新天地へ⑧
ドアの向こうで船長に担がれたジーニスはかなり疲弊しており、言葉を交わすことなくベッドで深い眠りについた。
この時、俺は知る由もなかったが、ジーニスの体験談を後に聞いた際、纏の極意を使用したことによる副作用だと知ることになる。
「ジーニスさんを休ませたいし一旦各自部屋に戻って休もうか」
「ボワールさん、脱獄犯の件なのですが、、、」
俺は船長のボワールに事情を話し身柄を一旦引き渡そうと考えたが、ボワールは話も聞かず、そそくさとどこかへ行ってしまった。
慌てているというよりは、関わりたくない、そんな雰囲気だった。
ならなぜ脱獄のことをジーニスに伝えたのか、謎は深まるばかりだ。
「どうすんのよ、拘束してるから好きには動けないけど」
「俺たちの部屋でカルティを預かるよ、マカフィはエマの部屋で休んでくれ」
「さすがに今の状況で二人一緒にすることはできない」
「、、、わかりました」
マカフィは納得した表情ではなかったが、今の状況を理解し、行動に移せる子だ。
何度も思うがこんな境遇、いや、世界じゃなかったらきっと、、、
考えても仕方ない、今のこの世界だけが現実であることは変わらない事実だ。この世界でどう生きるか、それだけを考えるしかないんだ。
来世は今よりもっと不遇な世界かもしれないしな、、、
俺たちは身体を休ませるために少し仮眠することにした、が、夜だったこともあり起きたら空は明るく、がっつりと眠ってしまっていたみたいだ。
「起きたか、すまないな、助けてやれんで」
「だがこの状況を見るに、、」
「よくやったな、セレン!」
俺はジーニスに事の詳細をすべて話した。
「船長のこと、奴隷運搬船、噂には聞いていた」
「だが、罪のない人まで殺めたことは見逃すわけにはいかない」
「幸い、ギアランドにいる俺の知り合いに更生施設を運営している奴がいる」
「そこなら不遇な扱いも受けず妹のこともなんとかしてくれるだろう」
「ありがとうございます」
「二度とマカフィをこんな目に合わせたくないです」
「まったくだ」
「この船のことも調べる必要があるな」
カルティはまだ眠っている、起きたらジーニスから説明があるだろう。問題はマカフィだな。
「エマたちと合流しますか」
「そうだな、ついでに朝飯も食べに行くか」
俺たちはエマたちと合流し、四人で朝飯を食べに行った。
部屋に帰るとカルティは目を覚ましていた。
「拘束を緩めてくれ、トイレがしたい」
俺とジーニスは目を合わせ、ジーニスはそっと頷いた。
「大丈夫だ、俺がいるし完全に解くわけじゃない」
「わかりました」
「助かる」
カルティは用を足し終えた後、おとなしく再度拘束を受け入れた。まぁここであがいてもさすがに歩が悪いよな。
少し時間が経ち、ジーニスはカルティとマカフィに今後の説明をゆっくりと話し始めた。
マカフィは泣き始めてしまったが、こればっかりは受け入れてもらうしかない。
マカフィは兄が更生施設で刑期を過ごす間、ジーニスの知り合いの家族に面倒を見てもらうことになった。その間面会は可能とのことで、これが最大の譲歩だろう。
サモン港を出て丁度2週間が経った今日、俺たちはようやくカレド港に到着した。
通常徒歩で1週間かけてギアランドに到着予定だったが、カルティの護送という名目で魔力車での移動となった。
魔力車は貴重で、重役の移動や今回みたく犯罪人の護送目的でしか使うことができない。
船長が魔力車を用意していたみたいだが、実のところ元来の目的は別だっただろう。
「魔力車なんて初めて乗ったけどなんかすごいわね」
「この銃は何用?普通の銃とは見た目が違うけど」
「それは対魔物に対して有効な銃だ」
「ちなみに人間に撃っても多少ダメージははいるぞ」
「まあじきに使うことになる」
「??」
俺とエマは首を傾げた。
「カレド港からギアランドまでの道のりはゴブリンたちの縄張りがあるんだ」
「縄張りはかなり遠回りしないと避けられないから通常ルートだと確実にゴブリンに遭遇する」
「っと、そうこうしてる内においでなすった」
道を塞ぐようにして緑色のゴブリンたちが立ちはだかっていた。
「私がやるわ、銃なんて初めてだし試してみたいわ」
「この引き金を引けばいいのね」
バァァンッ
銃口から鋭い水属性の弾丸が発射され、ゴブリンの肩を貫いた。
ゴブリンたちは慌てて木の陰に隠れて、何やら奇声を発し始めた。
「ちっ、まずいな」
エマは戸惑っていたが、ジーニスは魔力車から飛び降り、木の陰で奇声を発しているゴブリンたちを討伐し始めた。
ジーニスは物凄いスピードですべてのゴブリンを討伐し終えたが、何やら警戒しているようだ。
「ジーニ、、」
ドォォォォォォンッ!!!!!
魔力車の前方に空から飛んできた大きな黒色のゴブリンが立ちはだかった。




