第十一話 家族の靴下の臭い
夕飯の食卓の後のリビング、お母さんがキッチンで洗い物をしていて、弟はテレビの前のソファーに座り携帯ゲームをしていた。お父さんは帰るのが遅くなるらしいのでいない、お母さんも弟も、靴下を履いていた。
「お母さん、食器下げるの手伝うね」
私はお母さんの隣に並んだ、お母さんからお母さんじゃない匂いがしていた。いつもつけている香水の匂いが私の鼻を刺激する。お母さんは黙って私に、洗い終わった食器を渡してきた。それを丁寧に拭き上げ、食器棚に戻していく、食器のお茶碗や、お皿は落とすと割れるので、慎重に運んだ、そして最後の箸になった、私はお母さんから洗いあげた箸を貰うと、わざと落とした。カラカラと音は立てて転がっていった。
すかさず私は地面に這いつくばり、箸を拾い上げ、お母さんの足元に行き、靴下の匂いを嗅いだ、やっぱり香水の匂いが強く靴下の本性の匂いはしなかった。だが、いつも同じ香水をつけているので、この匂いが私のお母さんだという証明にはなるかもしれない。
今度は弟の方に向かい、同じソファーに座った、私は興味のないテレビをつけた、普段、弟に興味のない私はこんな風に同じソファーに座るなんてしてなかったので、弟はビックリした顔で見てきてる。
「和樹、部活まだサッカーしてるの?」
私達家族は、ご飯の時、顔を合わすが会話がないので、これが実に半年ぶり位の会話だった、私は弟の和樹に名前を呼んだとき、ちょっと背筋がむずむずと痒くなった。
和樹がうんとだけ、返事して黙り込んだ、ずっと会話してなかった姉が突然会話してきたんだからちょっとは、喜んでほしい。
「足疲れてるんじゃない?少しマッサージしてあげる」
私は無理やり、和樹の足を持ち上げ足の裏をマッサージし始めた。和樹はモゾモゾと足を動かしはじめた。
「ちょっと、お姉ちゃんくすぐったい!!!」
久しぶりにお姉ちゃんと呼ばれて高揚した。
「我慢しなさい」
私はそう言って、足の裏をグリグリと指で押し込んだ。和樹が悶絶して俯いた、そのスキに私は和樹の靴下の匂いを嗅いだ、少し青臭い青春の匂いがした。この間嗅いだ、ブリーフと同じような匂いがした。なるほど和樹の匂いが分かった気がした。そのあと和樹は私に少しまた心を開いたのか、自分のやっている携帯ゲームの説明をしてきたり、学校での話をしてきた。私はその話達に全然興味が湧かなかった、私が知りたかったのは匂いだった。だが私は和樹の話を姉らしく聞いてあげた。




