盗賊と卵
ついてきたドラキグルンと旅をしていると、私は銀色に輝く何かを見つけた。
「あら?これは何かしら…?」
私はそれを拾い上げてじっと見つめていた。すると…
『これは…モンスターの卵ね。』
プルンデスが出てきて教えてくれた。どうやら私が見つけた銀色の何かはモンスターの卵らしい。
「ボク、知ってるよ。この卵の名前はクロンエッグで、機械系のモンスターが生まれるって。」
ドラキグルンはそう言って卵をじっと見つめている。
「そうなのね。ふーん…。でも、どうしてこんな街道の外れに卵が…?」
『見たところ、この卵には親が居ないみたい。…あっ。』
プルンデスが街道の外れの先にある森に目をやると、無惨に切り刻まれたモンスターの亡骸が転がっていた。
「親モンスターが、最後の力をふりしぼってこの卵を守ったんだろう…。」
ドラキグルンがそう言った途端、怪しい男達が近づいてきた。
「おぅ!そこの嬢ちゃん。その卵をよこしな!渡さなければ、痛い目に遭ってもらうぜ?」
「その卵を売っぱらって大儲けするんだ!」
「大人しく渡したほうが身のためだぜ?」
どうやら盗賊達から卵を守って、親モンスターは命を落としてしまったようだ。
「誰がアンタ達に渡すもんですか!この卵は、私が守る!」
私はそう言って、卵を鞄の中へ入れた。
「へっ!嬢ちゃんと着ぐるみ野郎の2人で何ができるってんだ…」
「パペットファイア!」
盗賊が言い終わる前にドラキグルンが炎の玉を吐き出して盗賊を燃やした。
「アッチィィィィ!」
ドラキグルンの炎に包まれ、盗賊の一人は慌てて転がっている。
「親分に何しやがる!」
怒った盗賊の一人がドラキグルンへ斬りかかるも、着ぐるみに簡単に弾かれていた。
「げぇっ!?何だと!?…ギャァァァ!」
みぞおちをぶん殴られ、盗賊は森の奥へ飛んでいってしまった。
「まとめてかかってきなよ〜。ボク、全員返り討ちにするからね?」
ドラキグルンは挑発し、飛びかかってきた盗賊をまとめて殴り飛ばしていく。
「いい調子ね!ドラキグル…んむっ!?」
私は気がついたら口を塞がれ拘束されていた。
「おい着ぐるみ野郎!動くんじゃねぇぞ。嬢ちゃんの命が惜しかったらなぁ?」
私を拘束したのは、最初にドラキグルンに燃やされた親玉だった!必死に身体をジタバタさせるが…力が強く身動きできない。
「卑怯だぞ!ボクのご主人様を人質に取るなんて!」
ドラキグルンは怒っているが…私が人質に取られている為動けない。
「そらっ!野郎ども!そいつも拘束しろ!」
ドラキグルンも捕まってしまう…絶体絶命だと思ったその時…鞄の中から光が溢れてくる!
「な…なんだ!?この光は…?」
鞄から卵が飛び出し、空中で光を放ちながら割れた。
「クルルル…」
卵から生まれたのは、小さく、銀ピカのボディを持ったドラゴンだった。
「な…!?あ…あれは、まさか!?」
盗賊の親玉が慌てて拘束を緩めた隙をついて、私は足元を蹴り、転ばせた。ドラキグルンも周りの盗賊に透明の液体を発射した。
「レジンブラスター!」
「ぐえっ!」
盗賊達は全員固められて動けなくなった。
「むぐぐ…ぷはっ。さて…ドラキグルン。よろしく。」
「まかせて〜。」
ドラキグルンは固まって動けない盗賊を一人ずつ殴り、空の彼方へ飛ばしていった。
「あ〜れ〜!」
「後少しだったのに〜!」
「カニクリームコロッケ〜!」
最後の一人は食べたいものを叫びながら空へ消えていった。
『ふぅ…やっと抜け出せました。貴女が拘束されると、私も動けなくなるんです。力になれず、申し訳ございません…。』
「大丈夫よプルンデス!気にしないで!それより…この子…。」
卵から生まれたドラゴンは、私にすり寄って甘えている。
『このドラゴンはメカンドラみたいですね。機械の身体を持つという珍しいドラゴンです。』
「でも…何かおかしいわ。自然界のモンスターが、この卵を持つとは思えないの。」
私は疑問に思ったその時…
「分かった…これは託卵だよ!」
ドラキグルンはそう叫んだ。運ばれていたメカンドラの卵が1つだけ落ちて野良のモンスターが拾ったのではないかと言う。
「なるほど…。それなら確かに自然界でメカンドラが見つかるわね。」
『メカンドラは【ステージⅡ】だった気がするんです。それにしても…生まれたては可愛いんですね〜❤』
プルンデスは生まれたてのメカンドラにメロメロだった。
「それで、ご主人様?この子の名前はどうするの?」
ドラキグルンが訪ねてくる。私は少しの間考え込み、閃いた。
「この子の名前は、メタルよ!」
生まれたメカンドラに〔メタル〕と名付け、共に旅をする事にした。仲間が増えてきて私は嬉しくなっていた。