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君が作った色のある世界  作者: 美桜四季、葉桜 KON
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君が作った色のある世界

こんにちは葉桜 KONです!この作品は美桜四季さんとの合作です「みおしき」と読むそうです。四季さんはわたくしの、友人にあたる人です発想豊かでわたくしよりも情景描写が上手なので一緒に描かないかと誘ってみたところ快く、描いてくれました。四季さんのお姉さんが視力が低く上手く見えないそうです。お姉さんもこの小説に乗り気で承諾してくださいましたのでインタビューした後にこの小説を書くことにしました。四季さんは小説家になろうのアカウントを持っていないということなので、わたくしのほうからアップさせていただきます。どうぞお楽しみください!

君が作った色のある世界


僕は君を見ている

君は僕を見ている

君には僕がどう映っているのだろう。君が望んだ僕だろうか。それとも僕が作っている自分だろうか。

君はその虹色の目で何を見てきて、何を見ているのだろう。

僕はどこに生きたいのだろう。


第一章 僕の見ている世界

 

 僕は、常に人の目を気にしている。僕はどう見られているのか。僕はどう思われているか。

 僕は、電車に乗るのが苦手だ。人が多く、みんなが僕を見ている。

 目立たないように生きなければならない。


 「あっすみません…」

満員電車は、人との接触が多い。僕が行く学校の最寄駅、葉桜駅に着いたら、逃げ出すようにこの箱から出る。落ち着いた和風な建造で嫌いな建物ではないがそんなことより、僕は人の視線から逃げる。

階段を上り、何か物を落とすような音がかすかに聞こえたが、おそらく僕ではないだろう。

 改札を出ると、階段の中腹あたりで少女の声が掛かる。僕に話しかけてるのか?いや違うよな

「あのすみません、これ落としましたよ。」

その声はどうやら改札奥の階段の下から聞こえてくる、僕に向かって。

 振り返ると、そこには春の暖かな陽気のように柔らかい声音の持ち主が、走って僕に少し上向きに目線を向け近づいてくる。

上目遣いをする目を見ると盲目者を補助するためのアグズリアリィアイ(人工補助眼球)が見られる。

肩ほどの髪を耳にかけ、僕の目をじっと見つめる。僕は少し恥ずかしくて、少し下を見る。

それでも、その一瞬で虹色の宝石のような目は僕の視界を独占した。

「あっどうもすみません…」

だがすぐに我に返り、お礼を言いすぐにまた目線を下に落としその場を早急に去ろうとした。

 しかし、彼女の声はまだ僕の耳に入り僕を呼び止めた。

「待って、待って。同じ学校だよね、一緒にいこ」

僕はほんの一瞬戸惑いの表情を見せてしまっただろう。正直初対面の人とうまく接することができるか不安だが 、

「えっ…」

かすれるような声を漏らしてしまった。確かに私服だ、このあたりで私服の高校は僕の行く高専しかない。同じ学校の生徒のようだ。僕は、気に触れないように彼女の要望を飲み学校に一緒に行くことにした。

 道中僕は、彼女とほぼ初対面で何を話していいかわからず、長い沈黙の中気まずい空気でいっぱいだった。僕も何もしゃべらないし、彼女も何もしゃべらない。

 その時その沈黙を、彼女が破った。高く美しく響いた声は沈黙の空気を一瞬にして消し去った。

「ねぇ私この道初めてだから、危ないところとかあったら教えてね」

 また僕は一瞬戸惑ったが、アグズリアリィアイをつけているとはいえ、完全に視力が回復してはいないのだろう。とはいえ、おそらく視力は僕よりもいいはず。でも、なんか視野が狭いとかなんとか…

「分かりました。お伝えします」

彼女は、微笑み

「固い固い。ため口でいいよ。ごめんね迷惑かけて」

 僕はこうやっていきなり距離を詰めてくる人はあまり得意ではない。だが彼女のことは嫌いになれない。なぜだろう彼女は、何か特別なものでもあるのだろうか。

否、そんなものは科学的に存在しないだろう。しかしここも彼女の要望に応えよう、そうすれば簡単に事が済むのだから。

「うん、わかったよ。迷惑なんかじゃないから安心して。」

僕は彼女の要望に応えれればそれでいい。できるだけ事を荒げないように。

 

 その時ふと交差点の左から車のエンジン音が聞こえてくる。

「左から車来るかも、気を付けて」

彼女はとても驚いた表情で僕を上目遣いで見てくる。身長差があるので仕方ないがそのあざとさに思わず、笑みがこぼれそうになる。しかし我慢だ、それではただのキモい奴だ。事を荒げないことが大切。それよりも彼女は驚きを隠せないようだ

「なんでわかったの。すごいね」

当然の質問だろう。僕は昔からほかの人よりも多少聴力が高いらしい。中学生の時、気持ち悪がられた記憶がある。僕の陰口を聞いてしまったのだ。そこでも事を荒げないようにしたが失敗したな。

 えーとなんだっけ。あぁそうだ今はこの子と話をしていたのだ。

「すこしだけ、耳がいいだけだよ」

その車は信号のない横断歩道のある道をほぼ減速せずに走っていった。

「もう危ないなぁ、君がいなかったら死んじゃってたかも。ありがと」

彼女は、笑顔を浮かべ僕の目をまっすぐと見上げた。僕よりも15㎝ほど身長が低いだろうか。彩芽は僕のことを見上げて話すので、上目遣いの目は僕の思春期の心をもてあそぶ。まずい笑みがこぼれる。

僕は気恥ずかしくて、目をそらして「そんなことないよ大げさだって」と小さくつぶやく。

 駅から学校まではあまり近いとは言えない。その道中たくさんの交差点などがある。そのため、この子にとっては確かに危険な個所が複数ある。いや、この子だけに限らない僕もだ。また話がそれてしまった、よくない。

「ねぇ何組なの」

確かに距離を詰めるのであれば最適な質問だろう。同じクラスなら、距離を詰めてくるだろうし、違うクラスならほどほどの距離にするだろうから。

「5組だよ、君は」

当然質問をされたのだ、質問を返すのはマナーというものになるだろう。じゃないとまるで無関心だと思われてしまう。そうすると彼女の気を悪くするかもしれない。

 それにしても、この子は話をするとき、ずっと僕の目を見て話す。美しい目だが、僕も思春期真っ只中の男子だ。まっすぐとみられとさすがに笑みがこぼれる。登校中僕はニコニコだった。この言葉だけ聞くとキモいな、でも男なら仕方ないことだろう。

「私も5組だよ。そういえば名前知らないね。私は、ゆうにじあやめっていうの君は?」

「僕はきさらぎゆうとだよ。」

あやめ、たくさんいる名前だが綺麗な名前ではある。この子は悪い子ではない、仲良くして問題はないだろう。しかし、この子はどこかで見た覚えがあるが、はっきりとは思い出せない。

 といろいろ考えているうちに、僕らはもう校門の前にいた。彼女と話をしていると時間が短くなったように感じる。まだ少し肌寒い空気が流れている季節、教室へと歩みを進める。校門をすぎちょっとした階段を登る途中も冷たい空気が上から降ってくる。でも、あやめとの会話はその肌寒い空気を温かくした。周りまで温かくしてしまうような明るい声だ。

「かっこいい名前だね後で漢字教えて」

「うん、あやめも教えて」

校舎の前は桜の花びらでいっぱいだった。でもそんなきれいな景色も横目に、僕はあやめの目を見ていた。さっきまで恥ずかしくて見れなかったのに、その目には引き寄せる魅力のようなものがある。僕はずっと彩芽の目を見てしまっていた。

 

 僕らの教室は三階にある。階段を上る音が高く響く。教室にはまだ誰も来ておらず、二人だけだった。静かな教室だ。新しい環境に少し気が重いが何とかやっていけそうだ。

「あっそうだ漢字。このノートに書いて名前、私の名前も書いたから。」

そこには「夕虹彩芽」と書かれていた。彼女の目の色にぴったりの名前だと思った。

だが彼女の気に触れるかもしれないから、発言は控える。

「僕はこう書くんだ」

「如月優音、いい名前じゃん、それにいい声してるし。」

 僕はまた気恥ずかしくなって、下を向いた。彩芽はすぐにそういうことを言う。もちろん悪い気はしないが、少し控えてほしい。それに声を褒められたのは初めてだ。

 そんな話をしていると、廊下のほうから足音が近づいてくる。男の人の足音だ。荒々しい、足音だが先生ではないだろう。まだ若い。

 僕は彩芽と話していると、色々と勘違いされると思いとっさに席を立った。

「おはっよー初めまして、すどうけんいちでーす、よろしく。あれっもしかしてそれアグズリアリィアイじゃね、すげえ初めて見た。綺麗だね」

教室に、背丈は僕より大きいだろうか、髪型から見てチャラそうな男が入ってきた。もしかしてこいつか?入学式早々に髪を染めてたやつってのは。さすがに先輩でもここまでのやつはいないだろう。

 僕はこういう人は苦手だ。それに彩芽もそんなに踏み込んでほしくない話題なのではないかと少し怒りさえ覚えた。僕は自分に矛先が向く前にこの場から逃げ出そうとしたが、彩芽がそれを許さなかった。彩芽はけんいちと名乗る男に声をかけたのだ。

「おはよう、けんいちくん。私は彩芽こっちは優音だよ」

彩芽は僕が書いたノートを見せた。

それにしても、なんで彩芽が僕の紹介をする。やめてほしい。あまりこういう人とはかかわりを持ちたくないのに。けんいちも名前を書いた。

須藤賢一

「優音。よろしくな仲良くやろうぜ」

 僕は、気に触れるのは嫌なので仕方なくだが仲良くしてやろう。という謎の上から目線になってしまった。でも話してみた感じ悪そうなやつではなさそうだ。少しくらいならいいかな。

「うん、よろしく…」

その後も続々とクラスメイトが入ってくるが僕は、みんなが僕を見ていてとても怖く感じる。

 担任の先生も教室に入ってきた。足音からして女性だろう、みんなの視線が怖くて顔を上げることができなかった。でも、少しだけ頑張ってみることにするか…

「おはようございます。皆さんは今日から生徒ではなく学生になりました。高校生ではなく高専生です。これからよろしくお願いいたします」

 僕は高校受験ではなく高専を受験した。高専は高校と違って高等教育機関であり、五年制だ。これ以上話すと長くなるから、ここらへんでやめておくが。要するに理系の学校だ。

 先生は黒板に自分の名前を書き始めた音が聞こえてくる。頑張って重たい顔を上げて黒板を見る。

「私の名前は、高梨喜梨華(たかなしきりか)といいます。この字ね、難しくていつも書道の時間に苦労した名前なんですよね。でも好きな漢字でもあります。私は皆さんに国語を教えることになります。皆さんよろしくお願いします。」

 丁寧で、感じのいい先生だ。もし先生ガチャというものがあるとするならば、当たりだろう。


 この学校は、入学式の次の日から普通に一限目から授業があり中学校の復習とはいえ、応用がおおく難しい内容だった。特に高専ということもあり、数学と化学、物理が難しい。授業の内容が右から左へと流れていった。こんな風で大丈夫だろうか。テスト赤点取りそうだなぁ


 一、二時限目の数学と三、四時限目の化学が終わり、昼休みになってみんなはグループでご飯を食べる中僕は一人で食べようとした。そのほうが気楽だからな。誰かと会話しながら食事するなんてこと、僕には不可能だおそらく気に触れるようなことを言ってしまうかもしれないし、そんな器用なこと僕には難しいだろうしな。しかし僕の下に落とした視線に一人の影が入る。髪が長い、女の子だな。

「ねぇ一緒に食べない」

その声は振り返らずともわかる。彩芽だ。ここは穏便に済ませたいのでどうしようか迷ったが、ほかの人も誘えば、きっと勘違いされることもないだろうし、彩芽の気分も悪くはさせないだろう。あまり誘いたくはないが。さっき話しかけてきたあいつを誘うか。

「なら賢一君も誘っていいかな」

彩芽は笑顔で快く

「いいよ、みんなで食べよ」

 僕は、自分から人に声をかけるということをあまりしたことがないので、なんて声をかけていいのかわからなかった。

「あっあの…」

「んっ、なにどうした?」

 僕は何をしゃべったらいいのかわからなくなってしまった。だが、高く響く声が後ろから自分の背中を突き抜け、前にいる賢一へと届く。

「賢一君も一緒に食べない」

 そうだ、まさしく僕が言いたかったのはその言葉だ。

 僕はそんな言葉さえも言えないのかと、自分の無力さを実感した。

「おお、いいな一緒に食おうぜ。ええと…何だっけ?わり名前覚えるの苦手なんだ」

「彩芽だよ。覚えるの難しいよね。さ、行こう」

「あっ優音です。如月でもいいよ」

 僕は、とても久しぶりに二人以上で食事をした。相変わらず会話は苦手だが、いつもよりも味があり、色のある食事に感じた。食べ物は、カラフルなんだなぁと思い、賢一の弁当を見ると抹茶色だった


下校の時刻になり、僕たちは校門に向かう。

「如月って、いい苗字だよな。かっこいいし。」

「うん私もそう思う」

 僕は、初めて名前について褒められた。うれしいけど少し恥ずかしい。

「そうかな…自分では何とも思わないけど」

 

 春の風に吹かれ、散りゆく桜を見る。朝は何も思わなかったが春だなと思い、暖かさを感じた。校門を出たところの桜を見る。桜の木がなければ、僕は春をここまで感じることはないだろう。

「初回から、難しかったね授業」

「そうだよな、俺寝そうだったもん」

僕は微笑みながら、二人の話を聞くだけだ。僕は何も話さなくてもいい、彩芽は明るくていいな。僕はずっとこんなんで、自分のことが嫌いだ。

 通学路というものは、不思議なものだ。行きでは全く目につかないものが、帰りではしっかりと僕の目に入ってくる。こんなにも桜が咲いているのか。ここは桜が本当に多く植林されている。

「ねぇあれって神社じゃない。行ってみようよ」

 彩芽の指さした先は、かなり見上げた山の上にある、町の真ん中に高台のように立つ山の上のほうに夕日に当てられ、神々しく輝いている神社の本殿が見える。小さいながらも、凛々しいその佇まいに僕は目を引かれた。

「おぉ、俺神社好きなんだよ行こうぜ」

 僕も神社は嫌いではない。

 雲の間から抜ける太陽の光によって照らされた場所の真下まで来る、そこには、町のすべてを見下ろす景色が広がっていた。僕は、そこに神社があることさえ忘れてその景色を見ていた。階段を上ってきた疲れも忘れて。

 おそらく僕は、ここまで目を奪われるものにたった一日で出会ったのは、初めてだ。

「あれっ…」

 僕は、なぜだろう。涙を流していた。

 賢一が僕のほうを見たが、気が利くやつでよかった。何も言わずまたその美景に目を落とした。彩芽も気が付いていないようだ。僕は、ごしごしと目をこすって涙をふく。

 すぐ真下には、今上ってきた階段と住宅街が見える。少し先に市役所と、ファンクションタワーが立っている。ファンクションタワーは、この県で最高の高さを誇る展望台兼電波塔だ。

 全面ガラス張りの市役所には、人が見える。きっとあっちからは僕たちのことは見えていないのだろう。彼らは忙しく動いていて、窓の外を見る暇などないのだろう。

「ねぇ市役所が見える。きっとあの人たちは私たちなんて気にもかけないんだよね」

僕は小さくうなずき「そうだね」と小さくつぶやく。ここに吹く強く暖かい風にかき消されてしまうほどに。でもしっかりと彩芽には届いた。

「そりゃぁな、あの人たちなんて自分のことで精一杯すぎて、自分しか見ちゃいねえよ」

 僕はまた、涙が出そうになる。でも後ろから肩をたたかれれたような感覚に、とっさに後ろを振り返る。そこには忘れかけていた神社の本堂があった。本来こっちが目的で最初登ったはずなのに。でもその本堂は、静かに立っていた。でも気配を感じて、「忘れないで」という気持ちを感じた。

まるで、景色のほうが見てほしいと言わんばかりの佇まいだった。でも、自分の存在を静かに知らせている。それにしても、この神社は綺麗だ。誰かが清掃とかしているのかな。

「あぁこっちが本題だったな。ごめんよ忘れてなかったぜ神社さん」

その神社は、だいぶ古くツタがまとわりついていた。つばめの巣もある。それでも、汚れはない。そこのお賽銭箱には「虹下神社」と書かれていた。僕はあいにく小銭を持ち合わせていなかったので、お賽銭はできなかったが手を合わせた。お願い事はしないほうがいいと聞いたことがある

『いままで見守ってくれてありがとう』

と心の中でいい、つるしてある綱を握り鐘を鳴らした。高く、遠くまで響く音だ。

 僕と賢一は、神社を後にしようとしたが彩芽は違う。

「ねぇどこ行くの。神社と言ったら裏側まで見るのが鉄則じゃん」

僕と賢一は二人で同時に振り向いて

「そうなの」

と二人同時に言った。三人で笑った。他愛ない会話だ。

あぁ僕ってこんなに涙もろかったけなぁ。

「どうしたの」

とうとう彩芽にも気づかれた。賢一は男の気持ちというのがわかってくれたが、彩芽は優しさでこれを言ってくれている。少し恥ずかしかったが、なぜだろうここでは素直になれた。

「いや、こうやってみんなで話したり気持ちを共有するのが嬉しくてさ」

彩芽は微笑み歩きだした。

「そっか。そうだよね嬉しいよね。うん嬉しい。私も嬉しい」

賢一は、笑ったでも声は出さずに。僕も笑った。

 

 神社本殿の裏側に来るとそちらにも絶景が広がっていた。こちらは東側なので海まで見える。

「ねっ、裏側まで見るのが鉄則だって言ったでしょ、今度海にも行きたいな」

 近くには学校が見える。そこにはまだ残っている人たちが見えるが、彼らもまた同様に僕たちなんて気にしちゃいない。

「私たちは、いろいろな人が見えるけどそれは、見ようと思ってるから見てるだけ。みんな自分がどう見られてるのかって、気にして外を見ようともしないんだよ」

 その言葉は僕の胸に深く刺さった。そっか、僕は何でこんなことを忘れていたのだろう。僕を見ようとする人なんてほとんどいないんだと。

「かっこいいじゃん」

とガラでもない言葉を言ってしまったが。彼女のまっすぐな言葉にそれほどの感銘を受けた。

「帰ろっか。暗くなっちゃうし、電車人混んじゃうし。私満員電車嫌いなんだよね」

「俺も嫌いだぜ、暑苦しくてさ」

「僕も得意ではないかな」

 こうやって何気ないことを共有することそれが僕には楽しい。

階段を下っていると、天命高校の制服を着た人が登ってきた。二人で手をつないでいる。

「こんにちは」

彩芽はすぐに誰にでも話しかける。まぁそのおかげで僕は仲良くなれたわけだけど。

「ねぇ今の人たちカップルさんかな、いいねぇ青春だねぇ」

やっぱり女の子はこういう話好きだよな、カップルさんだろう手つないでいたし。


その時、ふと僕は、ある記憶がよみがえる。忘れていた大事な思い出を。


第一の記憶 僕の記憶

 

 今日は家族みんなでキャンプに行く日だ。

「キャンプ楽しみだね、優音」

「そうだね、キャンプファイヤーとかできるかな」

車が走る峠道。景色を見ながら僕は、車の中で退屈していた。

「おっ、見えた見えたもうすぐ着くぞ。」

峠道の森の木々が晴れ、そこには一面に広がる草原と複数のカラフルなテントが見える。

「おー綺麗だね優音」

僕は、この景色に目を奪われた。姉から声をかけられたことにも気が付かないほどに。

「ついたぞ、気を付けて降りろよ」

僕は、久々に地に足を付けた。いつもとは違う地面に感じる。同じ地球のはずなのに、全く違う感覚だ。風の音、草木の香り、足の裏の感覚、自然そのものともいえる景色。

 僕は五感のすべてを癒されるような感覚だった。思わず笑みがこみあげてくるほどだった。

「優音、そろそろバーベキュー始めるぞ、準備手伝ってくれ」

バーべキュー台を出し、具材を串にさす。着火剤を使って火をおこす。

あたりはもうすでに暗くなってきており、バーベキューの火の明るさと暖かさの恩恵がひしひしと感じられた。普段電気のあるところで生活していると、夜でも明るいのが当たり前だったが今は日の明るさしかない、普通の夜はなんて暗いのだろう。

もう完全に日が落ち、星が見え始めてきた。どこを見ても自然だ。

「なぁどうだ、優音。来てよかっただろ。俺はこの自然に囲まれるのが好きなんだよ」

 あぁそうだ、3時間くらい前の僕をぶん殴ってやりたい。何が家でゲームしているほうが楽しいだ。そんなことあるもんか。ゲームでは到底この自然の美しさに勝てやしない。

「うん、そうだねきれいだね」

 僕は怒りと同時に、悲しみも出てきた。こんなに素晴らしいものが今日しか体験できないのかと思うと、悲しくなってくる。でも楽しいのは間違いない。

「こんな体験が今日しかできないのは残念だな…」

そういうと父は大きな声で笑い。

「何言ってるんだ、自然なんていつでもどこにでもあるじゃないか。それにまた来ればいいさ」

その言葉に、今感じていた悲しみが吹き飛んだ。確かに、僕の家の裏にも山はあるじゃないか。

「少し歩いてくる」

「おう、気をつけろよ。暗いし野生動物もいるかもしれないからな」

 少し歩くだけで、かなり暗く感じる。さっきまでは焚火があったからかなり明るかったが、そこを少し離れるだけで足元くらいしか見えない明るさだ。

一応ライトは持ってきたが、あまり使わずに行きたい。なぜなら自然を感じながら行きたいからだ。

しかしさすがに暗すぎる。ライトをつけると、少し先に丘らしきものが見える。

「おおー」

思わず声が漏れる。林を抜け、開けた場所に出るとそこには大きな星空が広がっていた。

星空をしっかりと見たのは何年ぶりだろうか。

少し寝転がってみる。すごいな、なんだろう…さっきよりも自然を感じる。人がいないからかな。

目を瞑ってみる。さっきよりも自然の声が聞こえてくる。風、草木、虫それらの声が僕の耳に入ってくる。そして目を開けると、目の前に星の輝きが目に入る。

背中から感じる草の感触は、柔らかくて、温かい。


そろそろ帰ろうか、林を抜けて。みんなが待っているテントが見える。

いいにおいがする。きっと肉が焼けているのだろう。さぁ僕も食べに行こう。





 


誤字脱字があるかもしれません!一応こちらでも確認していますが、抜けているかもしれません。その時は遠慮なくご指摘ください!


批評も受け付けております。しかしあくまで批評なので、誹謗中傷はやめてください。


感想、メッセージも受け付けております。コメントお待ちしております!(返信は遅れます。すみません)


葉桜 KON

この小説は、フィクションですが、四季さんのお姉さんの気持ちが少しだけでも伝えられたらいいなと思っています。

美桜四季

葉桜先生と知り合いて非常に良かったです。このように少しでも、姉のような視力弱者を知っていただけると幸いです。

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