生クリームたっぷりパンケーキ
「お待たせしました、コーヒーとパンケーキのセットです」
2卓に座っていたのは、若い男性だった。
ノートパソコンを広げ作業をしていたので、邪魔にならないようテーブルの端に乗せる。
彼は商品を横目で見ると「どうも」と一言添えた。
コーヒーとパンケーキのセットを頼む男性のおひとり様は珍しい。
しかも生クリームたっぷりのあまーいパンケーキだ。
興味本位で彼の方に視線を向ければ、難しそうな顔でPCと向き合っていた。
不健康そうな青白い指が、カタカタとキーボードの上で跳ねてる。
ブルーカットのメガネが画面を反射して、瞳の奥は見えなかった。
SE系の仕事の人なのかな、いかにも外出てなさそうだし、指輪してないから未婚かな。
彼女もいなそうだなー、アクセサリーとか付けてないし。これは私の偏見だけど。
接客業あるある、相手の人生背景をやらたと想像する。これは私だけだろうか。
「…えっと…なにか?」
「えっ」
気づけば2卓に立ち尽くしていた私に、彼が怪訝そうに声をかけてきた。
メガネの隙間から覗く瞳が余りにも綺麗で、思わず息を飲む。
やべ、イケメンだったから長居しすぎたわ。
あなたの人生背景を想像してました、もしかしてSEのお仕事してますか?彼女はいない!当たってるでしょ?なんて言えるはずもなく。
「も、申し訳ございません。ぼーっとしてしまいました!失礼いたします」
逃げるように厨房へと向かった。
「なにしてんの」
そう鼻で笑う美穂の胸に、真っ赤な顔を隠すよう飛び込んだ。
どうやら今日は相当浮かれているらしい。