明太マヨおにぎり
12月22日
日付が変わり、時刻は朝の6時23分を指していた。
もう寝ないとお昼からのカフェのバイトに支障をきたす。
そう分かっているのに、目は冴え切っていた。
スマホの画面を付けては消して、を繰り返し、何度も浮かぶ天使の微笑みを見続けていた。
男性にしては少し小柄な体格。
金の美しい髪。
優しい目元。
ふわふわした、わたあめみたいな甘い声。
そして極めつけの“明太マヨおにぎり”
彼が一番好きだと豪語していたのが、セブンマートの明太マヨだ。
それか理由で私自身もセブマで働いている。
単純に家が近いのもあるが。
昨夜の客と愛しの推しを重ねては、答えのでない問いがひたすらに頭の中で駆け巡っていた。
「あ。そうだ」
昨夜の出来事に気を取られすぎて、肝心な推し活ルーティンを忘れていた。
SNSのチェックは基本中の基本だというのに。
すぐさまスマホのアプリを起動する。
全体に目を通して、スクロールする。
探していた呟きはすぐに見つかった。
眩しい笑顔を放つアイコンを軽くタップする。
【体調不良のため、配信をお休みします。ごめんね。
クリスマスまでには絶対に治すから!!みんなに会えるのを楽しみにしてるね】
呟きには多くの心配のコメントで溢れていた。
続くように、自身もコメントを打つ。
【気にしないで!ゆっくり休んでください!私もイベント楽しみにしてるね】
盛りに盛れた自身の顔に、名前はオシャレ女子特有のローマ字表記で“Mai”
至って当たり障りのない文章で、私はその辺の害悪オタクとは違いますよ、純粋に応援している清楚な女子ですよアピールをしてアプリを閉じた。