第52話:八州の逃亡者、燃える海
亡命船から救出されたのは、極東の少女ツムギ。
彼女の口から語られたのは、新たなる脅威「軍の神」による八州の惨状だった。
休息の時間は終わり、迫りくるのは黒鉄の艦隊。
ドラグーン・リリア号の重厚な船体に、ボロボロの船が横付けされる。
タラップを駆け下りた影隼が、煙に巻かれ倒れ伏していた乗組員たちを次々と甲板へ運び上げた。その数はわずか五名。皆、極東独特の装束――直垂や小具足を身に着けているが、その布地は血と煤で汚れていた。
「……水を。……どうか、姫様を……」
意識を失いかけていた老兵が、ミナトの靴を掴んで必死に訴える。
影隼が最後に抱えてきたのは、ひときわ豪華な、だがズタズタに切り裂かれた着物を纏う少女だった。
「深手を負っている。だが、命に別状はない」
影隼が彼女を甲板に横たえると、レンがすぐさま治療魔法を展開した。
「……ここは? 私たちは、逃げ切れたのですか……?」
レンの魔法によって意識を取り戻した少女が、震える声で周囲を見渡す。その瞳には、まだ燃える故郷の残像が焼き付いているようだった。
「安心しろ、ここは安全だ。俺はミナト。この船の責任者だ。……何があったのか、話せるか?」
少女は震える唇を噛み締め、涙を拭った。彼女は極東の一角を治める一族の末娘、ツムギと名乗った。
「極東……八州の国は今、地獄に変わりました。突如現れた『軍の神』の移住者が、鉄血の規律で諸国を蹂躙し始めたのです。……彼はニルバス様が作った『雲の壁』を逆に利用し、国を完全に閉ざし、内側から全てを塗り替えようとしています」
「軍の神……。バスティオンやアイゼンとはまた違う、侵略の専門家か」
ミナトの脳裏に、かつての競合他社による強引な市場独占の光景が重なる。
「……来たよ、ミナト。水平線の向こう、熱源反応が多数! 船を追ってきたんだね、性格が悪いなぁ!」
レンがモニターを指差すと、水平線が赤く染まった。
現れたのは、和風の屋形を模しながらも、全身を黒い鉄甲で固めた「鉄甲船」の艦隊。その帆には、不気味な六角形の紋章――砂漠の装置に残されていたものと同じ紋章が躍っていた。
「……あいつらか。宣戦布告の返事を、直接届けに来てくれたってわけだ」
ミナトはリリア号の主砲の封印を解くよう命じた。
「岩山丸、レヴィア! 歓迎の準備だ。まずこの追っ手共を黙らせることから始めよう」
「がはは! 久々に拳が鳴るわい!我らの『流儀』を見せてやろうぞ!」
穏やかだった一ヶ月の航海は終わりを告げ、ドラグーン・リリア号の砲門が極東の「鉄」を迎え撃つべく咆哮した。
第52話をお読みいただきありがとうございました!
ついに極東の混乱の核心に触れ始めましたね。「軍の神」という強大な敵の存在。
そして砂漠で見つけた紋章との繋がり。
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※AIとの共同執筆作品となります。




