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第38話:束の間の静寂と、約束の港

戦いの喧騒が去り、訪れた穏やかな日々。

ミナトは大切な人、王女リリアーヌとの最後のひと時を過ごす。

伝えたい想い。果たしたい約束。それを胸の奥に仕舞い込み、元広告マンは再び未踏の地へと舵を切る。

第二部「大海原の物流編」、いざ開幕!


 北辰大帝国の崩壊から数週間。大陸には、数十年ぶりとも言われる穏やかな静寂が訪れていた。

 アド・ヴァルムの港町は、復興の槌音と、新時代の物流を予感させる活気に満ち溢れている。ミナトは久々に重い執務机を離れ、糊のきいたシャツに袖を通すと、今やこの平和の象徴となった王女リリアーヌと並んで街へ出た。

 潮風が心地よく吹き抜ける海岸線を、二人はゆっくりとした歩調で進む。

 道行く人々が、救世主であるミナトと美しい王女に深々と頭を下げる。ミナトは照れくさそうに、営業マン時代に培った自然な笑顔でそれに応えていた。


「ミナト様……本当に、行ってしまわれるのですね」


 リリアーヌが、砂浜に落ちた貝殻を見つめるような、寂しげな瞳で呟いた。その声は波の音に消えてしまいそうなほどに儚い。


「はい。極東の国も南の海も、まだ分断されたままだ。地図に空白がある限り、俺の『冒険』は終わりません。道が繋がっていない場所があるのは、見過ごせないです」


 ミナトは穏やかに笑った。振り返れば、ルヴィアでの絶望的な出会いから今日まで、この王女の笑顔を守るために、法を欺き、暴君を討ち、大陸を駆け抜けてきた。彼女こそが、ミナトがこの世界で最初に手にした「守るべき価値」だった。


「……私も一緒に行きたい。ミナト様の隣で、新しい世界が繋がる瞬間を見てみたいのです」

「僕も一緒に行きたい。でも、君はこのアド・ヴァルムの『王女』なんだ。……ここを離れるわけにはいかないだろう?」


 ミナトは彼女の華奢な手を、そっと、だが力強く握った。

 握り返す手のぬくもりに、喉元まで出かかった言葉が熱くこみ上げる。


(戻ったら、俺と結婚してほしい――)


 それは、ビジネスの契約よりも重く、人生のすべてを賭けるにふさわしい言葉。しかし、これから向かうのは「神々に忘れられた地」や「海の民」の牙城。何が起きるかわからない未知の航路へ向かう今、無責任な約束で彼女を縛ることは、ミナトの美学が許さなかった。


「……戻ったら、またこうして二人で歩こう。その時に、もっと面白くて、もっと広い世界の話をたくさん聞かせるよ。君がこの町を離れなくても、世界が君の元へ届くようにしてみせる」


 それが、ミナトなりの精一杯の「予約」であり、誓いだった。リリアーヌは微かに頷き、その頬を夕陽よりも紅く染めて、小さく微笑んだ。


 そして、旅立ちの日。

 港には、アド・ヴァルム、東方、北辰の技術が融合した巨大な魔導商船『プロモーション号』が、朝日にその白銀の船体を輝かせていた。

 甲板には、参謀のレン、そして「山」の如き存在感を放つ岩山丸が並び、マストの影には影隼がひっそりと佇んでいる。カインや他のみんなは残って同盟を護ると言ってくれた。

 岸壁には、リリアーヌをはじめ、アイアンやゼノといった旧東方六国の移住者たちが総出で見送りに来ていた。


「ミナト!  土産話がしょぼかったら、今度は俺がアド・ヴァルムにクレームを入れてやるからな!」


 アイアンが、真っ赤な顔をして照れ隠しに叫んだ。


「出航ッ!!」


 ミナトの号令が港に響き渡る。

 プロモーション号が、重厚な魔導エンジンの音と共にゆっくりと岸を離れ始めた。

 遠ざかっていくリリアーヌの姿が、港の喧騒の中に小さくなっていく。彼女が振り続ける白いハンカチが、まるで迷わぬための道標のように見えた。ミナトは帽子を取り、一度だけ大きく振って、それから迷いなく視線を南の水平線へと向けた。


「……さて。感傷に浸るのはここまでだ。レン、例の『海域調査用パッチ』の準備はいいか?」

「う、うぷっ……。……ミナト、やっぱり僕、留守番してるべきだったよ……船ってこんなに揺れるものなの……?」


 早くも顔を青くして手摺りにしがみつく天才魔法使い。そんな仲間のぼやきを聞きながら、ミナトの乗る船は、まだ見ぬ海の覇者たちが待つ、未知なる青へと突き進んでいった。


第38話をお読みいただきありがとうございました!

ミナトとリリアーヌの、静かで少し切ないデートと別れの回でした。

王として安住する道ではなく、あえて「道」を繋ぐ開拓者であり続けるミナト。彼にとっての本当の仕事がここから始まります。


次回、お楽しみに!

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※AIとの共同執筆作品となります。


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