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崩壊  作者: 林檎ドレッシング
6/7

二重人格者

 娘の肩をそっと抱いた。幼い時からの温盛も匂いも変わっていない。

相当辛い思いをしてきたのであろう、閉じた目から涙が零れ落ちていた。

 私は、このがお腹に入ったときから、この男から思ってきた。もちろん、つわりで食事が作れない時も、食事がないと怒鳴らながら吐き気やだるさも我慢して作ってきた。生まれた時も、3時間置きに起きる娘の夜泣きも一度も手伝ってくれたことなどない。反対にうるさいから、お前は下で寝ろと、1階のソファーに我が子を寝かせ、私はソファーにもたれたまま寝る日が続いた。深夜まで泣きそうな日は、私は娘一人抱いて、家から出て夜の公園に行き、よくあやしていた。私を癒してくれるのは、自然の風と、晴れている夜に覗かせる月の光だった。

子供が歩くようになってからも、もちろん公園などに一度も遊びに連れて行ってくれたことはない。

本当に一人で子育てをしてきた。お金がないことも相談できるような相手じゃなかった。

独身時代に購入した、少しのブランドの物を質屋に持っていき、小銭を作っては育児用品を買っていた。

そんなことくらいしか、思い出せない。思い出すだけで涙がこぼれてくる、ここまで何とか私なりに大切に育ててきたのに…。


 今後は、塾の帰りは、私と一緒に待ち合わせて自宅に帰ることにした。

今まで娘は、食事の時間もずらして一人で済ませていた。

そうしたことから、一緒には取りたくないと。そしてまた私も夫と一緒に食事を取っていなかった。


 夫は仕事に行けば必ず提示に帰ってくる、17時30分。そして、お風呂へ入り、身ぎれいにし夕食を済ませるとPTAと称して、毎晩出かけるのだ。私はそこにも言及することなく、冷めた笑顔で送り出していた。夫の友人はPTA会長を薦めてきたのだった。最初、こんな人に…と思っていたが、子育てに協力してくれるならと思い、少しでも子供たちへの接し方がかわればと思い、承諾したが毎晩飲みの歩くだけ。

 詳しく話を聞いたところで、夫の顔色が変わるだけなことも知っていた。PTAを初めてから洋服も私の5倍に増えていた。下着も黒のヒョウ柄など、今まで履いたことのない下着に変わっていた。もちろん、そんなことはどうでもよく、女でも作って早く離婚してくれないかと願っていた。

私の母親がその夫の変わりように、

「あの人、おかしいわよ。あなた離婚したっていいのよ、よくあんなのと一緒にいれるわね」

と生前、言っていた。母なら、我慢ならないと、その通りだ。


私の中では、その頃はもうどうでもよかった。子供たちが大きくなるまでは辛抱して、離婚しようと決めていた。関わりたくない、話したくもない、顔さえ見たくない、匂いの嫌いで、半径1メートル以内にはいるものなら、吐き気さえしていた。もちろん夫婦とは形ばかりで、外では、いつも笑顔のご主人ですね、といわれていた。私たちは演技していたのだ。取り繕うことが普通になっていた。

家庭の生活費でさえ、ノートに記入して、必要な分だけのお金をもらうという形だった。子供の洋服も穴が開いたから買ってあげたいと話したが、「「そんなものは買わなくていい、どうせすぐに穴開けるんだろう」と。自分の子供にみすぼらしい格好させて、父親だけこぎれいにする…。もちろん、私も洋服を買っていなかった。

 PTA会長として、外では、「子供たちのために!」とはなしている癖に、自宅に帰ってくれば、子供たちを虐待している男だったということもわかり、サイコパス、精神異常な男だった。もちろん、何度も夢の中で夫を刺す夢もみていた。現実は、ただただ、この男から、どうやって逃れ、子供たちと安心して暮らせる場所を見つけるか、離れても心の後遺症は簡単には消えないことも覚悟していた。

子供たちは、食事の量が減っていった。喉に食べ物が通らなかったのだろう。私も同じだった。

味のしない食事、恐怖に怯える食事、本来は楽しいものなのに。みんなで楽しく話しているだけで、怒り出す男だった。みんなで楽しい話題は、この男のいないところで話すようになっていた。みんなは口にしなかっかったが、この男は家族ではなくなっていた。

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