出逢い②
少しの暇を終え、暗くなるまでにある程度進むことにした。
それまでにサンドヴェノムを含むゴブリンやスコーピオンなど多種多様な魔物に遭遇してはジーニス、エマが主体で討伐し、俺は纏を会得すべく訓練していた。
「セレンの得意属性は光か、父親が雷だったからてっきり雷かと思っていたぞ」
この世界は親の得意属性に遺伝されることが多く、母親は火属性だったから俺は少し異端だった。
そしてエマとの戦いで見せた残像剣は俺のオリジナルで、光魔法を応用したものだ。
オリジナルとは言っても別に特別って訳じゃない、大半の魔法は基礎からの応用になっている。
ちなみにこの世界では魔法に詠唱やらを必須としている魔法は特にないが、級の高い魔法になればなるほどイメージが難しく、故に詠唱で補うパターンが多い。
スポーツ選手でいうところのルーティンに近いだろう、ちなみに俺は詠唱の必要はない!なぜならまだA級の魔法を使いこなせていないから!
、、、虚しくなってきた、、、
「光の纏はあまり実戦で見たことがないから教えづらいんだよな、、」
「速度上昇の効果は得られるが、それで言えば雷で事足りるんだよな」
「雷は速度上昇に加え、単純な攻撃力も桁外れだからな」
「でも光の速さで蹴ったりしたら破壊力あるんじゃないですか?」
日本で見てたアニメの知識が今ここで花開く、、
「あんた馬鹿じゃないの、そんな蹴りをしようもんなら本人の足もただじゃすまないわよ」
現実はそう単純ではなかった。
「まぁそもそも光魔法主体ってのが珍しいんだよな、、」
「確かに得意魔法は光ですけどその他もC級魔法くらいならある程度の属性扱えますよ」
二人は唖然としていた、そう、この世界では先に説明した通り親からの遺伝で属性が決まることが多く、生まれ持った属性は基本的に一つから二つなことが多い。まぁ練習次第で扱えないことはないらしいが。
「あとは級の底上げができれば、、だな」
俺は別にチート能力というわけではない、現に得意魔法の光以外はC級程度しか扱えず、実践ではほぼ役に立たない。
「ちなみにSS級の魔法ってどんなのがあるんですか?」
「SS級ははっきりと定義されている、国を滅ぼすだけの威力、脅威があるか否か、だ」
そんな恐ろしい魔法がこの世にあるって考えただけで鳥肌が立った、でもよくよく考えれば冷戦状態とはいえ戦争でそんなものを使われたらあっけなく片が付きそうなものだ。
「戦争では使われたりしないんですか?」
「そりゃ昔はあったかもだが今はねぇな、そんな使い手がポンポン居てるわけもねぇし、逆にそれが抑止力になってることもある」
「被害を考えた時にそれは利口じゃないからな」
「このまま冷戦が終わり平和な世界になってくれりゃ世話ねぇけどな」
ジーニスの切実な顔をみて俺は前世の記憶が脳裏によぎる。
日本は戦争のせの字も無いくらいには平和な国だったが、東西南北見渡せば戦争は四六時中起こっていた、なくなるなんて考えもしなかった。これも一つの神の仕業なんじゃないか、なんて考えたことがあった。
普通に考えて、皆で手を取り合って助け合えば、貧困問題等解決することは容易いのに、人が、国が、思想がそれを拒絶する、どんなに善い行いにも一割のアンチがいるってのはそういう世界に神が創っているのではないか、と。
この世界でも戦争は恐らく無くならないだろう、、
それから俺達は4日ほど掛けてサモン港に到着した。
纏は習得できていないが、大体の感覚は掴めた。魔力を体外に纏わせ、属性に変化させる、そうすることで纏が使えるようになる、だが魔力を体外で属性に変える、これがかなり難しい、、
普段は体内で魔力を属性に変化させ、放つのに対し、纏は扱いが逆だ。もう少し訓練が必要だろう、、
「船の手続きと食料の調達をしよう、エマとはここでお別れだな」
ジーニスがそう言うとエマの表情が少し曇った、そして、エマはゆっくりと口を開いた。
「、、、てって、、、連れってってよ」
「私も連れてってよ、どうせここに居てもやれることは限られてるし、成長に限界感じてたの」
まさかのエマの発言にジーニスは戸惑っていたが、見放すこともできず、情も湧いたのか、しぶしぶ了解した。
俺たちの事情は旅の途中で話したが、セントラル地方まで行けば安全だ、それ故今回の事も承諾したのだろう。
ついにノース地方を離れるのか、両親の心配はあるが、指名手配犯の親だから、とはいえ迂闊に手は出せないだろう、父さんは元衛兵団長だしな、、俺も覚悟を決めよう!!
強くなって国を変えてやる!!!
俺はそう誓い、ジーニスとエマの三人で機械都市ギアランドを目指した。