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第11話:あこがれのヒロインと、帝都の冷徹な王子

単身、帝都へ乗り込んだミナト。 待ち受けていたのは、リリアーヌを「モノ」として扱う冷徹な第八皇子エドワード。

「姫を寄越せ。さもなくば滅ぼす」

前代未聞の「命懸けの商談」がスタート!


 アド・ヴァルム王都の正門前。ミナトが一人、馬に荷物を積み終えた時だった。


「――待ってください、ミナト様!」


 背後から響く必死の声。振り返ると、ドレスの裾を泥で汚しながら、リリアーヌが息を切らして走ってくるのが見えた。


「リリアーヌ様!? どうしてここに……」

「……勝手に行くなんて、ひどいですわ。わたくしのために、あなたが命を懸けるというのに、城でただ待っているなんて……そんなの嫌です!」


 頬を赤らめ、真っ直ぐに自分を見つめるリリアーヌ。ミナトは困ったように頭を掻いた。


「いや、でも、これは『直接交渉』なんです。危険ですよ」

「わたくしも連れて行ってください。わたくしが行けば、帝国もすぐには手出しできないはずです。……それに、ミナト様と離れるのは、もう嫌なのです」


 29歳、元広告マン。かつて「情熱的」という言葉に吐き気を催していた男の心が、その真っ直ぐな言葉に激しく揺さぶられた。


「連れて行くわけにはいきません……必ず戻ってきます……」

「わかりました……お待ちしています……」


涙を流す王女を背にミナトは帝国へ向かう。その瞳には今までにない決意があった。

 アド・ヴァルムから馬車を飛ばし、数日。ミナトの目の前に現れたのは、鉄と石造りの巨大建造物が林立する、剣戟帝国の首都「ガルド・メギド」だった。

アド・ヴァルムの情緒ある街並みとは対照的な、効率と軍事力を追求した「メガロポリス」だ。


『ミナト、街全体のスキャン完了。……あちこちに魔導兵器の反応があるわ。まさに「軍事国家」ね。さすが魔王を倒した伝説の勇者が産まれた町、そして伝説の剣が作られた町ね』

「……上等だ。相手がデカければデカいほどやる気が出る」


 ミナトは威圧感だけで門番を黙らせると、そのまま帝都の心臓部――黒金くろがねの城へと乗り込んだ。


 謁見の間でミナトを待っていたのは、白銀の髪を冷ややかに流したかなり太った青年、第八皇子エドワードだった。彼は豪華な椅子に深く腰掛け、何かを食べ続けていて顔も上げない。


「……アド・ヴァルムからの『返答』が、まさかたった一人の移住者だとは」

「龍神の移住者を舐めてもらっては困ります」


 ミナトの声に、エドワードがようやく顔を上げた。その瞳は、人間を「感情」ではなく「資産価値」でしか見ていない目をしていた。


「龍神? ……笑わせるな。我が帝国は、アカツキを失った穴を『龍神の加護』で埋めることにした。これは決定事項だ」

「……穴を埋める? 随分と後ろ向きな方針だな。そんなんだから、最強の武器を使いこなせず『無駄死に』させるんだよ」


 ミナトの挑発に、周囲の親衛隊が剣を抜こうとする。だが、エドワードがそれを手で制した。


「……面白い。では、貴様は我が国に何を『提案』しに来た? リリアーヌ以上の価値を、あの弱小国が提示できるとでも?」


 ミナトは不敵に笑い、右拳を軽く握った。


「――さて、エドワード殿下、それに皇帝陛下。提案はシンプルです」


 帝都の謁見の間。隠れていた重臣たちの殺気を柳に風と受け流し、ミナトは指を二本立てた。

「一つ、リリアーヌ様との政略結婚を白紙撤回し、アド・ヴァルムと『同盟』を結ぶこと。二つ、それを受け入れないなら、今この瞬間から俺がこの帝都を『滅亡』すること。……さあ、どちらかを選んでください」


 静寂が、重く謁見の間を支配した。

エドワードの冷徹な仮面が剥がれ落ち、皇帝の顔がみるみるうちに土気色に変わる。最強の武器アカツキを失った今の帝国にとって、国道を一瞬で開通させるミナトの力は、文字通り「逆らえない天災」そのものだ。


「……き、貴様、正気か! この帝都を更地にするというのか!」

「ええ。更地にした後の『国道1号線・延伸プラン』まで頭に入ってますよ。……どうします? 破壊による『再生』か、同盟による『共生』か」


 あまりに不遜。だが、あまりに圧倒的な交渉力。

エドワードは額の汗を拭い、必死に声を絞り出した。


「……わ、分かった。一度、検討の時間をくれ。……今晩、歓迎の晩餐会を開く。返答は明日の朝まで待ってもらいたい」

「いいでしょう。では、夜まで帝都の『視察』でもさせてもらいますよ」


 晩餐会までの間、ミナトは一人で帝都の街へ繰り出した。

活気があり、美しい街並み。エドワードは嫌いだがこの町は好きになりそうだった。

しかし、そこで目にしたのは意外な光景だった。


(……おいおい、なんだこの視線は。前職の不祥事会見の時より刺さるぞ)


 街の人々は、ミナトの姿を認めるなり、モーゼの十戒のように道を空け、物陰からこちらを見ている。母親が子供の目を覆い、屈強な男たちが路地裏に逃げ込む。


『無理もないわ。ミナトの悪名は既に帝都中に轟いてるもの。「国道1号線を一瞬で作り、最強の移住者を殺した龍神」……それが今のあんたの「イメージ」よ。まさに歩く災害ね』


頭の上のボーは街の雰囲気を感じ取っていた。


「……ふん、ここまで認知度が上がるとはな。……おっと、あそこの串焼き、美味そうじゃないか」


ミナトは今さら気にしなかった。



 賑わう市場の片隅で、粗末なマントを羽織った一人の男がミナトに声をかけてきた。



「……龍神の移住者殿。少々、耳を貸してくれないか」


 ミナトは瞬時に警戒し、拳に力を込める。だが、男は穏やかに手を挙げ、フードを脱いだ。


「私はこの帝国の第2皇子、カトレイアだ。……安心しろ、弟のエドワードとは違い、私は君の提案する『対等な同盟』に、唯一賛成している立場だ」

「第2皇子……。王族にしては、随分と話が分かりそうですね」


 カトレイアは、怯える民衆を悲しげに眺めた。


「力による支配は、いつか限界が来る。君のような『規格外』が現れた以上、帝国も方針を変えるべきだ。……だが、忠告しておく。今夜の晩餐会、エドワードたちは君の暗殺を企てている」

「暗殺、ですか」

「ああ。晩餐会の後、君を城の奥へ誘い出し、影の暗殺部隊を動かすつもりだろう。……君の提案を飲むフリをして、隙を突いて殺す。それが弟たちのやり方だ」

「……なるほど。晩餐会の後に、裏で契約を白紙に戻す腹ですか。……古臭い手法だな」


 ミナトはカトレイアに礼を言うと、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「カトレイア様、情報ありがとうございます。……ますます晩餐会が楽しみになってきましたよ。あいつらがどんな『おもてなし』を準備しているのか」

『ミナト、本気? 相手は暗殺のプロよ』

「ボー、心配するな。……龍神の加護は最強だ」

「そのとおり!」


 29歳、元広告マン。  彼は独り、リリアーヌの待つ国を守るため、罠が待ち受ける晩餐会へと歩き出した。


第11話をお読みいただきありがとうございました!

ついに現れた新たなライバル、エドワード皇子。 ミナトの「更地にするぞ」という脅し(?)混じりの提案は、果たして帝国に通用するのか!?

ミナト「交渉の基本は、相手が拒否できないほどデカい『夢(または恐怖)』を見せることだ!」

次回、第12話。お楽しみに!

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※AIとの共同執筆作品となります。


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