先生! ロリコンは性癖に入りますか?
筆者はロリコンではありません。
「先生!ロリコンは性的差別に入りますか?」
ここは都内の小学校。2年3組を受け持つ担任の鈴木愛理はもうすぐ訪れる校外学習の持ち物の確認中、突然生徒から質問投げかけられた。
……スルーした。
何ごともなかったかのように説明を続行した。
しかし、これは悪手だったらしく、クラスの中でざわめきがおこる。
こうなってしまうともう後には引けない。
「たくみのやつ無視されてやんのww」とか「たくみの服の趣味やばww」とか実際にそんなこと言うような子は自分のクラスにはいないだろうが、教師という職業上、私のせいでいじめが起こるのではないかと不安になった。
なのでここは、聞こえなかったふり作戦を決行し、「あら? どうしたのかしら?」と問題に直面することにした。自分の聞き間違いという可能性もある。うん。そうに違いない。耳鼻科にでも行こうかしら。
「だから、ロリコンは性的差別に入るんですか?」
うーん。
病院に行くべきはもしかしてあの子? だが、もう逃げ道はどこにもない。適当に誤魔化すのが良いのではないかと思ったが、これが、服の趣味の悪いたくみくんの心の傷になってしまうのではないかと考えると、ここは真摯に答えてあげるのが教師としての責務なのかもしれない。
「それは、性的差別というよりはただの性癖なのだから差別云々のお話とは全く関係がないと思うわ」
よし、自分でもなかなかの回答だと思った。やればできるじゃない愛理っ!
「でもー、ロリコンってあまり良い印象ないじゃないですか? それって嫌われているからじゃないんですかあ? それって差別では?」
何君? 異世界から転移してきたのかな? 前世の記憶とか持ってたりする?
「あー、それってえるじーびーてぃーってやつでしょ?」別の生徒が口を挟む。
「違うよゆうや殿、今はLGBTQでござるよ?」
「けんじくんいつの時代の話をしてるの今はLGBTQIでしょ?」
「いや、LGBTQIA+だろ常考」
「ええっと、みんな? 遠足の話に戻りたいんだけど……」
癖の強いクラスメイトは一旦置いとくとしてここは一旦この流れを断ち切るべきだ。
「先生はどう思うの???」
貫通ううう。致命傷を負ったよ。
「そういう話は、あんまりしない方が良いんじゃないかなって……」
「ああ、出た出た。そういう性的コンテンツの話をタブーにしようとする流れ。そんな知ろうともしない態度が性的マイノリティーの理解が進まない原因になるだけでなく、性別の違いの理解の壁を厚くするのよ」
「誰もがそれを受け入れる必要はないんじゃないか? だが、頭ごなしに否定せず知識を入れ、理解することこそが重要なんだ」
「法律や規則、ジェンダーレス商品とかよくわかんない制度なんかより、一人一人の意識の改善こそが重要ってことね!」
888888。クラス中に拍手が起こる。私はただ唖然として、今日の晩御飯の献立を考えていた。
「じゃあ、ロリコンも当然、認められるべきだね」
「だが、ロリコンは許さん。滅ぼせ」
「うわああああああん」
意識をあらため認める。ただそれだけのことができないのだ。ただそれだけのことが難しいのだ。そして混沌こそカオスなこの状態をカオスオブカオスとして後世に語り継がれることはなかった。
ロリコンをやめてロリになろうかな。