変な客
23時と言えど、コンビニは眠らない。
入店を告げる電子音に苛立ちを覚えながらも「いらっしゃいませ」を言える私、偉いぞ。
心にもない「いらっしゃいませー」を連発しながら、商品を並べる、レジ対応、並べる、レジ、の繰り返し。
『雪見さんは仕事が雑だね。もっとキレイに並べようよ。ほら、こうやって。商品を魅せる意識というかさ』
つらつらと喋る店長のドヤ顔が忘れられない。
商品の陳列が汚いと指摘を受けたのは、勤務初日のこと。
やたら長い説明を受けて習得したこの技術は、私の得意分野だ。
言い換えれば、これくらいしかできないのだが。
商品の陳列ついでに、賞味期限切れのものはカゴにまとめていく。
乱雑に商品をカゴに放り込んでいた手がぴたりと止まった。
“12月21日午後23時”と書かれた明太マヨおにぎりに目を奪われる。
ルイの大好物。
優しくカゴの中におにぎりを置く。他の商品に潰されないよう、あらゆる総菜の一番上に。
なぜかその行為に寂しさを覚えた。
彼に想いを馳せていると、おしりに感じる小さな振動。
お客さんに見えないように、棚の影に隠れてスマホを見る。
ルイの呟き通知だ。
急いで画面ロックを解除しアプリを開こうとするも、レジに並ぶお客さんの背中を無視することも出来なかった。
「あっ……いまお伺いします!」
“ 体調不良”その文字だけが私の視界に捉えた。
スマホはポケットへ滑り込ませ、足早にレジへと向かう。