勘違い
ネカに案内されて城下町の北門へ到着した私達は、ネカにお礼を言って北門を通り歩いていた。
「それにしても…プルンデスすら分からないこの卵からは一体何が生まれるんだろう?」
私は新しい仲間が加わる事を楽しみに思いつつもどこか不安を覚えていた。
『もしかしたら新種のモンスターが生まれるかもしれませんよ?アカネちゃんが好きな名前を付けられるんですよ。』
プルンデスはワクワクしている様子だが、私はやはり不安を感じていた。
「キシャーッ」
「…?どうしたのメタル?」
メタルが突然警戒したので何事かと見てみると、不気味なモンスターがこちらに近づいてきていた。
『あれは…スカルダーズ!【ステージⅠ】の部下であるミニボーダを引き連れ、群れで活動する【ステージⅡ】です!』
どうやら私達はスカルダーズの縄張りに迷い込んでいたようだ。スカルダーズと大量のミニボーダがこちらを取り囲むように接近してくる。
「ご主人様!どうしよう…?」
「キシャーッ…!」
怯えるドラキグルンと警戒するメタルを横目にプルンデスはニヤリと笑っていた。
『アカネちゃん。このモンスター達は火属性よ。ということは?』
「…ッ!プルンデスの力を使えってことね?」
その通りだと言わんばかりにプルンデスは頷いた。私はそうと決まればやることは一つだと思い、スカルダーズ達に手を向けた。
「ショットバブル!」
沢山の水の泡を放出すると、スカルダーズ達は怯えながら距離をとっていく。どうやら本能的に水は苦手なようだ。
『スカルダーズは火炎骨という骨の身体を持っている為、水には弱いんです!さて!ジャンジャン撃っていきましょう!』
「ショットバブル!」
スカルダーズ達は慌てて逃げていったが、一匹のミニボーダが逃げ遅れて転んでしまった。逃げ遅れたミニボーダは命乞いをするような目でこちらを見つめている。
『群れからはぐれたミニボーダは生き残れないんです。アカネちゃん。この子はどうします?』
私はミニボーダを安心させる為に手を添えた。
「あなたのリーダーを驚かしてごめんね。そして、はぐれさせてしまってごめん。」
私はミニボーダに謝り、群れを追いかける事にした。
「ご主人様!メタルがスカルダーズ達の場所を見つけたって!ここから遠くは離れてないみたいだよ!ついてきて…だって!」
ドラキグルンはそう言ってメタルと共に走り出した。私達はミニボーダを抱えてドラキグルン達を追いかけた。
一方その頃…
「ハァ…ハァ…ドコダココハ…?我輩達ハ一体…ドコヘ向カッテイル!?」
スカルダーズは群れを引き連れて森で迷子になっていた。旅人の荷物を奪う為に取り囲んだら水を放たれ、慌てて逃げてきたのだった。
「マサカ水ヲ操ルトハ…抜カッタワ…。」
「ボス!タイヘンダ!アイツラ…オレタチノコトヲ…オイカケテキテイル!」
部下のミニボーダがあたふたしながらそう言った。スカルダーズは驚きながら、さらに逃げる準備をした。
「オノレ!襲ウツモリダッタ我輩達ヲ許サナイトデモ言ウノカ!未遂ジャナイカ!」
スカルダーズは勘違いをしていた。アカネ達が追いかけているのは、逃げ遅れたミニボーダを群れに送り届ける為であり、復讐のつもりは無いのだ。
「ボス…ドウシマスカ?」
「ウ…ウム。コウナッタラ仕方ナイ!ミニボーダ達ヨ!我輩ハコレヨリ、旅人ヲ捕縛スル!力ヲ合ワセテ立チ向カウノダ!」
こうしてスカルダーズの勘違いによって、アカネ達は争う事が決定した。
そして一方…アカネ達は…
「すっかりご主人様に懐いたね〜。改めて見たら、可愛い奴じゃないか!」
ドラキグルンは走りながらそう言った。メタルは興味無いらしく、まっすぐ飛んでいた。
『アカネちゃんに抱きかかえられてるなんて…羨ましい…!』
プルンデスは嫉妬していた。少々大人げないと思った。
「キッ…!」
メタルがその場ではばたき、動きを止めた。何事かと思い、メタルと同じ方向を見つめると、スカルダーズ達がこちらに向かってきていた。スカルダーズはこちらを見ると、ミニボーダに気づいた。
「オノレ…!人質トハ卑怯ナ…!」
『何言ってるんですか?アカネちゃんは群れからはぐれたこの子を届けに来たんですよ。人質なんてバカバカしい。』
プルンデスはヤレヤレと言いながら否定するが、スカルダーズは話を聞こうとしない。そして、武器を取り出しこちらへ向けた。
「旅人ヨ…オ前達ヲ捕縛サセテモラウゾ!ミニボーダ達ヨ!カカレ!」
「「「「ウォォォォォ!」」」」
沢山のミニボーダがこちらに向かってくる。私達は話を聞いてもらうために、落ち着くまで相手をすることにした。
私達は争うつもりはないんだけどなぁ…。そう思いつつ剣を構えた。




