第40話:浮島都市の会談と、消えた「雲」
クラーケン討伐は、思わぬ「手土産」となった。
素材の無償提供を条件に、海の民との友好を勝ち取ったミナト。
だが、女王コーラルから依頼されたのは……。
クラーケンの巨躯が海に沈み、魔導戦艦ドラグーン・リリア号の甲板に静寂が戻った。
海面に浮いた巨大な触手の残骸を見つめていると、水平線から数隻の快速艇がこちらへ向かってくるのが見えた。魔獣を駆る戦士たちではなく、精巧な魔導エンジンを積んだアビス・ラグーンの警備船だ。
「……お見事! 陸の民がこれほどまでの怪物を仕留めるとはな!」
先頭の船から、潮風に焼かれた顔の中年男が身を乗り出して叫んだ。彼はアビス・ラグーンの自警団船長、バルド。
「このクラーケンには長年、海を荒らされて困っていたんだ。助かったよ。……ところで、その残骸、もし良ければ我らに譲ってくれないか? クラーケンはほとんど食べれるし、皮は、魔導回路の触媒に重宝するんだ」
岩山丸が「ワシが腹を割った戦利品よ」と鼻を鳴らすが、ミナトはニヤリと笑って一歩前に出た。
「いいですよ、船長。素材はすべて差し上げましょう。……ただし、一つ条件があります。我々はアド・ヴァルム同盟の使節団。この海域の島々と正式な貿易をしたいんです。女王への紹介状と、案内を頼めますか?」
「……素材をすべて、だと? がはは、太っ腹な商いだな! 分かった、その心意気、俺が保証しよう!」
案内された浮島都市『アビス・ラグーン』は、幾百もの船が連結された壮大な水の都だった。
中央の謁見の間で待っていたのは、褐色の肌に青い瞳を持つ女王コーラル。彼女はミナトから差し出された「クラーケンの魔核」をバルドから受け取ると、柔らかな微笑を浮かべた。
「陸の民よ、歓迎します。素材の提供だけでなく、海域の安寧を守ってくれたこと、感謝に堪えません。我ら海の民は、信義には信義で応える。アド・ヴァルム同盟との友好関係、喜んで結びましょう」
「ありがとうございます。私はアド・ヴァルム同盟の主国、アド・ヴァルム王国の龍神の加護の移住者ミナトです。交渉役を任せられております」
「龍神の加護者様でしたか……」
握手を交わしたミナトだったが、コーラルの瞳に潜む影を見逃さなかった。
「……友好の印として、何かお困りごとはありませんか? 我々はその解決も『商品』にしています」
コーラルはふっと溜息をつき、視線を空へと向けた。
「実は……ここにはかつて、一人の『移住者』がいたのです。私たちの暮らしを助けてくれていたのですが、数ヶ月前、突然姿を消してしまいました」
その男の名は、ニルバス。『雲の神』の移住者だ。
白銀の長髪をなびかせ、常に退屈そうに空を眺めていたという青年。戦闘でも誰にも負けず、彼は雲を操り、真水を作ったり日照りを防いだりする力を持っていたが、「定住は飽きた。自由になりたい」と言い残し、自ら作り出した巨大な積乱雲に乗って、砂漠の向こうへ飛び去ってしまったという。
「彼がいなくなってから、この海域の気象が不安定になり、魔物も暴れだしました。ミナト様、もし彼を連れ戻してください」
「雲の神の移住者、ニルバスか……。我々も砂漠の向こうにも行く予定ですので探してみましょう」
ミナトは不敵に笑い、新たな目的地の情報を地図に書き込んだ。
南洋の霧が晴れ、次なるターゲットは空に浮かぶ「雲の城」へと定まった。
第40話をお読みいただきありがとうございました!
素材をあっさり譲るミナトの「先行投資」としての判断が光りました。
そして新キャラクター、雲の神の移住者。
自由を愛する彼が、なぜ極東へと向かったのか……。
次回、お楽しみに!
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※AIとの共同執筆作品となります。




