第20話:八本足の蹂躙と、泥沼の損害賠償
帝都目前! バシュタール軍の速攻に、ミナトは驚愕します。 槍の名人ハヤトと不死の馬スレイプニル。 圧倒的な武力の前に苦戦を強いられるミナトが選んだのは……
ミナトの計算は、その「速度」によって大きく狂わされた。
北の戦線で食い止めるはずだったバシュタールの鉄騎兵団は、国境を越え、信じられない速さで帝都の目と鼻の先まで進軍していたのだ。
「……嘘だろ。もうここまで来てるのか!?」
帝都郊外の丘陵地。砂塵を巻き上げて迫る軍勢を置き去りにし、あの「八本足」がいた。
スレイプニルに跨る馬の移住者が、長大な槍を風車のように回しながら突っ込んでくる。
「おれはハヤトだ!」
ミナトは龍神の障壁を展開しながら、大声で叫んだ。
「待て、馬の移住者! この戦争は死んだアカツキが独断で始めた『不祥事』だ。元凶はもうこの世にいない。今さら泥沼の戦争を続けるのは、互いに『損』でしかないだろ! ここで停戦といかないか!?」
ハヤトは鼻で笑い、スレイプニルを跳ねさせた。
「不祥事? 冗談じゃない。アカツキが死のうが、帝国が先に仕掛けてきた事実は消えないんだよ! 奪われた土地とプライド、その『代償』は払ってもらうぜ!」
交渉は決裂した。ハヤトの振るう槍は、目にも留まらぬ速度でミナトの喉元を突く。馬上の圧倒的なリーチと、スレイプニルの変幻自在な動き。
「くっ、馬上の槍がこれほど厄介とはな……!」
ミナトは龍神の拳をスレイプニルの胴体に叩き込んだ。手応えはあった。並の魔獣なら即死する一撃だ。
しかし、八本の足は止まらない。
『ミナト、気をつけて! あのスレイプニル、ミナトの攻撃で死んだけど瞬時に再生させてるわ。……まるで「不死」のバグが組み込まれてるみたい!』
「不死だと!? 冗談じゃねぇ!」
ハヤト本人の槍術も名人級だ。スレイプニルの速度に乗った突きは、龍神の加護さえも貫きかねない威力を秘めている。ミナトは防戦一方で、徐々に追い詰められていった。
(……マズいな。まともにやり合えば、こっちのスタミナが先に尽きる)
ミナトは鋭い目で戦場全体を見た。
ハヤトは強い。だが、その背後に続くバシュタールの鉄騎兵団は、スレイプニルの速度についていくのが精一杯で、陣形が伸び切っている。
「……ボー。『軍勢』をたおしてしまおう」
ミナトはハヤトを無視し、後方の兵団に向けて地面を叩いた。
『そうね!ハヤト一人では帝国と戦えない!』
ズドォォォォン!!
ハヤトが駆け抜けた直後の地面が、巨大な奈落となって口を開けた。
スレイプニルほどの跳躍力を持たない一般の鉄騎兵たちは、次々と穴に吸い込まれ、あるいは流砂に脚を取られて転倒していく。
「なっ!?兵隊たちが……!」
「お前がどれだけ強くても、兵がいなければ進軍は止まるんだよ!」
数分後。バシュタールの誇る精鋭部隊は、ミナトの【ウェルカム・インパクト】によって壊滅的被害を受けていた。
ハヤトは真っ赤な顔でミナトを睨みつけたが、周囲を見渡して唇を噛んだ。
「……クソっ! 覚えてろよ。次は必ず、帝都ごと更地にしてやる!」
ハヤトはスレイプニルを翻し、一瞬で地平線の彼方へと消えていった。
「……はぁ、はぁ。……消えたか」
ミナトはその場に座り込み、深く息を吐いた。
勝ったわけではない。単に、相手を削って引き下がらせただけだ。
『ミナト、お疲れ様。……でも、今回は運が良かっただけよ。あいつ、次は一人でも攻めてくるかもしれないわ』
「分かってる。……馬の神であの強さか。……南の『魔法の神』がどれほどのバケモノか、想像もしたくないな」
29歳、元広告マン。
帝都のすぐ傍まで迫った「移住者」の脅威に、ミナトは拭いきれない不安を抱きながら、夕闇に沈む帝都を見つめていた。
第20話をお読みいただきありがとうございました!
無敵のスレイプニルを相手に、あえて「後ろの兵士」を全滅させるミナト。 勝利よりも「撤退させること」を優先する判断は、まさに実務経験豊富なビジネスマンならでは。
ミナト「正面から戦って勝つのだけが、プロの仕事じゃないんでね」
次回、お楽しみに!
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※AIとの共同執筆作品となります。




