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ジーニスの回想①

 俺の名前はジーニス・アルボレアス、齢30になろうとしているが妻もいなけりゃ彼女もいない。彼女いない歴年齢ってわけじゃない、長続きしないってだけの話だ。


 だが、そんな俺にも誇りはある。それはイッシュ王国の衛兵団であることだ。衛兵団である以上、民や王を守れる力が無いと当然のことながら務まらない。

 それに今は王族の権力争いが酷く、女王であるアリス・ヴィクトリア様に刃を向ける者を少なくはない。

 決して女王に対して民からの人望がないって話ではなく、単に女王の椅子を欲している反対勢力がいるって事だ。

 そんな反対勢力を取り押さえ、鎮圧するのも誇り高き衛兵団の務めだ。


 そんなことを頭で考えながら王宮を歩いていると、後ろから毎回耳をつん裂くような大きい声で俺を呼ぶ一人の女がいた。


「ジーニス!今日も朝から精が出るわね!」


 艶のある金の長い髪を左右に振り、近づいてくるこの女こそ、皇女、シャリア・ヴィクトリアその人である。わかっている、皇女に向かって“女”呼ばわりするなんて、不敬罪で死刑でもおかしくないだろう。

 だが俺からすればシャリアは5歳の頃からの付き合いで、俺が10歳の頃に出会い、剣と魔法を教えていた。

 当時、世間知らずだった俺はシャリアが皇女だとはつゆ知らず、いつも俺の修練場にやってきては稽古をつけてくれと持ち前の大声で懇願してくる威勢のいい少女のイメージだった。


 そして俺は14歳になって初めてシャリアが皇女であることを知る。

 それは学校を卒業し、衛兵団に入団した初日、王宮を案内してもらっていた際の事だった、、

 当時の衛兵団の先輩に同期数人で行動していた時、聞き慣れた声で後ろから俺の名前を呼んだ一人の少女がいた。そう、シャリアだ。


「シャリア!どうしてこんなところに?!」


 その瞬間、先輩と同期の顔が真っ青になり、俺は先輩に首根っこを捕まれ、土下座させられた。


「この度はこの無礼者の愚行、大変申し訳ございませんでした!彼も配属初日で私の指導不足が、」


「良いんです、二人ともどうか顔を上げてください」

「ジーニスは私の恩師です、ジーニスもどうか今まで通りの接し方で、、」


 そう言いシャリアは申し訳なさそうな顔でこちらを見ていた。

 正直びっくりしたとかの次元ではなかった。いつも稽古をつけていた少女がアリス女王の娘だったとは、、


「シャリア様の寛大なお心遣いに感謝いたします!では我々は巡回を続けますので!これにて失礼致します」


 先輩はそう言い、俺と同期を連れ、シャリアのもとを離れた。


「お前、あのシャリア様と知り合いなんだな!すげぇよ(ボソッ)」


 そう喋りかけてきたのが後に親友となるヴォルテックスだった、、


 その後、俺はこっぴどく先輩に叱られ、落ち込んでいた俺を励ますために飯を誘ってくれたのがヴォルだ。その一件以来、俺はヴォルテックスと仲良くなった。


 話は逸れたがシャリアとの出会いはそんな感じだ。


「どうしたシャリア、朝からそんな大声で」


「大声は余計よ」

「不敬罪で死刑にするわよ」


 シャリアの冗談は重い、、

 こんなやり取りも15年くらい続いている。


 シャリアは皇女であるにも関わらず縁談の話はすべて却下し、今でも修行に明け暮れている。

 並大抵の奴らじゃ返り討ちになるレベルだろう、王女になるって器の子がこんなことで良いのだろうか、、


 そう、俺は気付いていたんだ、あくまで“並大抵”レベルの奴が相手なら問題はなかった、、

 そして忘れもしない事件がその日の晩、唐突にやってくる、、


 俺はいつも通り城の周りを一人で巡回していた、すると城からサイレンが鳴り始めた。

 火事か、敵襲か、この音は、、敵襲!! サイレンの音は事象によって少し違っている。

 俺は気を引き締めなおし、城へ向かった。


「ジーニス!!」


 俺を呼び止めたのはシュナイド衛兵団長だった、傍にはヴォルテックスもいた。


「何があったんですか!!」


「シャリア様が、攫われた、、」


「!!!」

「見張りは何していたんですか!!」


「部屋の外にいた見張りが言うには、物音がして部屋の中に入った時にはもういなかったそうだ」

「窓も閉まってたらしい」


「まさか、空間魔法ですか!!」


 空間魔法は禁忌とはされていないものの、扱える者もそういないはず、、その扱いの難しさから、S級魔法とされている。


「俺、探してきます!!」


 ヴォルテックスはそう言って、走り去った。


「待て!っていっても遅いか、あいつは昔から話を聞かないな」


「団長、ご指示を」


「あぁ、まずはシャリア様の奪還と索敵だ」


 それから小一時間経ったが、音沙汰はなかった、、

 すると、城から離れた丘のほうで発煙筒が上がった。


「ジーニス!!」


「はいっ!」


 俺と団長は急いで赤く光る発煙筒の方へと走った。

 たどり着いた時、そこにはヴォルテックスがうつ伏せで倒れ、気を失っていた。


「遅かったな、シュナイド、、と、ジーニスか」


 俺は目を疑った、シャリアを抱えたその男は見覚えのある顔だ、、


「フォルテさん、、」


 団長と一緒に仕事をするようになってから関わることが少なくなっていたが、確かにこの人は俺が初日に城を案内してもらった時の先輩だ、、


「ジーニス下がれ、ここは俺がやる」


 団長の顔がいつにも増して険しくなっていた。


「フォルテ、どうしてこんなことを」


「どうして?どうしてか、、ふふふ」

「俺は昔からアリス派閥じゃあない、俺の忠誠はオルフェンズ様にある!!」


 オルフェンズ、、たしか昔権力争いに敗れたっていう、、まだ狙っていたのか、王の座を、、


「スパイとしてアリス様についていたのか!!」

「何はともあれお前を生かしておく道理もない、、覚悟!!」

まとい 雷!!」


 シュナイドは身体に雷を纏った、次の瞬間、光のごとく斬撃がフォルテの片腕を飛ばした。

 そして間髪入れずに腹に一発拳をかまし、シャリアを取り返した。


「強すぎる、、」


「さすがの速さだな、、だが!!敵は俺だけじゃあない!!もう誰も信じられないぞ!いずれアリスやシャリアは、、、、ふふふふふははははははは!!!オルフェンズ様!万歳!!」


 するとフォルテは自爆魔法を唱えた。


「ジーニス!ヴォルテックスを連れて俺の方に!!!」


 一瞬の出来事だったが、団長が咄嗟の防壁を出したおかげで幸い皆、大事には至らなかった。

 だが、ここから俺たちの歯車は狂いだす、、


 後日、シャリアやアリス様を身の危険から遠ざけるため、国外へ逃がした。

 その隙にオルフェンズ勢力が城を乗っ取り、パトラー・オルフェンズが実質国王になる。

 皇女誘拐の責任を取らされ、シュナイド衛兵団長は任を解かれ、団長の推薦で俺が次期団長となる。

 そしてヴォルテックスはフォルテとの戦いで手も足も出なかったことから衛兵団を抜けた、引き止めたが俺の声は届かなかった。

 シュナイド団長が言うには、ヴォルテックスが戦った時はフォルテ以外にもう一人いたのではないかと推測していた、結局、空間魔法はフォルテのようなレベルの奴が使えるわけがないらしく、フォルテ一人であればヴォルテックスでも善戦できただろうとの事だった。


 そしてこの事件は幕を閉じた。

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