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お気に入り小説4

不思議な小箱で縁を弄ったら、義妹がざまぁされて、素敵な騎士団長様と結婚出来ました。

作者: ユミヨシ

追い詰められていた。


アルデシア・フェレノ公爵令嬢に向かって異母妹であるマリーアは、言ったのだ。


「デリック様は私と結婚したいと言うの。だから、私、お父様に言ったわ。婚約者を私に変えて下さいって。お父様もデリック様のご両親のアフル伯爵夫妻も、大賛成だって。だってねぇ、私の方が綺麗だし。私の方がデリック様に愛されているし、お姉様は私に嫌がらせしてくるじゃない?だから、ね?私はお父様に言ったの。お姉様をううううんと年上の男性に嫁がせて下さいって。罰を与えて下さいって。当然よね。お姉様は私を虐めていたのだから」


マリーアは、アルデシアの母が亡くなってから、すぐに入って来た愛人ユリアの娘だ。

父、フェレノ公爵は母が生きていた頃から浮気をし、マリーアを産んでいたのだ。


アルデシア10歳、マリーア9歳の時である。


両親はマリーアばかり可愛がり、アルデシアは食事も別にとるようになり、とても寂しい思いをした。


アルデシアが16歳になった時、婿入りの話が出て、デリック・アフル伯爵令息がフェレノ公爵家に婿入りしてくるという事で、アルデシアと婚約を結んだ。


デリックはそれはもう、美しい金の髪に青い瞳の男性で、アルデシアは一目見て好きになった。


ただ、アルデシアは自分の容姿に自信がなかった。

妹のマリーアは金の髪に青い瞳で、とても可愛らしい姿をしているが、アルデシアは地味な金の髪、茶の瞳で、マリーアと比べて、どうしても見劣りがしてしまうのだ。


それでも、一応、長女という事で、フェレノ公爵はアルデシアに婿を取って、マリーアを嫁に出すと考えていたのだが。


マリーアがデリックに興味を持って、彼の家に押し掛けるようになった。

そして、いつの間にか、デリックと親しくなり、マリーアがデリックと婚約する事になったのだ。


今までマリーアは父の愛情を取り、そして婚約者デリックまで取っていって、アルデシアには何も残らなくて。


ああ、わたくしはどうしたらいいの?




だから、アルデシアは引き出しから小さな箱を取り出した。


その中には白い紙が入っている。


「人の縁を弄る事が出来るのよ」


亡き母がそう言っていた不思議な小箱だ。




白い紙に浮かび上がったデリックとマリーアが結ばれた線。

その線を消して、デリックの線を孤高の騎士団長エリウスと結んだ。

自分に結ばれたブルード伯爵の線を消してブルード伯爵とマリーアと結んだ。


デリックと結婚するのは嫌だったから、孤高の騎士団長ならエリウスなら、いいだろうと思って。


エリウス騎士団長は、美しい。美しいが厳格で正義感の塊だ。

あまりにも、厳格で口うるさいので、前の妻が逃げて行ったと社交界で噂になった男だ。

デリックに丁度いいだろう。


まず、異母妹であるマリーアが、20も歳が離れている伯爵の家に嫁がされた。

マリーアは泣き叫んで、


「なんで私があんな男に嫁がなければならないの?お父様」


「お前の態度が悪いからだ。お前がアルデシアに虐められていると嘘を言っただろう?お前のような女でもいいといってくれるブルード伯爵の妻になるがいい」


蔑むようにマリーアを見て、父はマリーアをさっさと追い出した。

マリーアは泣き叫びながら、粗末な馬車に乗せられて嫁いでいった。


あれはわたくしに訪れたはずの運命。マリーアに押し付けたのよ。


エリウスがデリックの婚約者になったと人づてに聞いた。


男性同士って結婚出来たかしら?疑問が残るが、エリウスは熱烈にデリックにアプローチして、婚約に漕ぎつけたという。


しかし、事態は思わぬ方向に動いた。


エリウス騎士団長が、騎士団を引き連れて、フェレノ公爵家に押し掛けてきたのだ。


「不自然な魔力の流れを感じた。調査させて貰おう」


そして、アルデシアの部屋に押し入って来て、アルデシアは悲鳴をあげた。


「何ですの?」


「不自然な魔力の元はその箱かっ。寄越せ」


「嫌です。これはお母様の形見っ。渡すわけには参りません」


「渡して貰おう。おかしいと思っていたんだ。何故、私が男と婚約を?まるで私ではないように、熱烈に愛を囁いて、とんでもない。私は男に興味はないっ。両親も賛成してあっという間に男と婚約をっ」


「気の毒ですわ」


「気の毒ってっ。この箱が原因だろうが。貰うぞっ。開けるぞ」


見られてしまった。名前が書かれて、線で結ばれているのを。


エリウスは怒りまくって、


「原因はこれかっ。これが私の男としての人生を狂わせたのかっ」


申し訳なく思った。

アルデシアはエリウスに、


「わたくしは異母妹マリーアのせいで、婚約者であったデリック様を盗られ、年上のブルード伯爵の妻になる所でした。だから、この紙に願ったの。どうか、わたくしを助けて下さいって。まさか叶えてくれるとは思わなかったわ」


「叶い過ぎだ。名前を消せっ。頼むから消してくれっ」


一緒に来た騎士団員達が、


「いいじゃありませんか。団長は美男だし、婚約者も美男でしょ?」

「いっその事、結婚してしまえば」


「馬鹿言うな。私は女性が好きなんだっ」


「でも、前の奥様に逃げられたとか」


アルデシアが思わず突っ込めば、エリウスは、


「確かに逃げられた。正義の志を徹夜で話したら、貴方の正義にはついていけないわって出て行ってしまった。ちょっと話をしただけじゃないか?貴族の結婚ってこんな軽いものだったのか?」


「お気の毒に」


「ともかく消して貰おう。多分、君の手でないと消えない」


消すしかなかった。これで相手が元に戻ってしまうの?

あの異母妹マリーアが戻って来て、わたくしがブルード伯爵の妻になるの?

怖かった。今、マリーアはどうなってしまったのだろう?


そうしたら、ブルード伯爵が父の元に訪ねてきた。

客間で応対する父フェレノ公爵。


ブルード伯爵は太っていて、巨漢を震わせて、


「あんな可愛い女をよこしてくれて有難う。あの我儘ぶりは教育し甲斐があってだな。閉じ込めて教育をたっぷり施しているところよ」


「そうか。まぁ本当に困った娘だが、頼むよ」


閉じ込めてたっぷり教育。

マリーアは酷い目にあっているようだ。


それからしばらくたってから、エリウスが訪ねてきた。


「やっと婚約が解消出来た。もうあの紙は使わないで欲しい」


「使いませんわ。わたくし、追い詰められていたからどうしようもなくて」


「それならば、私と婚約してくれないか?」


「え?」


「君の事を調べさせて貰った。凄く酷い環境で育ったことも。私が幸せにしてやらねばならない。正義の心が燃え上がっているんだ。どうか、私と婚約してくれないか?」


「わたくしは、貴方とデリック様を結んだのですよ。わたくしは罰を受けなくていいのでしょうか?」


「追い詰められてした事。君を罰するだなんて私の正義が許さない。どうか、私と婚約をっ」


嬉しかった。本当にいいのか?悩むところだけれど、彼の求婚を受け入れる事にした。



二人の婚約が決まって、テラスで仲良く過ごしていた。


エリウスは、アルデシアを膝に抱え、


「あ~んしてごらん」


「恥ずかしいですわ」


「この焼き菓子、美味いぞ。私が食べさせてあげたい」


その様子を生暖かい目で見ている使用人達。


「何もあんな昼間からイチャイチャしなくても」

「人目があるわよね。でも、尊い…」



そこへ大股でデリックがやって来て、


「あれだけ、私に愛を囁いてくれたのに、何で私を捨てたんだ」


そっち?そっち系に行っちゃった?


自分がエリウスとデリックの名前を結んだせいで、とんでもない事になってしまった。


エリウスはすまなそうに、


「私はどうかしていた。私は真実の愛を見つけたんだ。だから、デリック。君は君で真実の愛を見つけて欲しい」


「解った。男らしく身を引こう」



庭の端にムキムキ達の姿を見つけた。


「屑の美男を見つけたぞ」

「婚約者を捨てて、浮気をした屑」

「さらって行くぞ」



彼らは美男の屑を愛する変…辺境騎士団。

デリックはさらわれて、そこで真実の愛?を見つけていることだろう。


アルデシアはエリウスと結婚した。


二人の子に恵まれて、幸せに暮らしているけれども、ふと思う。


この小箱が無かったら今頃は、ブルード伯爵の元で苦しんでいたかもしれない。マリーアがどうなったのか?社交界にも姿を見せない事から、閉じ込められているのだろう。

マリーアの事は考えない事にした。


今はただ、愛する夫エリウスと可愛い子供との幸せを感謝して、初夏の青い空を見上げるのであった。


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辺境騎士団の屑美男センサーが高性能過ぎますわ……
アルテシアが無責任過ぎて素直に祝福できない というか、今回の話登場人物全員屑なのでは………?(騎士団含めて)
ついでに愛人ユリアも伯爵に押し付けて、父親は辺境の騎士団と縁を結んでしまってもいい気がしますね。
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