新天地へ③
「ルーム外に逃げたのがお前の敗因だ」
そう言ってジーニスは剣を突きの構えで持ち、狙いを済ませた。
「探知されたか、保護者付きとはな」
「緩めたのが仇となったか」
そう、初見で気付く事は困難だが、術者が出入りする際、ブラックルーム全体の拘束力が弱まるため、術者以外の者も出入りがし易くなるようだ。
「とはいえ問題はない、お前も切り刻んでやる」
「神裂き!」
「纏 火、雷」
「陽炎」
ジーニスは神裂きを躱した。
「火はやがて炎となり矮小なる存在に加護を与えん バーニングストライク!!」
炎を纏った突きがとてつもない速さで繰り出され、船員の右肩を貫いた。
「ぐぁぁぁ!!!」
「これでお得意の風魔法も封じた、観念しろ」
そう言ってジーニスは船員を捕らえ、拘束した。
「よく耐えたな」
「でも俺、何もできなかったです、、」
「そんなことはない、ルーム外に逃げないとまずい状況を作り出しただけでも称賛に値する」
「、、、ありがとうございます」
「それにルームまで使える敵は厄介かつ強敵だ」
「あ、そういえば室内はそんなに広くないのにルーム内はかなり広く感じました」
「あれは一種の異空間的なやつですか?」
「まあそんなもんだな、空間魔法に近いだろう」
「さて、ここで長居してもしょうがない、まずはこいつをつき出して真相を話させよう」
「そうですね、そういえばエマたちは?」
「俺たちの部屋でマカフィと一緒に待たせている」
「では早々に戻らないとですね」
そしてジーニスと俺は奴隷商人殺しの犯人として船員をつき出して事の詳細を話した。
無事にマカフィの疑いも晴れ、犯人も捕まったが、動機は未だ不明のままだ。
まぁそれは船側の人らが調査するだろう。
俺たちは自分たちの部屋に戻り、マカフィに起きた出来事を報告した。
マカフィは泣いて喜んでくれたが、あの時見捨てていたらこの子は、、と思うと少し怖くなった。
とはいえ結果的にマカフィは助かり、危険な敵も排除できたんだ。そう考えると安堵のあまり一気に力が抜けて床に倒れこんだ。
、、、、、、、、、違うな。
脇に喰らった傷から出血は止まっていたが、血を流しすぎた。アドレナリンで正気を保っていただけだった。
俺って死ぬのかな、、そう思いながらだんだんと気が遠くなる。
さっきからエマたちが俺の名前を呼んでいるのがわかる。
だめだ、だんだん気が、、、、
俺は気を失った。。。。
ここは、、俺が目を覚ましたそこには真っ黒な世界が広がっていた。
するといきなり目の前にサンドヴェノムが現れ、攻撃しようとするも体が動かない。だが、サンドヴェノムの攻撃も俺には当たらない、、、
なんだこれは??
サンドヴェノムは少ししたら消え、次々と俺が戦った敵が現れては消え、を繰り返し、最後に現れたのは風魔法使いの船員だった。
身体は依然として思い通りには動かないが、勝手には動くようだ。痛覚はないが俺は戦っていた、なんだこの感覚は、、夢、、なのか。
だんだん意識がはっきりとして、俺は船の自室で目を覚ました。
「目を覚ましたわよ!」
エマの声が聞こえた。どうやらマカフィが回復魔法を使えたらしく、俺は一命を取り留めた。
「ありがとう、助かったよ」
「私も助けて頂きましたし、元々は私のせいなので、、」
「そんなことはないよ」
はて、先ほどの経験はなんだったのか、夢にしては少し違和感があったが、、
「俺が気を失ってどれくらい経ちました?」
窓の外は暗かった。
「約二日ほどだな」
「そんなに!?」
感覚的には数時間位だったが、、
奇妙な体験から時間のずれ、俺は混乱していた。
「まだ全快って訳でもなさそうだ、ゆっくりと休むんだな」
ジーニスはそう言って部屋から出ていった。
「マカフィ、私たちも部屋に戻りましょう」
「セレンも目が覚めたみたいだしこれで一安心ね」
そうして俺は部屋で一人になり、自室に用意されていたご飯を食べ、ゆっくりと休むことにした。
気付けば朝になっていたが、ジーニスの姿はない。
「どこ行ったんだ」
するとエマたちが部屋に入ってきた。
「ジーニスさんは?」
俺はエマに問いかけた。
「夜の見張りよ、クラーケンとか海の魔物は夜になると動きが活発になるらしいから初日から見張りをしてくれているのよ」
あんな戦闘があった日でも休まずに安全を確保してくれているのか、感謝しかないな、、、
しばらくするとジーニスは帰ってきた。
「お、お前たち起きていたか」
「朝バイキングやってるからみんなで行くか!」
そう言ってジーニスは疲れ一つ見せずに俺達を連れ、バイキングへと向かった。