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決戦!ダルセリア

漆黒のドラゴンとなったダルセリアは鋭い眼光でこちらを見つめている。


「破壊竜に戻った以上お前は我に勝つことなどできぬ。一瞬で消し去ってやろう。ブラックバスティオン!」


ダルセリアの口から禍々しい黒い閃光が放たれる。


「…えっ?」


気づくと私の頬から血が流れていた。私は何が起こったのか分からなかった。


「少し当たったが…今度こそ完全に消し去ってやろう。ブラックバスティオ…ん?」


口から黒い閃光をもう一度放とうとするダルセリア。しかしその時…


『よくも…アカネちゃんのきれいな肌に傷をォォォ!』


怒りに満ち溢れたプルンデスが元の姿に戻り、ダルセリアに飛び掛かった。そして頭をすっぽりと取り込んだ。


『頭を封じればその攻撃はできなくなるはず…!アカネちゃんをこれ以上傷つけさせはしないんです!』


「フン…下級精霊如きが我を止められるとでも?それに…我の技はこれだけではないぞ?ブラッドラジエーター!」


そう言うとダルセリアは私に向かって手をかざした。するとダルセリアの手の平から赤黒い光弾が放たれた。


「ご主人様!危ない!」


キグルンが私を突き飛ばし、光弾にもろに命中してしまった。


「キグルン!大丈夫!?」


私は倒れたキグルンに慌てて駆け寄った。抱きかかえるも、キグルンはピクリとも動かない。


「キュウゥ〜!」


怒ったメタルが空き瓶を投げつけるが、まったく効果が無い。そしてダルセリアはメタルを尻尾で薙ぎ払い、壁までふっとばしてしまった。


「下級精霊のお前もそろそろ…我の頭から離れろ!しつこいのだよ!」


『キャッ!!』


プルンデスはダルセリアに掴まれ、私の方向へ投げつけられた。


「プルンデス!」


私は仲間がどんどんやられていくのを見ているしか無かった。


「後はお前で最後だ…。今度こそ消し去ってやろう!ブラック…」


もうダメだと思ったその時、2人の王子が立ち上がりダルセリアの両足に剣を突き刺した。


「…ぐああああっ!お…お前らぁぁぁ!何故生きているのだ!?我が力を吸い取ったハズなのに…!?」


ダルセリアは足に突き刺された剣の痛みに耐えきれず、転んでしまった。


「さぁ!今です!」


「俺達ができるのはここまでだ!後は頼んだぞ!」


アークラインとゼノニスはそう言って倒れてしまった。そして私は自分の持っている剣を構え、ダルセリアに斬り掛かった。


「ハァァァーッ!」


私が斬りつけた場所は…スネだった。そう、かつてキグルンのパペットパンチでダルセリアはスネに大怪我を追った事を覚えていたからだ。


「ウガァァァ!!我のスネがァァァ!」


予想通りダルセリアはこの世のものとは思えない程の咆哮を上げて苦しみ始めた。


「我の身体が!吸い取った力が!消えてゆく…!おのれぇ!覚えていろ…!いつか…お前…を…!」


そう言いながらダルセリアは沢山の光を放出しながら消滅していった。


「あっ…光が皆の身体へ入っていく…。」


『恐らくこれは、ダルセリアが今まで奪った力でしょう。元の場所へ帰って行くようですね。』


奪われた力が戻った2人の王子は目を覚まし、メタルはメカンドラに戻った。そしてキグルンも、ドラキグルンの姿へと戻ったのだった。


「…はっ!ご主人様?」


「キシャーッ?」


「良かった…メタルーッ!ドラキグルンーッ!」


私は2人を抱きしめ、思わず泣いてしまった。


『泣くアカネちゃんも可愛い…。…って、いけないいけない…よしよし…アカネちゃん…。』


一瞬何か聞こえた気がするが、それは気にせずに私はプルンデスに撫でられた。


「皆さん…ありがとうございました。ダルセリアがいなくなった以上、この王国は平和になるでしょう。」


アークラインはそう言って頭を下げた。ゼノニスは私達に小さな瓶を持ってきて、差し出した。


「俺がダルセリアに取り憑かれていた事は隠蔽しようと思います。国民を混乱させたくないので…。それと、こちらはダルセリアを倒し、国を救ってくれたお礼です。」


瓶を手に取ると、中の液体がユラユラと揺れている。これは何か聞くと、王家に伝わる薬らしい。これを飲むと、致命傷を受けていたとしてもすぐに回復できるという。


「材料が希少すぎてその一本しか作れていませんが、国を救ってくれた貴方に差し上げます。使ってください。」


私は王家の薬をありがたく使わせて貰うことにした。頬の傷はアークラインの治癒魔法で治してもらった。


「ありがとうゼノニス王子!アークライン王子!」


「それと…良ければ…この僕、アークライン・シャルカールの恋人になってくれませんか!」


「…えっ?」


「えっ」


「キシャーッ?」


『えっ…』


私達はポカンとなり、何を言われたか分からなかった。


「実は…僕は貴女に惚れてしまったのです!地下牢で初めて貴女を見たその時から、僕の心は貴女に奪われてしまったのです!」


「あ…兄上!一体何を言い出すのですか!彼女は旅をしているんですよ!第1王子の兄上がダルセリアと共に消滅した以上、次の国王は第2王子の貴方ですから!彼女を困らせないでください!それに貴方には…!」


ゼノニスは慌てながらアークラインを羽交い締めにしている。アークラインはジタバタしながら私への好きを叫んでいる。私の顔は真っ赤になった。


『アカネちゃんを困らせないでください!いくら王子様といえども…このプルンデスが怒りますよ!』


「そんな事知らない!僕はアカネちゃんと婚約するんだ〜っ!」


一向に終わらない言い争いについにキレた者が居た。それは…


「アークライン様!いい加減にしてください!」


私に2人の王子を助けてくれと頼んだ兵士だった。


「旅人を恋人にしようなんて何を考えているのですか!王族の権限で縛り付けでもするつもりですか!?そもそも…アークライン様には婚約者が居るでしょうがーっ!」


兵士の一言で玉座の間の空気が凍りついた。


「婚約者居るのにご主人様と恋人になろうとしてたの…?」


「キシャーッ?」


『アカネちゃん取られなくて良かったぁ…。』


皆がそれぞれ一斉にざわついている。アークラインは慌てながら必死に言い訳しているが、誰も聞く耳を持っていなかった。


「兵士の格好して成り切ってたから気づかなかったんですね…。婚約者の私の事を…!」


そう言って兵士は兜を脱ぎ捨てた。すると淡い色合いの髪とアメジストのような瞳を持つ女性が現れた。


「アークライン様…後でみっちりお説教しますからね。」


「いや…その…えっと…ごめんなさい…。」


アークラインは女性に腕を掴まれて連行されていった。するとゼノニスが私の前に歩いてきた。


「彼女は兄上の婚約者であるクルメル・スフィアレンジ。私達シャルカール王家と強い関わりのあるスフィアレンジ国家の一人娘だ。兄上の婚約者なのだが…うん。兄上が浮気性だから度々こういう事あるんだよ…。」


ため息をつきながら頭を抱えるゼノニスの姿を見て、相当苦労しているのが伺える。


「さて…皆さんは旅を続けるのでしょう?俺が城の入口まで案内しますよ。」


ゼノニスにお城の入口まで案内してもらった。私達はゼノニスに手を振りながらお城を後にしたのだった。

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