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かいなさんがいっしょ  作者: 秋と亀
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憑いてきた腕とお化け屋敷

 学生×怪異×事件

この組み合わせが大好物な人間が好き勝手書き散らしていく小説です。

細々と執筆できたらと思います。


 俺の名前は生贄 海熊。いくにえ みかげ、と読む。

生まれながら目つきが悪いのと、筋肉質でデカい体つき。

でもって、つい最近生死の境を彷徨うレベルの大怪我をして額に大きな傷跡が残ってしまった。

ただでさえ怖がられる見た目なのに、さらに怖がられる要素が足されてしまい、高校に入学して3ヶ月経つが未だにボッチである。


 まぁそれは一旦置いといて。


 先程、生死の境を彷徨うレベルの怪我をした。と言ったが、十中八九それが原因で俺に「何か」が憑いてきた。


 その「何か」は常に俺の陰の中に居る。

詳細を言うなれば、枯れ木の様な白くて細い大小様々な腕が俺の陰の中で大量にひしめいている。

 自分の影の中に多くの腕がある、なんて普通なら発狂ものなんだろうが、その「何か」は何故か色々と俺を助けてくれる。

例えば、怪我の影響で立ちくらみを起こした時、俺が倒れない様にたくさんの腕で支えてくれたり、落ち着くまで背中を摩ってくれた。他にも、自室で痛み止めが切れて呻いている時も、影から出てきて床やドアを叩いて父さん母さんに知らせてくれたりもした。後は、落とし物を拾ってくれたりとか、危険な目に遭いそうな時は腕や足を掴んで引き留めてくれたりと、短い付き合いではあるものの、俺にとって大変ありがたい存在になっている。

 ただ、ずっと「何か」と言うには不便だから、勝手に「かいなさん」と呼ばせてもらう事にした。そのまんま腕って意味だけど、一応本人(?)からOKは貰っているので問題なし。


 今のところかいなさんについては、枯れ木の様に儚い腕がたくさんあると言うのと、見た目の割に力が強いって事くらいしか解ってない。

 けど、額に傷が残ろうが、高校でボッチだろうが、かいなさんのおかげでそう寂しくもない日常を送れているので、感謝しかない。


 突然だが俺は今、近所で有名なお化け屋敷の前にいる。


 母さんに頼まれて牛乳を買いにスーパーへ向かっていたけど、不意にズボンの裾を引かれた気がして足を止める。何かと思って足元を見ると、かいなさんが出てきていてある一点を指差している。かいなさんがこんな風に主張するのは初めてで、気になってかいなさんに導かれるまま歩いていくと、近所で有名なお化け屋敷の前についた。

 俺が小さな頃からある古い日本家屋で、特に廃墟と言う訳ではないが雰囲気が不気味で誰も近寄ろうとしない。一応住民はいるらしいが、誰も見た事は無いらしい。

偶に何か変な音がしたとか、誰かの叫び声が聞こえたとか、怪しい噂に事欠かず、いつしかお化け屋敷と呼ばれるようになったとの事。

 思いの外立派な門の前で呆けていると、じゃり、と横から足音らしき音が。

 不審者と思われたらどうしようとヒヤヒヤしていたら、側の電信柱の陰にいた小学生くらいの女の子2人と目が合った。


「「キャァァァァァァ!!!!」」

「うおっ」

「だれ、だれぇ…!?」

「やだやだやだ、おかあさぁん…!!」


 叫んだ後、身を寄せ合い怯える2人。

まぁ目つきが悪くて額にデカい傷のついた大男と目が合えばそうなるか、と叫び声をあげられて少し傷ついた自身を納得させて、話を聞くべく少し離れた所からしゃがんで声をかけてみる。


「なんかごめんな?この家の子だろうか?」


 なるべく優しく話しかけたつもりだが、これで怖がられたら立ち直れない気がする。


「……、こーくんが、」

「うん?」


 急に誰だこーくん。


「こーくんが、肝試ししたいって、まだ、お家に帰りたくないからって、」

「ふゆくんと、けんくんと一緒にこの中に入っていっちゃって…、私たち、怖いから此処で待ってるんだけど、みんな帰ってこなくて…!」


 喋り終えた2人は静かに泣き始める。

 思いっきり不法侵入だ。というか見た感じ、立派な塀に囲まれているのに何処から入ったんだ?

それにしても、見ていて痛々しい程に憔悴している女の子2人をこのまま放ってはおけないし、かいなさんが気にする位だから此処に何かあるのかもしれない。かと言って勝手に入る訳にはいかないから、


「それなら」

「家に何の用だい?」


 警察に、と続けたかった言葉を遮られ、すぐ後ろから声がした。突然の事で声も出せずに驚いていると、声の主は朗々と続ける。


「偶に「こんな立派な屋敷なのだからお宝があるかも!」なぁんて邪な考えを持つ輩がいるけど残念ながらこの家は古いだけで価値があるのは俺のコレクションくらいだね!とても大切で愛してる物だから手を出されるのは非常に業腹なんだ!今すぐ考えを改めないのなら警察にしょっぴいてもらって尻の毛まで毟る事になるが己の人生を終わらせる準備はOKかい?」


 ぼさぼさの黒く長い髪、こけた頬に青白い顔をした男の人。俺程身長がある訳ではないが、長身痩躯と言うにぴったりな人だと思う。軽い話方とは裏腹に、濁ったグレーの瞳で品定をめするかの様にジッと此方を見ている。この場の雰囲気も相まって、ホラー映画かなんかの導入部分かと思った。

 だが、この屋敷の人と言うなら話は早い。


「すみません。泥棒ではないんです」

「うん?俺の今までの経験上、そう言った奴は十中八九泥棒かはた迷惑な動画配信者…。デカいな君。何センチ?」


 おもむろに立ち上がり、此方をきょとりと見上げる濁ったグレーの瞳を見返す。申し訳ないが、身長差に呆けてもらっている間に此処は早めに誤解を解いて、話を聞いてもらわねば。



「はぁ!?子どもが勝手に俺の家で肝試し!?嘘だろ何処から入ったんだ!!」


 掻い摘んで状況を説明したら、青白い顔をこれでもかとしかめて絶叫。ガチギレした人を真正面から見るのは中々に大迫力。

 女の子たちも思わずといった様子で俺の足の陰に隠れる。


「ひっ、」

「ご、ごめんなさいぃ…」

「君たちに言ってるんじゃない!!クッソ!!勝手に人の家に入るなって教わらなかったのか!?冗談じゃない、もし俺のコレクションに手を出してたら損害賠償請求して人生を終わらせてやる!!」


 物騒な事を叫びながら、勢いよく門を開けて屋敷の中へ飛び込んで行ってしまった…。

あまりの剣幕に思わず見送ってしまったが、大丈夫だろうか?


「こーくんとふゆくんとけんくん、どうなっちゃうの…?」

「お、おまわりさんに捕まっちゃう…?」

「その3人が、あの人の家の中の物を勝手に触ってなかったら大丈夫な筈だな」


 不安気にこちらを見上げる2人には申し訳ないが、こればかりは勝手に入った3人が、さっきの人のコレクションに手を出してない事を祈るしかない。まぁそれ以前に不法侵入とかで訴えられない事も祈るしかない。一応関わってしまったからには、他の3人が出てくるまでこの子達にもう少し付き合うことにしよ、


「「「「「ぎゃああああああああああ!!!!!」」」」」

「「ひぃっ!?」」

「なんか今悲鳴が多くなかったか?」


 数分も経たないうちに屋敷から悲鳴が響く。

だが、明らかに子どもの悲鳴らしき声におっさんのような悲鳴が混じっていた。声的にこの屋敷の人じゃない事は確かだ。女の子たちはよほど恐ろしいのか目を瞑って俺の足にしがみついた。


「「ああああああああああ!!!!!」」

「そこのデカいの!!そいつ等捕まえろ!!空き巣だ!!」

「え」


 ドタバタとした足音と共に、全身黒ずくめで小太りな二人組が屋敷から飛び出してきた。

捕まえろと言われても、こっちにだって女の子2人いるし危ないんだが。


「2人ともちょっと離れて、って、かいなさん?」


 ずるり。と俺の影が二人組の方へ伸びたかと思えば、かいなさんが二人組の足を鷲掴みすっ転ばせた。


「、は?」

「くそっ!!一体だ、れ…?、いぎゃああああああ!!?」

「うわ、うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「「きゃあああああ!!!」」

「あーあ」


 仰天して足が止まるこの家の人。状況を把握して新たに悲鳴をあげる二人組。その悲鳴に驚いたのか、更に俺の足にしがみつき叫ぶ女の子たちはもはやコアラ。悲鳴ばかりで耳が痛い。

かいなさんにガッチリ両足を掴まれた二人組は、驚きと恐怖が勝ったのか気絶した。無理もない。


 またかいなさんに助けられたなぁ。


「ありがとう、かいなさん」


 そう言うと、かいなさんは二人組から離れて、気にするなとでも言う様にひらりと軽く手を振って俺の影に戻っていった。


 さて、空き巣の二人組は屋敷から飛び出して来た時には既に錯乱状態だったから、かいなさんについては誤魔化せると思うし、女の子たちは目を瞑っていたから見ていないと思う。問題は、未だぱかりと口を開けたまま此方を凝視するこの屋敷の人だが、今はそれよりも中に入ってしまったと言う3人の子どもたちの安否確認だな。


「すみません、子どもたちは無事ですか?」

「は…?あ!!そうだった!!」


 正気に戻った屋敷の人は「俺のコレクション!!」と叫んで、再び屋敷の中へ走って行ってしまった。

 雑に誤魔化したみたいになったけど、あの様子だと子供たちのことは二の次になるんだろうな…。

 とりあえず警察に通報して空き巣を引き取ってもらおう。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

海熊とかいなさんのコンビは個人的な癖の塊なので執筆が楽しいです。

ここから不思議な話や不気味な話を織り交ぜていけたらなと思います。

ありがとうございました。

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