今日2回目の気絶するかも....


 

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