第2話:スローライフの早くも終了!?響く悲鳴
自分の拳から放たれた『ウェルカム・インパクト』の余波で、地平線まで続く国道を開通させてしまった元広告マン・ミナト。
「これは自然現象だ」
そう自分に言い聞かせ、現実逃避スキルを駆使して「丁寧な暮らし」を再開しようとする彼ですが、異世界の『利用規約』はそんなに甘くありません。
洗濯、コーヒー、そして――絶叫。
翌朝。ミナトは、昨日自分が「開通」させてしまった数百メートルの国道を眺めながら、自作の木製カップで『ルーン・コーヒー』を啜っていた。
「……見なかったことにしよう。これは自然現象だ。台風か何かの跡だ。そうに違いない」
広告代理店時代に培った「都合の悪い真実からの現実逃避」スキルがフル稼働する。
ミナトは、なぎ倒された巨木の断面を見ないようにして、拠点のコテージの周りを掃除し始めた。
今日の予定は、洗濯と、昨日見つけた『ハニー・アップル』の収穫だ。
川のせせらぎでシャツを洗い、木漏れ日の中で干す。
ブラック企業にいた頃は、乾燥機付き洗濯機のボタンを押す時間すら惜しんで寝ていた。天日で乾く洗濯物を眺める。これこそがQOL(生活の質)の向上。これこそが移住の醍醐味だ。
「うん、いい感じだ。加護なんて使わなきゃいいだけだしな。俺はただの、丁寧な暮らしをする移住者……」
『あら、ミナトさん。お洗濯?ドラゴンブレスを使えば一瞬で乾燥まで終わるのに。無料キャンペーン期間中なんだから、もっとガンガン「消費」しなきゃ損よ?』
頭の上の龍の帽子が、おせっかいな広告プッシュ通知のように話しかけてくる。
「……よくわからないが燃え尽きちゃうだろ……あいにく、俺は天日干し派なんだ。放っておいてくれ」
ミナトがフンと鼻を鳴らした、その時だった。
「――っ! オーガだ!!」
「姫様、お逃げください! ここは我らが食い止め……ぐわぁぁ!」
静かな森の空気を切り裂く、悲痛な叫び声と金属のぶつかり合う音。
場所は、奇しくも昨日ミナトがパンチで作った「国道」の先の方だ。
「……おい。今の明らかに事件だろ。悲鳴だよな?」
『みたいね。誰かが「魔物」に詰められてるみたい。ミナトさん、これって絶好のチャンスじゃない?』
「うるさい。……ったく、見過ごしたら寝覚めが悪いだろ!」
ミナトは濡れたシャツを放り出し声のする方へと駆け出した。
身体能力が向上しているせいか、一歩踏み出すごとに景色が飛ぶように後ろへ流れていく。
開通した道の先、広場のような場所に出ると、そこは惨状だった。
銀色の鎧を着た騎士たちが数名倒れており、その中央でボロボロになったドレスを着た女性が震えていた。
彼女たちの前に立ちはだかっているのは、身長3メートルはあろうかという巨体――『オーク・キング』。
ゴブリンとは比較にならない威圧感と、丸太のような棍棒を振り回す暴力の塊だ。
「ギャォォォン!!」
オークの棍棒が、女性を守ろうと這いつくばる老騎士に向けて振り下ろされる。
「やめろ!!」
考えるより先に、ミナトは叫んで飛び出していた。
間一髪。ミナトは老騎士の前に滑り込み、反射的にその大きな拳を……いや、加護を叩きつけた。
「来るなって言ってるだろ……! 【ウェルカム・インパクト】!!」
ドッ、ガァァァァァァァン!!!!!
昨日以上の衝撃波が爆発した。
目の前にいたオーク・キングは、まるで「低画質の画像」が消去されるかのように、一瞬で輪郭を失って霧散した。
それだけではない。
ミナトのパンチの余波は、背後の森まで突き抜け、昨日作った「国道1号線」に並行して、立派な「2号線」が新たに爆誕してしまった。
「…………あ」
静寂が訪れる。
生き残った騎士たちと、震えていた女性が呆然とミナトを見上げている。
ミナトは、引きつった営業スマイルを浮かべた。
「……あ、どうも。通りすがりの移住希望者です。えーと……その、怪我はありませんか?」
「……助けていただいてありがとうございます。わたくしはアド・ヴァルム王国の王女リリアーヌともうします」
女性――その国の王女であるリリアーヌは、涙で濡れた瞳を大きく見開きミナトの前に跪いた。
「オークキングを一撃で鎮める救世主様……。どうか、どうか我が国をお救いください!」
「え? いや、僕はただの移住希望者で……」
『やったわね、ミナトさん! 「王族」という超大型クライアントからの受注確定よ! これで1ヶ月後の成果報告書もバッチリね!』
「成果報告……?」
頭の上で、龍の帽子が勝ち誇ったように笑う。
ミナトは、遠くまで綺麗に舗装(破壊)された森を眺めながら天を仰いだ。
「……俺のスローライフはバトル物になるのか……?」
29歳、元広告マン。
どうやら、ただの移住者から「国の守護神」へと強制的にジョブチェンジさせられてしまったようだった。
第2話をお読みいただきありがとうございました!
ミナトの「ウェルカム・インパクト」は、もはや土木工事の域を超えてしまいました。 そして、帽子のボーから告げられた不穏な単語『成果報告書』。 無料キャンペーンの裏にある、龍神様の「本気」が少しずつ見えてきましたね。
次回、第3話。 救ったのは「倒産寸前」の王国!?
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※AIとの共同執筆作品となります。




