自動運転の罠
自動車の性能は日進月歩で、1769年にフランスで世界初の蒸気機関を搭載した自動車が開発されて以来、改良が加えられて来ました。
ガソリン車の開発は1870年にオーストリアで成功し、後にダイムラーとベンツがそれぞれの工夫を加えて、一般向けに販売を開始します。
黎明期は、蒸気機関、ガソリン機関、電動式が並立して競走が行われ、次第にガソリン車が優勢になります。
一時期はガソリン車とディーゼル車のみが市場を席巻していましたが、現在は電動式も再普及し始め、自動車産業は新たな局面に入っています。
そのような自動車開発史の中で、人の操作を介在しない自動運転という進化の形があります。
近未来を描いた作品などで登場すると共に、80年代のアメリカドラマでもコンピュータ制御による完全自動運転の自動車が活躍する作品がありました。
90年代の日本のアニメでは、人工知能を搭載した自動車を操るモータースポーツを描いた作品もあります。
このように、人の操作が介在しない完全自動運転の実現に向けて、自動車産業は進化を重ねていると言えるのが現在の状況です。
それは言わば、発展途上の未完成な技術であり、どこかに致命的な欠陥が潜んでいる可能性があります。
現状の自動運転では、衝突回避の技術が主流で、人が認知しなかった障害物に対して、自動車が制動をかけたり、旋回なども併用して衝突を回避する技術です。
これには様々なセンサー類が正常に作動していることが大前提として成立している必要がありますが、それでも万全ではありません。
中日本高速道路が注意喚起と共に公開した動画では、高速道路での規制帯に進入した一般車両による追突事故の様子が撮影されていました。
原因は運転手の居眠りや脇見運転とされていますが、それを助長しているのが自動運転の技術と言われています。
障害物検知も、前走車両がいる間は前走車両に対してしか作動しません。
その前走車両が車線変更して、規制帯の資機材を感知するまでの数秒間に高速走行では回避不能な距離を走行してしまいます。
たまたま事故現場では人身事故に繋がっていないだけでしたが、つい先日の北陸自動車道では規制帯に進入して規制車に衝突した車両の運転手がお亡くなりになりました。
技術を過信すると、足元を掬われる事例でしょう。
中日本高速道路が公開している動画では、自動運転の技術が発展する未来像も紹介されています。
私が思うに、完全自動運転の技術が確立するには、全ての自動車がコンピュータで一元的に制御される社会の構築を待たなければならないでしょう。
一台でも予測不能な動きを許してしまうと、そこから制御が破綻し混乱に陥ります。
自動運転の技術は、最終的に管理社会へと移行する入り口なのかもしれません。