第21話:空飛ぶ魔導艦隊と、最恐の「システムエンジニア」
南の戦場は、もはや異次元! 魔法の神の移住者レンによって、物理法則がハッキングされ、カインも防戦一方。
北の戦線でハヤトを退けたミナトは、休む間もなく南へと向かっていた。
ハヤトとの闘いで新しく開通した「国道3号線」、馬車の速度を限界まで引き上げる。目指すは、聖魔の剣士カインが四つの大軍を相手に孤軍奮闘している南の戦線――「魔導連合ルヴィア」との国境だ。
「……思ったより早く着きそうだ。ボー、カインの状況は!?」
『最悪に近いわね。カインが三つの戦線を「聖魔の檻」で時間を稼いでいる間に、南の「魔法の神」の移住者が戦場の地獄そのものを書き換え始めてる。今、南の平原は「物理法則の通じない灼熱地獄」になってるわよ!』
ミナトは愛馬の手綱を握り直し、前方を見据える。 視界の先、ルヴィアの街を目前にした平原で、激しい魔力の衝突音が轟いていた。
「……くっ、このっ……!」
カインは焦燥に駆られていた。 彼の目の前に立ちはだかるのは、「魔法の神の移住者」。 その男は指先一つ動かすだけで、カインの足元を凍らせ、頭上から雷を落とし、執拗に距離を保ち続けていた。
カインが刀を構えて一気に踏み込もうとするたび、不可視の衝撃波や炎の壁がそれを阻む。
「無駄だ。野蛮な剣士が、私に触れることなどできんよ」
移住者の冷徹な声と共に、再び無数の氷弾が放たれる。
カインは剣を盾にして防ぐが、魔法の物量に押され、じりじりと後退を余儀なくされる。 近づけば仕留められる自信はある。だが、その数メートルが、果てしなく遠い。 実力は互角。しかし、間合いを支配されている以上、時間だけが虚しく過ぎ、カインの体力だけが削られていった。
(このままでは、ジリ貧だ……!)
魔法使いがトドメの一撃を放とうと、巨大な魔方陣を展開したその時。 国道3号線の彼方から、風を切るような鋭い音が響いた。
戦場に到着したミナトの目に飛び込んできたのは、もはや「平原」とは呼べない異様な光景だった。
地面は立方体に切り分けられて宙に浮き、川の水は空に向かって流れ、重力は数メートルごとに方向を変えている。
その中心で、カインが聖剣を振るい、次々と飛来する「幾何学模様のレーザー」を切り払っていた。
「……遅かったじゃないですか、ミナトさん。もう限界でした」
カインの声は冷静だが、その肩は激しく上下し、銀髪は汗で張り付いている。
「悪い、予定より早く着いたんだが……で、空中に浮いているのが、噂の『魔法の神の移住者』か?」
宙に浮く巨大な魔導立方体の上に、ヘッドホンをした一人の青年が座っていた。
名前は「レン」。前世では、デバッグと最適化に命を削っていた「システムエンジニア」だ。
「……あ、新手が来た。……噂の龍神の移住者? 無駄だよ。君たちなんて、僕から見れば『古いプログラム』に過ぎない。……今、消去してあげるから」
レンが指先で空中のキーを叩くと、ミナトの足元の地面が突如として「消失」し、ただの「虚無」へと書き換えられた。
「うおっ!?」
『ダメよミナト! 奴は物理的に壊してるんじゃなくて、「そこに地面があるという定義」そのものを消してるわ! 龍神の加護が認識できないレベルよ!』
「……なるほど。『仕様変更』ってわけか」
ミナトは空中で魔力を噴射しかろうじて浮遊する。
レンの魔法は、火や水といった現象を操るのではない。戦場の「ルール」そのものを書き換える「システムコマンド」なのだ。
「カイン、あいつの弱点は!?」
「ありませんよ。……強いて言えば、あの方の魔力が尽きるのが先か、こちらの存在が『エラー』として削除されるのが先か……という不毛な耐久戦です」
「……冗談じゃねぇ。そんなデスマーチにつき合えるかよ」
ミナトは目を細め、レンの周囲に展開されている「魔法」を観察した。
ミナトは不敵に笑い、魔法使いを見据える。
「遠距離が得意な奴には、二方向から攻めるのが鉄則だろ? 俺が意識を逸らす。お前は横から一気に突っ込め」
「承知した!」
ミナトの合流により、戦場の均衡が崩れる。 一対一では近づけなかった魔法の壁も、二人の連携の前では隙だらけだった。 新しき道の上、剣士と魔法剣士の反撃が今、始まった。
29歳、元広告マン。
彼は異世界のシステムを支配する最強の魔法使いに対し、二対一での戦いでその牙城を崩しにかかった。
第21話をお読みいただきありがとうございました!
馬の神が「最速」なら、魔法の神は「最強の仕様変更者」。 魔法の概念を逆手に取る展開となりました。
次回、お楽しみに!
面白いと思ったら、ぜひ【ブックマーク】や【評価(★)】で応援お願いします! 励みになります!
※AIとの共同執筆作品となります。




