着ぐるみ(?)現る
旅に出た私は、街の外の街道を歩いていた。すると、目の前にドラゴンのような着ぐるみを来た誰かが立っていた。
「貴方はいったい…」
私がそう問いかけると目の前の着ぐるみは自己紹介を始めた。
「ボクはドラキグルン!突然だけど、お金を全て置いていきな!」
ドラキグルンと名乗る着ぐるみは、身ぐるみを剥がそうとしているようだ。その時、プルンデスが慌てた様子で出てきた。
『ドラキグルンだって!?まずいな…。ドラキグルンは【ステージⅢ】のモンスターよ!』
「ステージⅢ?どういう事?」
どうやら【ステージ】とはモンスターの大まかな強さを表すもののようで、Ⅰ〜Ⅴまで存在しているらしい。ステージⅢのモンスターは、かなり強いモンスターの事のようだ。
「えっ?て、事は…あの着ぐるみはモンスターってことなの!?本来この辺には弱いモンスターしか居ないハズなのに…?」
私が慌てていると…
「パペットファイア!」
ドラキグルンがそう叫び、口から炎の玉を放ってきた。
「あぶなっ!ちょっと!なにするのよ!?」
私は怒りながらドラキグルンに問いかける。
「モタモタしてお金を置いていかないからだよ。次は外さないからね〜?」
ドラキグルンがまた、炎を吐く体勢になったその時、プルンデスが耳元で囁いた。
『ねぇ。私の力をここで使うの!私は水の精霊だから、炎を消すなんて容易いわ!』
そうだった。私には頼れる者が居たんだった。
『あいつが炎を放ってきたら…ショットバブルって言うのよ!私の力を使えるからね!』
「パペットファイア!」
ドラキグルンがそう言いながら、2度目の炎の玉を放ってきた。
「…ショットバブル!」
私の手から沢山の水の泡が放たれる。水の泡に触れた炎の玉は瞬く間に消えてしまった。
「何だと…ボクのパペットファイアが、たかがシャボン玉に…。」
『水の精霊の水はね、どんな炎もかき消すのよ!さぁ!反撃の時間だよ!』
プルンデスにそう言われ、私はドラキグルンに斬り掛かった。しかし…ガキンッ!という音と共に剣は弾かれてしまった。
「おっと危ない。ボクの着ぐるみが本物のドラゴンに匹敵するパワーと防御力がある事を忘れていたよ。」
ドラキグルンはわざとらしくそう言った。
「なんですって…?ドラゴンに匹敵するパワーと防御力…?そんなの、私はドラゴンを相手にするのと同じじゃないの!」
私が驚いていると、ドラキグルンは素早く殴りかかってきた。どうやら接近戦に持ち込むようだ。
「パペットファイアがかき消されるなら、直接殴ったほうが早いと思ってね!」
私は何とか剣でガードしようと思ったが…
「ぐっ…」
ドラキグルンのパワーに押し負けてふっ飛ばされてしまった。
「ドラゴンのパワーをその程度の剣で防げるわけないじゃないか。そーれ!もう一発決めてやるよ!」
ふっ飛ばされてよろけていた私の腹部をドラキグルンの腕が狙う。
「(だめだ…これを食らったらもう二度と動けなくなる…!)」
諦めかけたその時、プルンデスがドラキグルンを掴み、放り投げた。
「うあぁぁぁっ!」
ドラキグルンは地面に叩きつけられた。
『貴女は一人じゃない。私がいるんですもの!』
プルンデスはそう言って、私を支えてくれた。
「くっそ〜!ボクがこんな低級冒険者に負けるなんて事あってたまるか!」
そう言いながらドラキグルンはまた、炎を吐き出そうとしてきた。私達は一瞬の隙を逃さなかった。
「ショットバブル!」
沢山の水の泡をドラキグルンの口の中めがけて放った。すると、ドラキグルンの炎は消えさった。
「ぐえっ…あぁっ!ボクの最大火力のパペットファイアが!」
ドラキグルンが慌てていると、プルンデスは私に言った。
『さぁ!今の内に、あいつに向かってウォータークラッシュと叫んで!』
「ウォータークラッシュ!」
私がそう叫ぶと、巨大な水柱が現れ、ドラキグルンに対して一直線に飛んでいった。
「ぐあぁぁぁぁ!」
ドラキグルンは水柱の衝撃に耐えられず吹き飛び、木に叩きつけられた。
「か…完敗…だ。」
そう言ったドラキグルンから小さな欠片のようなものが出てきた。
「あれ?これは…。」
『おぉ!それは魂の欠片!モンスターが力を認めた者にのみ、授けるモノだよ!』
どうやらモンスターとは、力を認めた者にだけ、自らの魂の欠片を渡し、その者に従うという。
「へぇ…じゃあ、私達の力を認めたって事なのね。」
私がそう言うとドラキグルンは静かに頷いた。
「【ステージⅢ】のボクを打ち負かしたんだ。アンタはいずれ、凄い冒険者になるよ。それに…ボクはもう追い剥ぎをやめる。これからはアンタの為に戦うよ。」
ドラキグルンはそう言ってついてきた。
「さっ!改めて、冒険へ出発!」
新たな仲間と共に、私は歩き出した。