女騎士ベリーと再開のキグルン
飛ばされたキグルンを探す為、街道から外れた森の方を歩いていると何処からか掛け声が聞こえてきた。
「何かしら…?あっちの方から聞こえたわね。」
掛け声のした方へ進んでいくと、モンスターと戦う騎士の姿が見えた。
『クローベア…【ステージⅡ】のモンスターですね。あの人は大丈夫でしょうか。』
心配するプルンデスと共に遠くから様子を伺っていると
「ガァーっ!」
クローベアは大きな爪で騎士を切り裂こうとした。しかし騎士は軽くモンスターの攻撃を躱し、反撃を行った。
「バッドエンド!」
素早く剣を振り、騎士はクローベアをいとも簡単に倒してしまった。
「ん…?」
こちらに気づいた騎士はゆっくりと向かってきた。
「はじめまして。こんな森の中で何をしているのかな?小さいお嬢さん?」
騎士はヘルムから見える優しい目でこちらを見つめ問いかけてきた。
「あ…えと…友達を探してるんです。着ぐるみを着た子を…。」
モンスターと仲良くなった事を一般の人に知られるといけない為、どこかぎこちない感じになってしまった。
「ふーん…着ぐるみねぇ…。待てよ…その子はもしかして…ちょっとついてきてくれないか?」
騎士はそう言うと私をお姫様だっこし、森の奥へ歩き出した。
「きゃっ!?何を!?」
私は焦って何がなんだか分からなくなった。
「おっと失礼。お嬢さんが可愛かったものでね。」
てへっ…と、言いながら騎士は、私を抱きかかえたままどんどん進んで行く。…仕留めたクローベアを背負いながら。
しばらく騎士が歩いていると木造の小屋が見えた。そこには、見覚えのある姿もあった。
「あ!ご主人様!」
そう言ってトコトコと歩いてきたのは、間違いなくキグルンだった。
「やっぱり予想通りだったみたいだね。お嬢さんが探している友達はこのキグルンだろうと思ったから連れてきたのさ。」
騎士は私を優しく降ろしクスクスと笑っていた。
「彼は数時間程前にカブトグモの巣に引っかかってもがいていたんだ。私はカブトグモを仕留めて彼を助け、ご主人様とはぐれてしまったと泣きながら言っていたから見つかるまで私の家で休ませてあげていたんだ。」
騎士はそう言いながらクローベアの肉を切り分けている。
『カブトグモ…【ステージⅡ】のモンスターで、腹部に麻痺毒を持ち、吐き出す糸は鉄並みに硬いとされている巨大な虫のモンスターですね…。それをいともたやすく倒せるとは…この騎士は只者ではありませんね…。』
プルンデスは私にそう言うとキグルンを抱きしめていた。
「あの…!私はアカネと言います。騎士さんのお名前は何でしょうか?」
きれいにクローベアを肉、骨、皮へ加工していた騎士に私は問いかけた。
「私の名前?私はベリーって言うんだ。」
騎士は自らをベリーと名乗り、騎士の作法をした。
「かつてはこの国から遠く離れたガーリー帝国に所属する乙女戦士団の副団長をやっていたんだがね…嫉妬した仲間に裏切りの汚名を着せられてこの国へ追放されたんだ。」
ベリーは肉や野菜を煮込みながらそう話しているが、相当辛かったに違いない。私が考え込んでいると…
「さぁできたよ。キグルンも…お嬢さんも…そこの精霊さんとドラゴンも食べていきな。」
そう言ってベリーは、私に木製の器にたっぷり入った煮込み料理をスプーンと一緒に差し出した。
「あ…ありがとうございます。」
「わーい!ボク、ベリーさんのお料理大好き!」
『これは…何と美味しそうな…!(ジュルリ)』
「キシャーッ!」
各々がベリーから渡された料理を口に運び、キグルンはペロリと平らげ…プルンデスは美味しさに驚き…私は優しい温かさに思わず笑顔になってしまった。
「はっはっは!私の料理はどうだい?乙女戦士団だった頃はあまり料理は得意じゃなかったんだが…追放されて2年、こんなに上手に作れるようになったんだ。」
キグルンとプルンデスは猛スピードで平らげ、おかわりを要求しまくっている。アンタ達はもう少し遠慮というものを知らないのか、と言いたかったが、私も人(モンスターと精霊)の事を言えなかった。メタルはお腹がいっぱいになり眠ってしまった。
しばらくして鍋が空っぽになった頃、ベリーと楽しくお喋りをした。
「今日はもう暗いから私の家に泊まっていくといい。明日の朝に街道まで送るよ。」
私達はお言葉に甘えることにして家にお邪魔させてもらった。小屋の中はほんのり甘いような香りと、優しい雰囲気に包まれていた。
「お風呂は沸かしてあるから、良かったら一緒に入るかい?」
ベリーはそう言って私をお風呂場へ連行した。プルンデスは水魔法で、キグルンを洗うらしい。
ベリーは鎧をカチャカチャと音をたてながら脱いでいく。長い金色の髪を揺らしながら鎧の下の服も脱いでいく。私も服を脱ぎ、お互い何も纏わぬ生まれたままの姿となった。
「狭いと思うが、私も人肌が恋しかったものでね。お嬢さんを洗わせてもらうよ。」
ベリーの優しくも大きな手で全身をゴシゴシされ私は泡まみれになってゆく。密着したベリーの大きな胸が背中に当たり…同性のはずなのに少しドキドキしてしまう。
「ふふっ…緊張しているのかい?しかし、懐かしいなぁ…お嬢さんをこうして洗っていると娘を思い出すよ。」
詳しく話を聞くとベリーは乙女戦士団だった頃は娘と一緒に暮らし、育児と副団長の仕事を大変だと思いながらも充実した毎日を送っていたらしい。しかし汚名を着せられて国を追放された時に娘は国の孤児院へ引き渡され、離れ離れになってしまったという…。
「ひどい…そんな事があったなんて。」
私は怒りを露わにしながらもベリーに頭を撫でられながら湯船に浸かっていた。
「娘はきっと元気にしてる。私はそう思いながら毎日ここで待っているんだ。大人になった娘はきっと冒険者になるだろうからね。なにせあの子は…元気いっぱいでおてんばだからね。」
笑いながらも悲しい顔をしているベリーに私は抱きつくことしかできなかった。
ベリーと私はお風呂から出て私の身体をタオルで拭いていく。ベリーからいくつか服を着せられ、私は可愛く仕上がっていた。
「良く似合ってるよ。私の娘のお下がりだが、お嬢さんの服が乾くまで、それを着ていてくれ。」
キグルンとメタルが戯れるのを見ながら、ベリーの淹れてくれたホットミルクを飲む。
『こんなに可愛くなったアカネちゃん…抱きしめたくなっちゃう…!…ハッ!いけない!私ったら…アカネちゃんが可愛すぎるあまり…にへへ…。』
やっぱりプルンデスは少し怖い。
「ベッドは1つしか無いが…良ければ使ってくれ。私は食器を洗ってから床で寝るよ。」
ベリーはホットミルクを飲み終えた私からマグカップを回収し、そしてお姫様だっこをしてベッドへ運ぶ。寝かせて布団をかけてくれた。そして優しく微笑んだ。
「お嬢さんは明日からまた旅へ出るんだろう?ここを自分の家だと思っていつでも帰ってきていいからね。」
ベリーはそう言ってキッチンへ向かっていった。キグルンとメタルは私のそばにやってきて、眠ってしまった。プルンデスも私の心へ戻っていった。
「むにゃむにゃ…お休みなさい…。」
私はそう言ってゆっくりと優しい眠りについた。




