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旅立ち①

この物語は創造されたセカイを舞台に主人公セレンが、もがきながらも強く生きていく物語である。

普段何気なく生きているこの世界だけではなく、宇宙には数知れない未知の世界が広がっていると考えるセレンは、自分の死と、一つの特殊能力により、そのことに気付く。

果たして、セレンはこの世界で何を成すのか、一人の少年が創造されたセカイを相手に奮闘する物語が、今、始まる!!

 俺の名前は優里ゆうり、いや、こっちの世界ではセレン・ノースウェルドという名前を授かり、14年が経った。


 なろう小説でよくある“異世界転生”というやつだ。


 俺は日本でフリーターとしてのんびりと過ごす、どこにでもいる青年だった。

 だが周りとひとつ、違っている事といえば、、余命宣告を受けた青年だというところだ。

 すい臓がん、それが俺をこの異世界へと送った元凶だ。

 あまりにも若すぎる、25にも満たないこの俺が、、


 会社員だった俺は宣告された余命半年を悔いなく過ごすため、辞表を出し、貯金を使って余生を過ごすことにした。

 家族はおばあちゃんただ一人、父親も母親も俺が小学生の頃に病気で他界した。

 今の俺には母方のおばあちゃんだけが唯一の家族であり、唯一の心残りだ、、

 おばあちゃんは齢80だが、体はピンピンしている、けどそれもいつまで持つかどうか。

 俺が死んだら頼れる人は誰も居なくなる、、

 がんの事を伝えた時のおばあちゃんの涙は今でも鮮明に覚えている、普段は涙を見せない人だったからなぁ、、


 とはいえ俺が死ぬのはどうすることもできないし、、老人ホームの準備だけは整えて、俺は余命半年を使ってやりたかった事を全てやることにした。


 ただ、病気は残酷にも余命宣告よりも早い段階で俺の体を蝕んだ。

 実際に死んだのは丁度半年頃だった気はするが、直前の記憶は残っていない。


 気づいた時にはこの中世ヨーロッパ風の異世界に飛ばされた後だった。

 と言っても俺が生前の記憶を完全に取り戻したのはごく最近の事である、それまでは普通にこの異世界でセレン・ノースウェルドとして生活していた。

 記憶を思い出した時も、いきなり、、というわけではなくて、夢で生前の記憶をたびたび見たことにより思い出し、記憶が繋がった、といった感じだ。


 俺は生前から考えていた事があった、、傍から見れば俺のこの状況は異世界転生だが、そもそも地球だけが生命が活動できる星ってのには納得がいかなかった。

 宇宙は広いし、地球の始まりや生命の誕生はきっと“創造”から始まっているはずだ。

 少し考えたら誰でもわかる、0から1は作れない、何もない空間に何かを生み出す事はできないのだから、、


 つまり、俺が言いたいのは地球以外にも生命が宿る星は無限にあって、そこには魔力が当たり前に存在していて、魔法が当たり前の星だってあるはずだという事だ。

 そして俺の仮説は生前の記憶を取り戻したことにより、確信へと変わった。


 とまぁこんな感じで俺の異世界転生事情を整理してはみたけれど、どこかの主人公のように魔力が並外れて高いわけでも、特別な魔法が使えるわけでもない、、この世界では一般的な人間だ。

 ただひとつ、いや、今のところこんな凡人の俺でも他と違う特殊能力がある、、


 それは、、


 “前世の記憶がある”ということだ!!!!!!!!!!!


 、、、わかってるよ!!!それがこの異世界においてなんの役にも立たないことくらい!!!!!


 現実は甘くはない、異世界転生なんてジャンルで語るからこんなみじめな気持ちになるんだ、たまたま転生した先が魔法が使える世界だった、それだけだ。

 ロマンがあるだけいいじゃないか、仮にゴキブリに転生していたとしたらどうだ、嫌だろう、、

 俺は記憶が完全に戻ってからは自分にそう言い聞かせてきた。


 イッシュ王国の城下町にある小さな家で、父シュナイドと母オキシーの長男として生まれた俺は、それはもう愛情深く育った。

 父は昔王国の衛兵団隊長を務めていた時期があり、俺に小さいころから剣術と魔法を教えてくれた。

 その甲斐あって俺の世代だと剣術、魔法レベルはそれなりに高いほうだ。

 剣術や魔法にはそれぞれ位が存在し、上からSS級、S級、A級、B級、C級、D級があり、俺はどちらもB級までなら使いこなせるようになった。

 俺の世代で一番多いのはC級で、そのほとんどがどちらか片方だけ秀でているパターンが多い。

 例えば剣術はC級だが魔法はD級、またはその逆ってのが大半だ。


 この世界では8歳で学校に入学し、14の歳に卒業、それぞれの道を歩むことになる。

 つまり日本に例えると、14で社会人になる、ということだ。

 かなり早く感じるな、、

 基本はみな男であれば衛兵団や親の跡取り、女は縁談の後、家庭に入るのがこの世界では一般的だ。

 ただ、女でも剣術や魔法の位が高い者は衛兵団や“冒険者”になる者もいる。

 そして冒険者になる者はみなギルドに登録するのだが、登録するにあたって試験が実施される。

 その試験が行われるのは学校を卒業した翌日とこの世界では決まっている、冒険者試験自体は年に数回行っているのだが、最も早く冒険者になれる者はみな、学校を卒業した翌日なのである。

 冒険者はこの世界ではかなり稼げる職業だが、それと同時に最も危険な職業だ、それ故冒険者には年齢制限が設けられ、14歳になるまで試験は受けられない。


 長かった、、ここまで凄く長かったが、、


 今日!!この雲一つない晴天の今日が試験当日なのである!!


 試験自体に不安はない、俺のレベルであれば父さんも合格出来だろうとのことだった。


「へへっ、、」


 今日という日の嬉しさに思わず笑いが止まらなかった。すると、、


「セレン、さっきから独り言をブツブツ唱えてると思ったら次は不気味に笑いやがって、きもいぞ」


 そう声をかけてきたのは幼いころからの親友、ジャックだった。


「きもいは言いすぎだろ!てかさっきの声に出てたのか、、」


 ジャックには前世の記憶や転生の事も話していて、剣術や魔法の鍛錬も一緒にしてきた仲だ。

 ただこいつは悔しいけど本物の天才で、剣術は俺と同等だが、魔法はA級相当の実力者で、すでに名のある冒険者ギルドからのスカウトがいくつもきている。


「お前が今日を楽しみにしてきたのは知ってるけどよ、油断してると足元すくわれるぜ」


「あぁ、悪い、気引き締めていこう」


「そんじゃ会場行こうぜ」


 そう言ってジャックは会場を指差した。

 会場はドームのような形をしており、優に1万人は入れるイッシュ王国で最も大きい会場だ。


「試験前にトイレ行ってくるわ」


「お、なになに!緊張してきた?」


「ちがうよ!!万全を期して挑みたいだけ、先会場行っといて」


 俺はそう言ってトイレで用を足し、受付を済ませ、万全の状態で会場へと向かった。

 高鳴る鼓動、高揚感、あるいは期待を胸に抱いて、、




 だが、そんな“もの”は一瞬にして打ち砕かれた




 会場の中に入り、扉を開けた先に映った光景は俺を絶望へ突き落した。


 そこには試験に来たであろう数百人が血まみれで倒れており、会場の真ん中には満身創痍のジャックと黒い仮面をつけた謎の大男が立っていた、、、

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