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ボクの一夜

作者: りな

キラキラ輝く空。


 「ボクも、お空に行きたいな」


 ボクくんは、

 お家のベランダから、

 じっと空を見上げていました。


 白い息が、

 ふわり、と浮かび、

 そのまま空に吸い込まれていきます。


 まるで、

 空が息をしているみたいです。


 遠くで、

 誰かが呼んでいる気がしました。


 名前じゃない。

 でも、

 知っている声。


 ボクくんの足が、

 ほんの少し、

 床から浮きました。


 影が、

 ベランダから、

 すこし離れます。


 「……あ」


 こわくない。


 でも、

 胸が、

 ぎゅっとします。


 ボクくんは、

 お空に向かって、

 手を伸ばしました。


 キラキラに、

 近づいて、

 近づいて――


 (まぶしい!)


 目を開くと、

 そこは、

 海のようで、

 空のような、

 不思議なところでした。


 ボクくんは、

 ぷかぷかと、

 そこに浮かんでいます。


 キラキラ光る星たちが、

 やさしく、

 ボクくんのまわりを照らしていました。


 「おーい!」


 声がして、

 一隻の船が、

 近づいてきます。


 「君、名前は?」


 「ボクは、ボク」


 船に引き上げてもらい、

 ボクくんは、

 そっと下をのぞきました。


 星たちは、

 変わらず、

 やさしい輝きのまま。


 その、

 ずっと下の、

 遠いところに。


 ボクくんがいた

 ベランダが、

 見えたような気がしました。


 もっと、

 近づこうとした、そのとき。


 「危ない、危ない!」


 船の乗組員が、

 ボクくんの腕を、

 ぎゅっとつかみます。


 その手は、

 あたたかくて、

 すこし、

 ざらざらしていました。


 「下を見すぎるとね、

 戻れなくなるんだよ」


 船は、

 静かな音を立てて、

 ゆっくり進みます。


 海みたいで、

 空みたいな、

 どこまでも続く場所。


 「……ここ、

 きれいだね」


 ボクくんは、

 そう言ってから、

 続けました。


 「それに、

 寒くも暑くも、

 痛くもない」


 乗組員は、

 小さくうなずきます。


 「うん。

 でもね、

 ボクは、

 暑い日も、

 寒い日も、

 すこしくらいの痛みも、

 がまんできるんだ」


 ボクくんは、

 しばらく、

 キラキラを見つめていました。


 そして、

 小さく、

 言いました。


 「……また、

 来てもいい?」


 乗組員は、

 笑いました。


 「夜になれば、

 いつでも」


 しばらくして、

 光が、

 ふっとほどけます。


 風が吹いて――


 ボクくんは、

 ベランダに立っていました。


 手すりを、

 ちゃんと握っています。


 空は、

 さっきより、

 少しだけ、

 遠く感じました。


 でも、

 キラキラは、

 まだ、

 そこにあります。


 ボクくんは、

 白い息を、

 もう一度、

 空に向かって吐きました。


 「……またね」


 空は、

 何も答えません。


 それでも、

 キラキラは、

 やさしく、

 光っていました。


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