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第1話:29歳の誕生日、無料の「龍神の加護」をもらった

29歳の誕生日。最高のプレゼントは「自由」……のはずでした。

夢だった広告代理店で、理不尽な残業を押し付けられていた佐伯ミナト。限界を迎えた彼が駆け込んだのは、深夜の路地裏に輝く怪しい移住相談所。

「今なら龍神の加護が無料キャンペーン中ですよ!」

その一言に乗せられて始まった異世界お試し移住。 待っていたのは、スローライフという名の「破壊」の日々!?

元広告マンの、命懸け(?)な異世界再就職物語、開幕です。


 29歳の誕生日の23時59分。佐伯 ミナト(さえき みなと)は、夢だった広告代理店に勤務し七年、デスクで見つめていたのは青白いモニターに映る終わりのない指示だった。


「……全体的に『情熱的』にして!あと一時間で再提出ね」


 青い情熱。そんな矛盾した言葉にミナトは感情を殺してマウスを動かす。この数年、ミナトが学んだのはクリエイティブなスキルではない。理不尽を飲み込み自分の時間を切り売りし上司の機嫌を損ねないための「調整術」だけだ。


 終電を逃しゾンビのような足取りで歩く深夜2時。駅への裏路地に昨日まではなかったはずの看板が怪しく輝いていた。


『移住相談所:龍の窓口』。


ミナトは吸い込まれるようにドアを開ける。


「いらっしゃいませ。……疲れてらっしゃいますね。のんびり生活を満喫できる移住はいかがですか?」


 カウンターに座っていたのは、妙にリアルな「龍の帽子」を被ったお姉さんだった。帽子は時折、生きた鱗のようにギラリと光る。


「今の生活はもう限界でしょう? 移住してみませんか?特別なキャンペーンがあります。1ヶ月の『お試し移住』いかがですか?」


 お姉さんは「移住先は天国のような場所」と書かれたパンフレットを差し出した。


「検討してみます」


ミナトは笑った。

だが、翌日の昼休み、その笑いは完全に凍りついた。


「ミナトォ! お前がミスしたせいで今回のキャンペーンは白紙だ!今すぐクライアントに土下座して回れ!」


 部屋中に響く上司の怒号。ミスをしたのは二日酔いで指示を出し忘れた上司本人だ。周囲の同僚は目を逸らす。ミナトの中で、何かが音を立てて砕けた。


「……土下座はしません。……辞めさせていただきます」


 デスクから、いつか出そうと用意していた退職届を叩きつけミナトは会社を飛び出した。

向かった先は白昼堂々と路地裏に口を開けている「龍の窓口」だった。


「……昨日のお試しお願いします。ここじゃない場所ならどこでもいい」

「最高の決断です! 今なら『龍の窓口』開設記念として『龍神の加護』を無料で付帯します。危険な異世界を案して冒険できますよ!」

「異世界……?無料……? じゃあお願いします」


 ミナトが契約書に名前を書いた瞬間、視界が真っ白な光に包まれた。

 鳥のさえずりで目が覚めた。

体を起こすと、そこは柔らかな木漏れ日が差し込む森の中だった。空気は澄んでいて排気ガスの匂いもしない。


「……本当に、来ちゃったのか」


 ミナトは深呼吸をした。肺が浄化されていくようだ。

 立ち上がり、周囲を見渡す。木々はどれも巨大で葉の一枚一枚がステンドグラスのように透き通り太陽の光を浴びて七色に輝いている。

何より驚いたのは、体の軽さだ。慢性的な肩こりと、睡眠不足で鉛のようだった頭がまるで新品のPCをセットアップした直後のようにキレッキレに動く。


「……腹、減ったな」


 ふと目に止まったのは、木の根元に生えていた見たことのない木の実だった。透明な果実の中に小さな銀河が閉じ込められたような不思議な実だ。

普通なら毒を疑うところだが、なぜかミナトの脳内には、広告のキャッチコピーのようにスッと情報が流れ込んできた。


【クリスタル・ベリー:食用可。糖度25度。摂取すると微量の魔力が回復します】


「……便利だな、この『加護』。まるでAR(拡張現実)ゴーグルをつけてるみたいだ」


 口に含むと、冷んやりとした甘みが弾け疲れが完全に消し飛んだ。

まずは拠点作りだ。手頃な倒木を集めようとしたがミナトが軽く引っ張るだけで木がスポンと抜けた。


「……まあ、身体能力向上って言ってたしな」


手刀を振るえば、硬い樹皮がまるでバターのように綺麗にカットされる。広告代理店で徹夜明けに段ボールを解体していた時とは比較にならない効率だ。

完成したのは、風通しの良い、木の香りが心地よい素朴なコテージ風の寝床だった。

 火起こしも簡単だった。指先で「火が欲しい」と願っただけで、小さな火花が弾けて乾いた葉に燃え移る。

夕食は、近くの清流で飛んでいた「スカイ・トラウト」の塩焼き。羽が生えた魚で、水面を滑空するように泳ぐ姿は美しかったが味は最高級の鯛に脂の乗ったサーモンを足したような絶品だった。

味付けは、森で見つけた「ブラック・ペッパー・リーフ」。揉むだけで芳醇な香りが広がる。


「……信じられない。あんなに必死に働いて手に入るのはコンビニの冷めた弁当だけだったのに。ここでは、ただ歩くだけで最高の暮らしが手に入る」


 焚き火を眺めながら、ミナトは確信した。

ここは天国だ。俺はついに最高の移住先を見つけたんだ。

不思議なことに、何をやっても上手くいった。


「『龍神の加護』って言ってたけど、これは『運が良くなる』系のスキルなのかな」


ミナトが夕食の食材を探して森の奥へ入った時、茂みからガサガサと音がした。


「ギャギャッ、ギョギャァァ!!」


 飛び出してきたのは、緑色の肌、汚れた腰布、そして錆びた短剣を構えた怪物――ゴブリンだった。


「うわっ、マジで出るのかよモンスター!」


 ミナトは反射的に後ずさる。スローライフに浮かれていたが、ここは異世界なのだ。  ゴブリンは醜悪な笑みを浮かべ跳躍して短剣を振り下ろしてきた。


「くそっ、来るな!」


 ミナトはパニックになり目を瞑って無我夢中で拳を突き出した。

広告マンの鍛えていない貧弱なパンチ。当たるはずがない当たっても効くはずがない――


 ドゴォォォォン!!


 森全体が揺れるような、凄まじい衝撃音が響き渡った。


「……え?」


 恐る恐る目を開ける。目の前にゴブリンはいなかった。

代わりに、ミナトの拳の延長線上――数百メートル先の森の木々が、まるで巨大な砲弾が通過したかのように一直線に薙ぎ倒され、新たな「道」が出来上がっていた。


「……嘘だろ」


 自分の拳を見つめるミナト。その時、彼の頭の上に乗っていた(いつの間にかついてきていた)「龍の帽子」が、クスクスと笑い声をあげた。


「笑った!?」


笑うはずのない帽子が笑ったので驚いていると。


「帽子のボーです」

「しゃべった!」

「あらミナトさん、そんなに驚かないで。それは龍神様が考えた【ウェルカム・インパクト】。 ほら、一撃で快適な国道が開通したじゃない。龍神様に感謝してほしいくらいだわ。……あ、もちろんこれ『無料キャンペーンの範囲内』だから安心してね?」


 ミナトは理解した。自分が手に入れたのは、のんびりスローライフを送るための便利な道具なんかじゃない。

この世界の生態系を、たった一撃で破壊しかねないとんでもない代物だったのだ。


第1話をお読みいただきありがとうございます!

ついに会社を辞めて「天国」へ移住したはずのミナトですが、手に入れた『無料特典』の火力が過剰すぎました。 ゴブリンを殴ったら国道が開通する……これ、移住先の環境破壊で訴えられないか心配ですね。

そして、勝手に喋り始めた帽子の「ボー」。彼(彼女?)の背後で微笑む龍神お姉さんの目的とは?

ぜひブックマークや評価など、応援よろしくお願いします!

※AIとの共同執筆作品となります。


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